ちいさいころ、近所の本屋さんに両親に連れて行ってもらうのが好きだった。

おもちゃ屋さんよりも好きだったかもしれない。

 

なぜかというと、おもちゃ屋さんでは、めったに欲しいものを買ってもらえなかったが、本屋さんでは、欲しいものが買ってもらえたからだ。

せまーい通路をぬって歩いて、自分のお気に入りを見つけ、隙があれば、工作の本や、付録付きの雑誌なども買ってもらう。

両親の財布の紐がゆるくなる場所、それが私の子供の頃の印象だ。

 

そして今もなお、本屋さんは、特別な場所だ。

「特別」というと、ちょっと大げさかもしれないが。

 

例えば、飲食店は「料理」を売る。スポーツ用品店は「スポーツ用品」を売るし、家電量販店は「電気製品」を売っている。不動産屋さんは「家・土地」を売っている。

一般的には、お店というのは、何かを「売る」、つまり消費をする場所だ。

 

しかし、本屋さんは「本を売っているお店」と言えるのか、というと、微妙なところだ。

 

考えてみると、正直なところ私は書店に「本を買いたくて入る」わけではない。

結果的に本を買うことはあっても、書店は、「消費する」ために入る場所ではない。

 

これは、Amazonで本を買うのとは全く違う。

Amazonは消費、つまり本などを「買うため」におとずれるが、書店に行くのは本を買うためだけではない。

経営的にはゴメンなのだが、本屋さんに入って本を買わないことも多い。

 

実際、書店は昔から、本の販売だけでは経営が成り立たず、街の3分の2の本屋さんは、副業をやることで生き残って来たそうだ。

テレカ、お菓子、ハンバーガーショップ、コンビニ、ゲーム、アイス、家電、カルチャーセンター、CDなど、「本は客寄せパンダ」という位置づけだったらしい。

 

書店とはどんな場所なのか

では、今の私にとって、書店とはどんな場所なのか。

書店はいうなれば、「叡智と出会う場所」だ。

 

辞書を引くと、叡智は「優れた知恵・心理を洞察する精神能力」とある。

こういうとなんか小難しいが、要は、知識の新しい切り口が「叡智」だと私は考えている。

 

書店の本アピール方法、選書、あるいは出版社によるフェアなど。

それらはすべて、「本の内容」そのものだけではなく、ある知識と知識の関係に関する、メタ情報を提供してくれる。

 

・3月に卒業する皆様へ

・人間関係に悩んている人は…

・あの著者が絶賛した元ネタの本……

 

こういう情報が、Amazonにはあまりない。

いや、あるのかもしれないが、レビューをいちいち読まないといけないし、レビューにはゴミ情報も多い。

 

もちろん、そういう叡智と出会う場所は本屋さんだけではない。

例えば、学校は叡智を扱うように作られているし、企業も仕事で「叡智」を生み出さねばならない場所だ。

また、そういう場所は街中に他にもあって、図書館、博物館、美術館、コンサート、セミナー、討論会、展示会、……などたくさん存在している。

 

そういう場所で得られるものは、検索やスマホのニュースから得られる「知識」とはかなり違う。

だから、本屋さんに足を運ぶのだ。

 

でも、本屋さんの何が良いって、博物館や美術館、コンサートなどと違って、「何の気負いもなく行ける」のがいい。

図書館でも良いのだが、図書館は数が少ないし、本屋さんはあちこちにある。

「副業」で面白いグッズがたくさんあるのも良い。おもちゃ屋さんと図書館の間のようなイメージだ。

 

書店とのつきあいかた(自己流)

さて、タイトルを回収しておく。

「人間が知識をどのように使っているのか」を書店に行って、見てみる。

 

本は、古典が良い、と思ったこともあったが、最近は新刊をよく見る。

「ベストセラー」と「新刊」は、世の中のひとの「悩み」を知るに最適だからだ。

 

最近はお金の本がやたらと多い。

高い「株価」が影響しているのかもしれない。

 

しかし、単に投資本が売れているのかとおもいきや、結構前に発売された「お金の使い方」に関する知識の一つである、「DIE WITH ZERO」がどこでも売れているので、

「金の使いみちにも興味があるのだな」

「人生に対する疑問があるのだな」

といったことも、あれこれ考えながら本を見ていくのは楽しい。

 

そして、店内のPOPを見る。

店員さん(?)が渾身の力で書いたPOPはとても面白いものがたくさんある。

新刊やベストセラーを見たら、次に立ち読みしている人や、本を買っている人を見る。

どの本が手に取られているのか、どの程度立ち読みしているのか、どのような組み合わせで本が買われているのか。

 

年代によって、どのコーナーに行くのかを見る。子どもたちは何を読んでいるのか、学生は何に興味があるのか。

今どき雑誌を読んでいるのは、一体どんな人なのか。

 

実は、今も昔も「本を読む人」の数は、それほど変わっていないそうだ。

16歳以上の書籍の読書量は調査以来ほぼ月1冊台で、多少の上下はあれど長期で見ればほとんど変わっていない。
つまり雑誌は購買・読書ともに衰退傾向だが、書籍については購買量は減ったものの、読書量は減っても増えてもいない
(引用:町の本屋はいかにしてつぶれてきたか)

「本は文化」などという高尚な話にはあまり興味がないが、書店は面白い。

 

「町のおもちゃ屋さん」はなくなってしまった。

 

が、書店はいまだに、心躍る場所であり続けている。

それを残すために、本屋さんで少し、買い物をして帰る。

 

 

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(2026/3/10更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

〇まぐまぐ:実務で使える、生成AI導入の教科書

Photo:Tom Hermans