こんにちは。株式会社Relic、代表の北嶋です。
弊社のメイン業務の一つは、「社内ベンチャーの支援」ですが、現在ご支援をしている企業の一社に、一風変わった制度を持ち、大きな成果を上げている社内新規事業創出制度があります。
それが、NTTドコモのR&D部門が主幹する、39worksです。
(39works 渋谷サテライトオフィス)
今回はこの39worksが、新規事業の立ち上げにおいて、どのようなアプローチを取っているかをご紹介し、「成果をあげる社内新規事業のありよう」について考察します。
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まず、39worksとは何か、少し説明をします。
39worksは、一言で言うと「NTTドコモにおける、新規事業創出プログラム」です。新規事業をマーケットに問いながら小さな種から大きく育てることを目的に、様々なパートナー企業と共同で事業を生み出しています。
そして、この「支援」を39worksのアクセラレーターとして実際に行っているのが、金川さんです。
金川さんを含む、支援チームの39worksにおけるミッションは、2つ。新規事業を担う「人材の発掘」とその事業の「支援」です。
1.社内新規事業の「人材発掘」
金川さんによれば、ボトムアップ型の社内新規事業を生み出すに当たって、まず最初に重要なのが「人材」です。
実は、金川さんご自身も昔、39worksの第一号案件として、新規事業の立ち上げを行い、大きく失敗した経験があるそうです。
39worksの新規事業は、撤退する時も自分で決めなければなりません。
私が当時やっていた新規事業は、KAOTASという顔認証による決済サービスだったのですが、サービスの見通しの甘さなどから、開始して2ヶ月で閉じる決断をしました。
その時、日経産業新聞に「爆速終了」と書かれてしまいまして、あの時は凹みました。
ただ、当時の私の決断は正しかったと思います。そして、私が失敗から学んだことは、多くの社内起業家に役立つはずです。また、当時は支援という制度はなかったので、全て自分だけで切り開かなければいけなかったのですが、欲しかったサポートもたくさんありました。
その金川さんはドコモにおける「社内起業家」の条件として、次の条件を挙げています。
1.「何か作りたい」だけではなく「ビジネスを生み出したい」
何と言っても「ビジネスを生み出したい人」というのが、必須の条件です。でも、これが意外に難しい。
「プロダクト・サービスを作りたい人」はそれなりにいるのですが、そう言った人は「作れる」けれども「事業にする」ができない。まず社内でそういう人を探さなければなりません。
2.「なぜドコモでやりたいのか」を明確にしている
39worksはドコモの新規事業を生み出すことを目的としたプログラムですから、「なぜドコモでやりたいのか」を明確にすることは大事です。
社内で起業することと、外部で自己資金で起業することの大きな違いは、この一点にあると思います。
もちろん、この問いに正解はありません。ですから、お金でも、技術でも、ブランドでもなんでもいいです。でも、最初の利害関係者である「NTTドコモ」を説得できるくらいでなければ、成功はおぼつかないでしょう。
そして、上の条件を満たす人が、どの程度社内にいるのかを調査するため、先日、金川さんのチームがアンケート調査を実施しました。
結果はプロダクトやサービスのアイデアがあり、それを使って自分でビジネスを立ち上げたい「事業創出層」が約5%。プロダクトやサービスのアイデアがあり、それを創りあげたい「DIY層」が、10%弱でした。
このうち「事業創出層」の方々は、39worksが、事業の成功確率を上げるための適切な支援をするだけです。
しかし、新規事業は多産多死です。「事業創出層」の5%の方々だけでは足りません。
そこで、「ビジネスにはあまり興味が無いけど、面白いものを作りたい」という「DIY層」の方々を、「つくりたい」というだけではなく「ビジネスにしたい」という志を持てるように、啓発していくことが重要だと、金川さんは言います。
彼らは、ドコモのR&D部門にいるだけあって、特殊な才能を持っている人ばかりです。趣味でなんでも作ってしまう技術は持っているのです。そういう人を、事業家として育てることが、39worksの重要な使命です。
2.社内新規事業の「事業化支援」
前述したような社内起業家を「発掘」した後、39worksが、事業化を支援します。
具体的には次のようなことです。
・事業化プロセスの実行を支援する
・場所を提供する
・営業/マーケティングの支援を提供する
・デザイン/クリエイティブの能力を提供する
・メンタリングを提供する
・イベントなどの交流の場を提供する
・人材を提供する
この中でもっとも重要なものの一つが、「事業化プロセスの実行支援」です。
事業化は幾つもの障害があり、それを乗り越えて市場で収益を上げるには、PDCAを素早く何度も回す必要があります。
しかし、従来から大企業の中で行われていた「事業化プロセス」には問題が山積しています。
幾重の稟議を重ね、大資本を投下してサービスを開発する、というスタイルは、テクノロジーの分野においては、どうしてもスピードに欠け、革新的サービスの提供において、スタートアップ企業に遅れをとってしまいます。
要するに、時代の要請に応えることができていないのです。
そのため、39worksは独自に「事業化プロセス」を改革し、以下の2つの方針の元で、事業化を支援しています。
1.リーンスタートアップ方式を採用する
39worksは、サービスを立ち上げるときに「事業化検証(PoC)」というフェーズを設けています。
ここでは、従来の新規事業とは異なり、売り上げや利用者数といったKPIではなく、MAUや継続率など、サービスの価値を測定するKPIを設定し、サービスを改善します。
これにより、新規事業でつきものの限られたリソースにおいても「早くて軽い」サービスの立ち上げが可能となり、実際のプロセスにおいては、現場の裁量で実行することができます。
リーンスタートアップ方式
リーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望とさまざまなポイントに等しく気を配りながら、「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法
2.企画・開発・運用を同一の組織で行う
大企業では通常、企画・開発・運用を別組織で行うことが普通ですが、これを同一のチームで行うことで、顧客から得られるフィードバックを、素早く製品に反映できます。
いわゆる「BizDevOps」です。
このように、「大企業」の中にありつつも、スタートアップ企業の機動力と、風土を生み出すこと。それが39worksのミッションとなっています。
まとめ
39worksは、2014年の夏に発足して以来、3年を経て、徐々に結果も出てきました。
大きな設備投資なしに、空きスペースを駐車場化できる、「docomoスマートパーキングシステム」
人工知能搭載のweb接客システム「ecコンシェル」
驚くほどチャットボットを簡単に作成、カスタマイズできる「Repl-AI」
今後、大企業の中でも、ベンチャー的に動ける「起業家」を支援する動きが広がるでしょう。
「社内公募」して、予算をつけるだけではなく、その事業化の支援まで含め、全面的なバックアップを起業家に提供する。
39worksは、その好例となるはずです。
39works :https://www.39works.net
WEBサイト:株式会社Relic
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