ワートリの29巻を読みました。
最初にお断りしておきたいのですが、この記事には、先日発売された「ワールドトリガー」の29巻のネタバレが豊富に含まれます。
ワートリ読者の方で、まだ29巻をお読みでない方は、まず何も言わずに29巻をポチって、しばらく鬼リピしてからこの記事を読まれることをお勧めします。
大丈夫、特に何も言われなくても勝手に鬼リピしたくなると思います。30回くらいは。
この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。
・ワートリの面白さの中核って、「答え合わせ」の面白さだと思うんです
・キャラクターひとりひとりの「考察」「考え方」「他者への評価」「対話・駆け引き」の描写が解像度高過ぎて、自分のイメージとのすりあわせがはかどり過ぎる
・「こういう状況で、このキャラならどう考えるか」という「答え合わせ」と「キャラクターの掘り下げ」を無限に読めるのがあまりに楽しい
・今回特に良かったのは香取で、ワガママ言った風の隊長評価での挙動は普通に感動して泣きそうになった
・今日から「ワートリのヒロインは香取」派閥になりますよろしくお願いします
・ヒュースの麓郎に対する「教官候補」という評価も滅茶苦茶共感したし納得した
・「ストーリーの続き」だけではなく「組織としてのボーダーの未来」を自然と知りたくなる展開描写、本当凄いと思う
・閉鎖環境試験、実は香取と麓郎のために実施されたのではないか説ある
・「分かりやすい挙動や気遣いに評価が入りやすいけれど、実際に重要なのは地味な挙動、というのも共感しきり
・あと補充要員で沢村さんや雷蔵さんが戦うの本当にあまりにも熱すぎて戦闘訓練のために冷えピタ2ダース大人買いしてきた
・諏訪さんの株は巻ごとにストップ高を続けているためもはや株価ボード壊れてる
・隠岐の「小さい子撃ちにくい」という言葉がまさかここに来て回収されるとは思わなかった、本当に思わなかったんだ
・結論として最高でしたので皆さん読んでください早く続き読みたい
以上です。よろしくお願いいたします。
さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、あとはざっくばらんにいきましょう。
先日「ワールドトリガー」の29巻が発売されまして、単行本派のしんざきは即本屋に飛んでいって買ってきたんですが、期待に違わず滅茶苦茶面白かったです。
皆さんご存知の通り、現在ワートリで行われているのは「遠征選抜試験」の「閉鎖環境試験」。
メンバーをシャッフルされて、普段とは違うメンバーで課題を解きつつ、特殊な戦闘シミュレーションを戦っていく回ですね。
しばらく続いた閉鎖環境試験もいよいよ大詰め。最後のシミュレーションを終えると最終日、全員のポイントが確定して、閉鎖環境試験の順位が決まります。
まず前提として、ワールドトリガーって漫画の面白さ、基本的には「答え合わせ」の面白さだと、私は思うんですよ。
ワートリの作者である葦原先生って、「短いスパンでの疑問の提示と、その回収の説得力」っていうのが滅茶苦茶上手い方だと私は思っているんです。
「これはどうなるんだ!?」という状況を提示しておいて、「そうか、こういう解決法があったか…!」とか「こういう方法で状況を打開するんだ!」という「答え」を、割と早めに提示してみせる。
その整合性とテンポの良さ、そして説得力がめちゃくちゃ高い。
例えばB級ランク戦。三雲隊-村上隊-東隊-影浦隊の四つ巴の戦いの時とか。
「鋼の剣が黒塗りされていたのは何故か」という疑問を提示しておいて、「最初から照明をいじって暗闇での戦闘をするつもりだったから」という、完璧な回答が即座に出てきましたよね。
あそこなんか象徴的な場面だったと思うんですけど、とにかく「そう来るか」のテンポが早く、しかも納得感が高い。
「考えて、予想して、納得する」のって楽しいんですよね。予想が合ってても外れてても楽しい。
別に戦闘だけの話じゃなくて、「この二人が喋ったらどんな会話になるんだ、会話成立すんのか」とか、「この二人絶対仲悪いよな、チームプレイなんて出来るのか」とか、色々考えながら読むの、私大好きなんです。
そういう意味で、29巻は「納得感のカタマリ」でした。チーム戦も煮詰まってきて、お互い同士の感覚がつかめてきたキャラクター同士が、「お互い分かっている」という前提の会話、連携をし始める。
元より、キャラクターが多い漫画ではありがちな「このキャラとこのキャラが絡んだら楽しそう!」という読者の妄想をもの凄いパターン数提示しておいて、その「答え」が「戦闘の結果、お互いの評価」という形で洪水のように提示され始めたんですよ。こんなのもう面白さの天災です。
29巻、まず「麓郎に対するヒュースのガン詰め講義」に対する周りの評価が、色々考えさせられましたし、納得感もありました。
「もっと言ってやってもいい」という風間さんの評価とか、「皆の前でアレ言っちゃうのどうなの?」と麓郎のプライドを気にする冬島さんとか、皆の評価が何故か勝手にぶっ刺さってる里見とか、もう言いそうーー!!こいつらこれ言いそうーーー!!
その上で、ヒュース自身は「上層部は麓郎を教官にするつもりなんじゃないか?」と評価しているのが、これがまためっちゃくちゃ良かった。
確かにそうなんですよ。「教える」立場に立つ時、何が難しいって「何が分からないの?」を探り出すのが一番難しいんです。
「何が分からないのかが分からない」を解決するのは、本人にとっても他者にとっても難しい。
その点、既に自分で散々「何が分からないか分からない」を経験してきた麓郎って、恐らく人に教える立場になるのに最適な人間です。
麓郎自身が「俺はなんでこのメンバーで隊長に選ばれたんだ!?」という疑問を抱いていたことに対する、最適な答え(かも知れないもの)の提示が素晴らしい。
かつ、それを知ってか知らずか、麓郎がきちんと前を向いて、「後は俺自身が決めること」という理解にたどり着いているのも滅茶苦茶良くて泣きそう。
あんなに迷いのカタマリだったのに、ヒュースの言葉を聞いてちゃんと前を向けてる……!
これ、麓郎の精神性も、ある意味並外れてると思うんですよね。
ショックをしっかり受けつつ、別に吹っ切ったわけでも開き直ったわけでもなく、けれどその上で前を向いて進める。
ちゃんとショックを背負って、その上で進める。そうそう出来ることじゃないですよ、これ。麓郎が考える「三雲と自分は同じ側」って、麓郎は意図していないだろうけど、まさにここ、「自分の弱さを受け入れられること」なんじゃないか、とすら思ったくらいです。
ワートリの特徴のひとつとして、ボーダーという「組織」がめちゃくちゃしっかり描かれている、という点があると思っています。
これは単にボーダーの構造の設定がきちんとしている、というだけの話ではなく、ボーダーがどう運営されているか、何をやろうとしているか、そこまでしっかり描写されており、しかも構成メンバーが「組織の意図を読む」というところまできちんと描いている。
そこから考えると、麓郎がC級を引き上げてどんどんB級に引き上げている未来、それも見たい。
今回の試験って、ホント「幹部たちが、ボーダーの今後をどうしていきたいのか」ということを想像させて、考えさせる試験ばかりでしたよね。「これからのボーダー」を描くなら絶対必要な展開だったと思うんですよ。
それはそうと、香取。今回の香取、本当、本当に最高だった。
特に、隊長がもった点数を各メンバーに振り分ける、「隊長評価」の場面。各チーム、「誰が誰のことをどう評価しているのか」という掘り下げが凄くって、ここはここで超面白かったんですけど。
ワートリって、基本「仕事が出来るキャラクター」「自分の立ち位置をわきまえて、それに基づいた行動が出来るキャラクター」が非常に多いんですよ。
つまり大人びたキャラが多い。中高生なのにみんなすごい大人。まあ、それはそれで読んでて気持ちいいんですけど。
そんな中でも、「わがままで言語化が下手な気分屋」という、ワートリの中では数少ない、年齢相応の立ち位置を保っていたのが香取です。
そんな香取、隊長評価で、「三雲に点数を全部ぶち込む」といった諏訪さんの言葉に、ぎゃーぎゃー反対します。
これはこれで普通というか、中高生という年齢を考慮すればむしろ皆物わかりが良すぎるくらいだけど、香取は「あたしがダメだっていってんでしょ」と凄い顔で主張した上で、100点分を自分で振り分けることになります。
ここで書いたのが、「諏訪、隠岐、宇井」の自分以外のメンバーにも振り分けつつ、結局三雲に一番多いポイントを振る内容。
これもーー。
これですね。ここ本当最高でした。
香取というキャラって、結局最初から最後まで「本心を表に出せない、天才型だけど不器用で、実は仲間に対する思いは強いキャラ」なんですよ。
ただ、それが今までは、香取隊にしか向けられていなかった。ここで、三雲の働きを実はしっかりと評価していた、という上で、更に自分をフォローしてくれていた諏訪さん、隠岐、宇井にゃんにもちゃんと感謝の点数を入れている、という。
香取というキャラクターの「面倒くさい」部分をきちんと描きつつ、閉鎖環境編を経て少しだけ周囲への評価を変えた香取の思いを、隊長評価という点で数値化してみせる。
これ、「閉鎖環境編を経て、変わらないけど少しだけ変わった香取」の描き方として、本当の本当に「完璧」な描写だと思うんですよね。素晴らしい……もう素晴らしい以外の言葉がない……
私、ワートリで一番の推しは弓場隊の帯島ユカリさんなんですが、今回だけは「ワートリのヒロインは香取なのかも知れん」と思いましたもの。
麓郎もそうなんですが、「精神的に未熟な二人」の閉鎖環境編を経ての成長、あまりに完成度が高すぎる。
今回の試験、麓郎と香取のために実施されたんじゃないかと思うくらい。
閉鎖環境編だけで改めて考えても、諏訪隊の完成度って本当凄かったですよね。
諏訪さんがきちんと「周囲にビジョンを提示して、皆を引っ張るリーダー」で、三雲のアイディア特化の特性をきちんと活かしつつ、ワガママ放題なようで案外色々考えている香取をしっかりコントロールしている。
隠岐と宇井にゃんの存在もめちゃ大きくて、この二人、どんな場面でも場の雰囲気を緩くしつつ、随所でフォローの声を入れてくれるなあと思っていたら、最初の時点で諏訪さんから「三雲に対する期待」を聞かされていたんですね。
この点も諏訪さんのド有能さが存分に発揮されていて、諏訪さんの株が巻を追うごとにストップ高を更新し続けています。株価壊れる。諏訪さんに上司になって欲しい。
あと、隠岐の「小さい子撃ちにくい」発言が、まさかこんなところでフォローされるとは思わなかった。
ボーダー園の存在も、「ボーダーの未来」を的確に表現されている描写で、これまた素晴らしいですよね。
隊長評価をどう処理するのか、というのも、隊ごとの「色」が非常に端的に表れていてとても良かったですよね。
あっさり「山分け」で落ち着く隊もあれば、隊長がきちんと説明して偏らせる隊も、「お互いがお互いに分配する」なんて隊もありました。
二宮、言ってることは「千佳とユズルは遠征狙ってるんだから頑張れ」だけなのに、「今のままじゃ無理だからな」とか厳しいプレッシャーを追加するあたり、本当ザ・二宮って感じでこれも解像度高い。
最初から最後まで1位を保ってきた水上が、心底本音そうな表情で「こんなの俺には向いてない」と言うところ、ああ普段の生駒隊ではきっともの凄くイコさんや周囲の明るさに助けられていて、だからこそ「ナンバーツーの策士」として動けていて、それを心底実感しているんだろうなあ、と感慨しきりでした。
評価の話でいうと、「地味な働きの方が評価されにくいけれど、長期間の業務で本当に必要なのはそっち」なんて話も途中で出てきましたよね。
これ、実際の仕事上でもよく問題になる話で、組織運営に対する解像度が高いなーなんて勝手に感心してました。
それはそうと。
最後の最後にぶっこまれてきた、次回の「戦闘訓練」の話。
「A級 vs B級」という構図だけでも十分、もう本当に十分熱いんですが、しかもそこで補充要員に参加するのが、雷蔵さん!クローニン!沢村さん!!林藤さん!!!
特に雷蔵なんて、以前から「元戦闘員」って情報はちょこちょこ出ていたんですが、ここに来て本当に戦うなんて思いませんでしたよ。
林藤さんが自分のチームに所属すると知った時の三輪の慌てっぷりも面白かったし、沢村さんの強者オーラも凄かった。
あと、林藤さんの立ち姿の角度がもう強者の風格しかなくって、でもこれで案外あっさり落ちちゃうのもありだなとか思っていて、もうどう描かれても面白そう。
今まで直接描かれることがなかった「A級のメンバー vs B級のメンバー」というのももう単純に楽しみだし、二宮 vs 出水のシューター最強対決とか、迅のチート能力をよく知っている三雲の攻略アイディアとか、今まで殆ど描写されていない片桐隊の活躍とか、もう楽しみな場面が多すぎる。
あと玉狛第一が普通に敵として出てくるの絶望感すごそう(小南は本気出せなそうだけど)
本誌を読みたいとも思いつつ、単行本で情報の洪水を浴びる楽しさも捨てがたいので、引き続き「続き読みたい」と身もだえしながら待つ所存なわけです。よろしくお願いします。
長々と書いてしまいました。
取り急ぎ、この記事で書きたかったのは
「ワートリの29巻面白すぎでした皆さん読んでくださいまだ既刊読んでない方は既刊も含めて読んでください損はさせません」
のひとことであり、他に書きたいことは特にありません。よろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo:ワールドトリガー29 (ジャンプコミックスDIGITAL)




