「先輩、ちょっとうちの会社、ひどくないですか?」

「何?」

 

「評価が公平じゃないと思うんですよ。」

「具体的には?」

 

「例えば、昇進の条件です。シニアコンサルタントになるためには、Aランクの顧客を2社以上担当しなければならない、ってあります。」

「うん、何もおかしくないと思うけど。」

 

「でも、Aランクのお客さん自体、うちの部署では、4、5社しかないじゃないですか。普通に考えたら担当できないと思うんですけど。」

「担当させてもらえるように頑張りなよ。同期の滝川さんは、こないだアサインされたよ。」

 

「知ってます。なんで彼がアサインされたんですか?」

「優秀だからじゃない?」

 

「どういう基準で優秀だとみなされたのか、わからないんですよ。」

「評価基準のシートを見ればいいじゃない。」

 

「あの基準、抽象的でよくわからないんですよ。「1億円以上のプロジェクトをリーダーとして遂行できる能力がある」とか。」

「具体的だと思うけど。」

 

「どうすれば、Aランクの顧客を担当させてもらえるんですか?それを知りたいんです。」

「Aランクの顧客を担当できるくらいの能力がある、とみなされたら、アサインされるんじゃない?」

 

「だから、その基準が……」

「唯一言えるのは、すでにあなたより滝川さんのほうが、昇進にふさわしい、とみなされているということ。」

 

「だから公平ではないって言ってるんです。」

「そうだね。」

 

*

 

「先輩、うちの会社、ひどくないですか?」

「今度は何?」

 

「AI研修があるらしいのですけど、それを受けられる人って、全員じゃないんですよ。」

「知ってる。」

 

「課長がAI研修の対象者を選ぶ、ってことになってますよね。」

「そうだね。AI研修も安くないからね。自分で勉強すれば?」

 

「課長はどういう基準で、対象者を選ぶんですかね。」

「AIをうまく活かしてくれそうな人にするんじゃないかな。もう決めたって言ってたけど。」

 

「え、そうなんですか。何も聞いてないんですけど。」

「あなたは対象者じゃないんじゃないかな。」

 

「どういう基準で選ばれるのか、公表されてないのはおかしいと思うんですけど。」

「なんで?」

 

「不公平じゃないですか。」

「誰が優秀なのかは、上はみんなわかっていると思うよ。」

 

「どうしたら「優秀だ」ってみなされるのか、全くわからないんですけど。」

「そうだね。」

 

*

 

「先輩、ちょっとうちの会社、ひどくないですか?」

「そうだね、ひどいね。」

 

「ちゃんと聞いて下さいよ。」

「もちろん聞いてるよ。」

 

「有給の申請をしたんですけど、ダメだと言われたんです。」

「ほうほう。」

 

「休みたいときに休めないなんて、おかしいと思いません?」

「そうだね、おかしいね。」

 

「もう宿とか、取っちゃったんですよ。」

「それは困るね。」

 

「そしたら上から、「そこは期末の追い込みで、ギリギリ目標行くかどうかだから、なんとか休みの次期をすこしずらせないかな」って、言われました。」

「頼られてるじゃない。」

 

「そうなんですけど、前から計画してたんですよ」

「会社は有給に関しては、時季の変更権があるからね。でも、なんで期末は忙しいってわかってて、そこを外さなかったの?」

 

「好きなときに休みを取る権利があると思うんです。」

「そうだね。好きに休めばいいと思うよ。」

 

*

 

「先輩、ちょっとうちの会社、ひどくないですか?」

「ひどいよね。」

 

「いや、今回も本当にひどいんですよ。」

「どうしたの?」

 

「社内公募があったんです。新規事業の企画担当。」

「知ってる。」

 

「応募したんですよ。」

「うん。」

 

「落ちたんです。」

「そうなんだ。残念だったね。」

 

「で、選ばれたのが、また滝川さんなんですよ。」

「滝川さん、忙しいね。」

 

「選考基準が全くわからないんです。何を見て判断したのか、説明もなかった。」

「人と企画を見たんじゃないかな。」

 

「だから、その基準を聞いてるんです。」

「僕も知らないよ。あ、でもちょっと聞いたな。滝川さんは、事前に企画の素案を三つくらい作って、部長に持っていったらしいよ。」

 

「……それ、ずるくないですか?」

「なんで?」

 

「そういうことをしていいって聞いてないですよ。」

「そうだね。」

 

*

 

「先輩。」

「うん。」

 

「僕、この会社に向いてないんですかね。」

「急にどうしたの。」

 

「いや、ずっと思ってたんですけど。」

「うん。有給とかアサインの件とか?」

 

「それもありますけど……もしかして、自分は嫌われているんじゃないかと思いまして。」

「別に嫌われてはないと思うよ。」

 

「好き嫌いで評価されていて、嫌われてしまったらどうしようもないですよね。」

「好き嫌いで評価されているわけではないと思うよ。」

 

「絶対に嫌われていますよ。」

「そうだね。」

 

「先輩は理不尽だと思わないんですか?」

「何が?」

 

「この会社の評価です。」

「そう?評価は明確だと思うけど。優秀な人がアサインされて、社内営業がちゃんとできるひとが、希望する仕事ができる。わかりやすいよ。」

 

「僕がダメだって言ってるんですか?」

「そうは言わないよ。より優秀な人がいるだけ。」

 

「じゃ、どういうことですか。」

「会社で望んだ地位や仕事、結果を得たいなら、自己評価より、上司とか周りの評価のほうが重要だってことじゃない?」

 

 

 

【お知らせ】
90万部突破のベストセラー『頭のいい人が話す前に考えていること』著者・安達裕哉が語る特別ウェビナーを開催します。
なぜか伝わらない。ちゃんと説明しているのに、人が動かない――その原因は「言語化」にあります。
問題を「話し方」や「伝え方」だと思っている限り、この課題は一生解決しません。
本ウェビナーでは、ベストセラー著者・安達裕哉が、言語化とは何か、なぜ「伝え方」だけ磨いても意味がないのか、信頼される人が無意識にやっている思考を、具体例と練習問題を交えて解き明かします。
自分以外の誰かの意思決定や行動を、前に進める立場にあるビジネスパーソンの方に特におすすめの内容です。
ぜひ、お気軽にご参加ください。


このウェビナーでお伝えする内容
・言語化とは何か
・伝え方だけ磨いても人は動かない
・信頼を得るには? – 青と白の服どちらが良い?
・練習問題 – 「夜ご飯何がいい?」
・1on1を「サクッと」済ませない
・「違う、そうじゃない」を防ぐ
・良い考えが浮かばないのはなぜ?
・ストーリーを作る

<2026年2月24日 実施予定>

なぜ、言語化できないと人は動かないのか

講演者:90万部突破!!『頭のいい人が話す前に考えていること』著者・安達裕哉



【対象】
この講座の対象は、特定の職種や役職に限定されません。
共通する条件は、ただ一つ。「自分以外の誰かの意思決定や行動を、前に進める立場にある方」です。

例えば、
・上司として、部下やチームを動かす必要がある方
・マーケ担当として、営業や社内を動かす必要がある方
・事業責任者として、経営や他部署を動かす必要がある方

など、組織や立場は違っても、ビジネスパーソンとして「自分の言葉で人を動かす必要がある場面」に直面している方が対象です。


日時:
2026/2/24(火) 14:00-15:00

参加費:無料
Zoomウェビナーによるオンライン配信となります。


お申込み・詳細
こちらのウェビナー詳細ページ をご覧ください。

(2026/2/9更新)

 

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

〇まぐまぐ:実務で使える、生成AI導入の教科書

Photo:Museums Victoria