(前編はこちら⇒https://blog.tinect.jp/?p=49583)
『就職先を探してくれる』と言う知人Aに対して
私は営業費用として約50万円を支払いました。
不穏に思った私は、Aの素性を確かめるため、
まずはAが勤めていたハズの『商社』に電話をかけた。
適当な挨拶をして、単刀直入に聞いてみた。
「A(フルネーム)さんが、最近辞められたという噂を耳にしました、営業課長だったAさんは辞められたのですか?」
Aの名前は間違いなく本名。
50万を振り込む時に確認したから間違いない。
短い沈黙の後、
「少々お待ちください・・・」
そう言うと受付のお姉さんは数分戻りませんでした。
Aの話では2年前までは在籍していたハズ。
(もしや受付さんは新人だからAを知らないのか?)
わたしは都合の良い思考を巡らせました。
改めて電話に出たお姉さんは言いました。
「過去十年遡ってみても、Aという苗字の社員はおりませんでした」。
終 了
いやいや・・・もしかすると・・・
すでに辞めた社員だから、
個人情報を保護してるとか?
一瞬・・・・都合よくそう思いました。
しかし・・・それはありえない。
なぜならAは元営業課長。
その後に会社の役員もやっていたと言っていた。
言わば『会社の顔』だった人物の名前を隠すだろうか?
いや・・・そんな事はありえない。
あの明るい気さくなAは『詐欺師』だった。
どこの誰かもわからない。
そんな彼がもうすぐ私に会いに沖縄に来る・・・・
(本当に来るのだろうか?一体なんのために?)
私は思った。
(いや・・いいさ、丁度良かったじゃないか)と。
本人を直接問いただせば良い話なのですから・・
後日・・・・Aは本当に沖縄に来た。
私は笑顔でAを出迎えました。
Aは電話で話す通りの、
よく喋る。陽気な男でした・・・・
とても悪人には見えなかった。
悪人には・・・・
食事をして話が盛り上がると、
Aは何枚かの写真を見せてきました。
「これは、どこそこに行った時の写真で~」
「へーそうなんだ・・・」
私は適当な相槌を打ちました。
Aの話が全く耳に入ってきません・・・・
私は手の震えを隠すのに精いっぱいだったのです。
この震えは怒りじゃありません・・
恐怖。
Aが「自分だ」と言って見せてくる人の写真。
・・しかしAはどこにも写っていません。
写っているのは全くの別人。
(お前は・・誰だ?)
もはやAに騙されていた怒りや悲しみなど、
どこかに吹き飛んでしまいました。
そして私は・・『ある事』を確信したのです。
実は『Aが商社に勤めていなかった事』を知った私は、
Aに会う前に『知人』に相談をしていたのです。
このAの話を聞いた知人は言いました。
「そいつは怪しい、話が変だぞ?」
それはもう・・・わかりきった答えでした。
しかし知人が『オカシイ』と言ったのは、
Aから聞いた病院の話の事でした。
Aは鬱になり無理やり病院に入れられ、
ずっと拘束されていたと言っていました。
その話を聞いた知人はこう言いました。
「鬱とは無気力な状態だから、
無理やり拘束される事はまず無い・・・・」
「・・・もしAが本当に、
病院で拘束されていたのだとしたら・・・」
「それは鬱じゃなくて・・・・・・」
(・・・・・・)
つまり・・Aは詐欺師じゃなく病人?
ウソじゃなく妄想?
一体・・・
なにが真実なんだ?
どうしても知りたかった。
・・・私は沖縄に来たAに優しく語り掛けました。
「頼む・・本当の事を言ってくれないか?」
Aは繰り返します。
「オレはウソなんて言ってない!」
泣きじゃくる、30代無職のオッサンが二匹。
そしてAは怒り狂って言うのです。
「オレはお前の為に〇〇にも営業に行った!
〇〇社にも行った!〇〇〇〇にも頭を下げた!
大勢の前でお前の為に必死に営業したんだ!」
・・・・そうだな、その話は前に聞いたよ。
モチロン・・・・ちゃんと覚えてるよ。
大手求人会社に必死にコンタクトを取りつけてくれて、
Aは営業の二人と会議室で話し合ったんだよな?
Aが何かを言うたびに、
片方の営業マンが席を立ち、事実関係を調べられたと。
「やっぱ大手の営業マンは違うな~」と言ってたな?
後に大手求人会社の上層部に話が通り、
東京の本社でプレゼンをしたと言っていたな?
大勢の役員が見る前で、
演説をして大喝采を浴びたと言っていたな?
さらに帰り際に・・・
その大手求人会社から引き抜きにあったと、
そんな自慢もしていたね?
・・・ちゃんと調べたよ。
全部デタラメだった。
Aが営業に行ったと言っていた、
求人誌の会社、新聞社、大手メディア・・・・・
1社たりとも・・・営業に行ってなかったのです。
元プロレーサー?海外で優勝?
大手商社の元役員?プロライター?
Aの話に『真実』は無かった。
私が何度も質問を繰り返しましたが、
Aを責めるつもりは全くありませんでした。
『お金を搾り取るつもりで私に近づいたのか?』
・・・私たちは・・一体・・なんだったのか?
つまり、それが知りたかった。
しかし・・何を聞いてもAは泣きわめき。
疑う私に対して怒り狂うばかり・・・・・・
「ごめんな・・・・」
結局・・私がAに謝罪しました。
「東京への営業は辞めにしてくれ、
お詫びとして50万は受け取って欲しい・・」
それを聞いたAは・・・・
嬉しそうに笑いました。
そして滞在の最終日は、
二人で仲良く夜釣りをしました。
たのしかった。
翌日、Aを見送りました。
・・後日、Aは私に言いました。
「金は返す!許してくれ!」
残念ながらこれは良心が傷んでの告白では無かった。
私がウソをまとめた『証拠』を突き付けたからです。
結局、確かに病気はあったのですが
『騙してお金を取っている』自覚があったのです。
つまりAは、
最初からお金を騙し取る目的で、
私に近づいてきたのです。
つい先日の話です。
感想すら出てきません。
だれか焼肉をおごってください。
おしまい
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【プロフィール】
著者名:ハルオサン
18歳で警察官をクビになってから、社会の闇をさまよい続けた結果、こんなことを書いて生活するようになってしまいました。
『警察官クビになってからブログ』⇒keikubi.co