会社で出世したいですか?と問われて、「全く」という方もいるだろうが、大方は、「できれば」と答えるだろう。
出世しなければ給料も上がらず、やりたいことも出来ないからだ。
サラリーマンとなったからには、「出世」したい。それは少しもおかしなことではない。
しかし、どうすれば「出世」できるか、ということについてはあまり多くが語られていない。というより、むしろ「間違ったことが語られている」と言っても良いかもしれない。
例えばつい先日、ある上場企業で「出世するためには何が必要ですか?」と聞いた所、一番にあがってきたのが、「スキルアップ」だった。
そして、その中身を聞くと、「英語」や、「企画力」、あるいは「プレゼンテーション力」など、技能に係るものがほとんどであった。他には、「上司に気に入られること」、果ては「運」と回答した方もいた。
たしかにこれらの要素は重要である。
だが、経験的に皆知っているように、英語などの「スキル」は出世するかどうかの決定的要因ではない。「スキルをつけること」や、「上司に気に入られるかどうか」に一所懸命になっても、「出世が得られるか」は、別の話である。
では何がもっとも重要なのか。
これについては、ピーター・ドラッカーが的確なことを言っている。
これは世間の常識である。現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るということは起こらない。
上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。たとえ上司が無能や失敗のため更迭されても、有能な次席があとを継ぐことはない。外から来る者が後を継ぐ。その上その新しい上司は息のかかった有能な若者たちを連れてくる。
したがって、優秀な上司、昇進の早い上司を持つことほど、部下にとって助けとなるものはない。
(経営者の条件 ダイヤモンド社)
単純化してしまえば、「上司が出世すること」が、自分が出世するための決定要因であるということだ。
例え下衆で、人望がなく、部下に対して何もしない上司であっても、彼が出世できなければあなたも出世できない。
サラリーマン金太郎は、会社の創業者である大和 守之助が彼を引き上げた。
島耕作は、上司である中沢 喜一が出世し、社長にまでなったから、島耕作も社長になれた。
漫画はフィクションであるが、世の中の縮図である。
さて、我々はこの状態で何をすべきだろうか。
先ほどのピーター・ドラッカーの引用には、続きがある。
部下は上司を改革したがる。有能な高級官僚は新任の閣僚に対する指南役を自任しがちである。そしてもっぱら限界を克服させようとする。
しかし、成果をあげる官僚は「新長官は何ができるか」を考える。そして、「議会や大統領や国民との信頼づくりがうまい」のであれば、そのような能力を十分に使わせるようにする。
優れた政策や行政も、政治的な手腕をもって議会や大統領に提示しなければ意味が無い。しかも新閣僚は、官僚が彼を助けようとしていることを知るならば、政策や行政についての説明にも耳を傾ける。
上司を変えるのはムリである。
しかし、上司を助け、成果を上げさせることは誰でもできる。
「上司の強みを活かし、成果を上げさせ、出世させよ。」
これが、自分が出世するためのただ一つの方法である。
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