企業のSNS担当者は、画像や動画を工夫し、以前より丁寧にSNSを運用しています。

それでも、以前ほど「いいね」もリポストもされません。

 

フォロワー数の割に、インプレッションも伸びません。

結果として、社内からは「投稿が面白くないんじゃないか」「企画が弱いのでは」と問われてしまうのです。

 

しかし、そもそも、フォロワー数は「投稿を届けられる人数」なのでしょうか。

 

私は2025年12月に「『良い投稿をすればバズる』という時代は、ひっそりと終わっていた。」という寄稿をしました。

そこで紹介したのが、「SNSのレコメンドメディア化」です。SNSは、フォローした人の投稿を見る場所から、AIが選んだおすすめ投稿を見る場所へと変わりました。

 

では、その変化によって、企業の投稿は実際にどれくらいフォロワーに表示されにくくなったのでしょうか。

感覚だけで終わらせないために、国内企業の公式アカウントを調査しました。

 

企業11社のXを調べたら、平均は7.94%だった

私が所属する株式会社ホットリンクでは、国内企業11社のX公式アカウントについて、2026年2月9日時点の直近30投稿を分析しました(キャンペーン投稿は除外)。

 

その結果、1投稿あたりの総インプレッション数をフォロワー数で割った「想定フォロワー表示率」は、11社平均で7.94%でした。

フォロワーが100万人を超えるアカウントでも、4~13%にとどまっています。なお、「想定フォロワー表示率」と呼んでいるのは、Xでは、フォロワー内外の表示を区別できないためです。

 

したがって、この調査から分かったのは、1投稿あたりのインプレッション数が、11社平均でフォロワー数の1割にも満たなかったということです。

フォロワー外への表示や、同じ利用者への複数表示が含まれる可能性を考えると、実際に投稿を見たフォロワーの割合は、この数字より低い可能性もあります。

 

対象は11社なので、この結果をすべての企業アカウントにそのまま当てはめることはできません。それでも、「フォロワー数」と「実際に情報を届けられる人数」が同じではないことは明らかです。

 

この傾向は、Xだけに見られるものではありません。国内企業5社のInstagram公式アカウントが2026年に行った計192投稿を分析したところ、フォロワーへの表示率は5社平均で約11%でした。

Instagramでも、企業の投稿はフォロワー数から想像するほどには見られていません。

 

SNSは変わったが、企業の評価基準は変わっていない

かつてのSNSでは、フォロワーを増やすほど、多くのユーザーのタイムラインに自社の投稿が流れました。

フォロワー数は、情報を届けられる人数に近い意味をもっていたのです。

 

しかし、今は違います。投稿が表示されるかどうかは、フォロー・フォロワー関係だけでなく、利用者の関心や過去の行動、投稿直後の反応などにも左右されます。

フォローは、投稿が表示されることの保証にはなりません。

 

ところが、企業が運用するSNSアカウントのKPIや担当者の評価方法には

「フォロワーを増やせば投稿も届く」

「フォロワー数が多いほど運用は成功している」

という考え方が、いまも残っています。

 

フォロワー数は、増減が一目で分かり、競合とも比較しやすい指標です。SNSに詳しくない他部署や経営層にも説明しやすいでしょう。

だから、環境が変わっても目標として残り続けています。

 

フォロワー数を増やしても投稿が思うように届かないと、担当者は、短期間で大きなインプレッションを獲得できる「バズ」を求められるようになります。

しかし、ここにも落とし穴があります。

 

バズを目的にしても、企業の宣伝投稿がバズることは稀であるということです。

SNSを利用する個人の多くは、趣味や関心事の情報収集や暇つぶしを目的にしています。

そのような環境では、企業の宣伝投稿がほかの投稿より見てもらいにくいことは、容易に想像できます。

 

そこで次に出てくるのが、『ならば宣伝感を抑え、バズりやすい投稿にしよう』という発想です。

もちろん、宣伝感を抑えてユーザーフレンドリーに投稿すること自体は重要です。しかし、バズを追い求めようとすると、自社ブランドとほとんど関係のないネタ投稿に走ったり、きわどい発言で炎上に近い注目を集めようとしたりすることもあります。

投稿単体のインプレッションは伸びても、ブランドへの好意や理解につながるとは限りません。むしろ、ブランド毀損を招くおそれがあります。

 

問題は、バズそのものではありません。フォロワー数やインプレッション数だけを、SNS運用の成果とみなしてしまうことです。

 

フォロワー数だけで、SNS運用を評価しない

では、フォロワー数はもう意味がないのでしょうか。

 

そうではありません。

フォロワーは、投稿の初動を支える存在として今も重要です。投稿直後に「いいね」やリポストなどの反応が集まると、プラットフォームから有益な投稿と判断され、フォロワー外へのレコメンドにつながりやすくなります。

だからこそ、単に数を増やすのではなく、自社の投稿に興味を持ち、反応してくれる「質の高いフォロワー」を増やすことが重要です。

 

一方で、フォロワー数だけを見ても、実際に投稿が届いた人数や、運用によって生まれた成果までは分かりません。現在のSNS運用では、少なくとも次の4種類を分けて見る必要があります。

・フォロワー数
=自社アカウントをフォローしている人の数

・インプレッション、リーチ、接触頻度
=実際に情報が表示された数

・いいね、リポスト、返信、クリックなどのエンゲージメント
=情報を見た人が起こした反応

・UGC、指名検索、ブランド想起、売上
=情報への接触後に生まれた行動や意識の変化

 

「実際に情報が表示された数」は、企業アカウントの投稿だけでなく、生活者によるクチコミ(UGC)も含みます。

企業の投稿を見ていない人が、ほかの利用者のクチコミを通じて商品を知ることもあるからです。公式投稿の数字だけを見ていると、SNS上でブランドの情報がどこまで広がったかを見落としてしまいます。

 

だから、「フォロワー数が増えた」「自社アカウントのインプレッションが伸びた」というだけでは、SNS運用が成功したとは判断できません。

届けたい相手にどれだけ表示されたか、いいねやリポストなどの反応が得られたか、さらにUGC・指名検索・ブランド想起・売上が施策前後でどう変わったかまで確認する必要があります。

 

例えば、フォロワーが1万人増えても、届けたい相手への表示やエンゲージメント、指名検索数が変わっていなければ、情報を届けられる相手が1万人増えたとは言えません。

一方、フォロワー数が横ばいでも、企業の投稿やUGCを通じた接触が増え、クチコミや指名検索も増えているなら、SNS施策は事業成果に近づいています。

 

投稿を変える前に、企業の評価基準を見直す

企業がSNS担当者の成果をどの指標で評価するかによって、担当者が選ぶ施策も変わります。

フォロワー数だけで評価される場合は、フォローを参加条件にしたキャンペーンを増やすでしょう。1投稿のインプレッションだけで評価される場合は、ブランドとの関係が薄くても、SNSユーザーの興味を引く話題を選ぶようになります。

いずれも、会社から求められた数字を伸ばそうとした結果です。

 

企業はまず、「誰に情報を届け、どのような変化を起こしたいのか」を決める必要があります。

そして、フォロワー数だけでなく、狙った相手への接触、そこで得られた反応、UGCや指名検索、ブランド想起、売上の変化を合わせて見ることで、SNS運用の成果を適切に判断できます。

 

今回の調査からも、企業の投稿は、フォロワー数から想像するほどには表示されていないことが分かりました。

それにもかかわらず、フォロワー数や投稿単体のインプレッションだけを評価基準にすると、社内で高く評価される運用と、実際に事業成果につながる運用が別物になってしまいます。

 

「フォロワーを何人増やしたか」から、「実際にどれだけ届き、どのような変化が生まれたか」へ、いま見直すべきなのは、投稿だけではなく、今の環境にあう評価の仕方です。

 

 

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(2026/9/1更新)

 

 

【著者プロフィール】

増岡宏紀

株式会社ホットリンク 執行役員COO

2016年にホットリンクへ入社後、SNSコンサルタント・プロモーションプランナーとして企業のSNS戦略立案や運用支援に従事。現在は執行役員COOとして、新規顧客の戦略設計から実行支援までを統括。業界イベント・セミナーへの登壇、マーケティング専門メディアへの寄稿・取材実績も多数。2025年12月には、日経BP社より著書『コミュニティマーケティングは「巨人の肩」に乗れ ~UGCと指名検索が増え続けるSNS活用の新常識~』を発売。

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