数週間前・・・・ここは沖縄。

30代無職のオッサン二人が肩を並べていた。

 

これほど汚い構図も無い。

私は繰り返し知人『A』に優しく語り掛けました。

 

「なぁ?もう本当のことを言ってくれないか?」

 

「なんだっ!?俺を疑うのか?」

Aは声を荒げて言う。

(・・・・・・・・・・)

 

さらに問い詰めると、『A』は泣き出した。

「ううっにたい、にたい」

うーん・・・・・

 

わかる、わかるよ。

 

・・・・・この彼『A』と出会ったのは、

3年ほど前のこと。

 

ネットを通じて知り合い、

『たまに連絡を取り合うだけの仲』でした。

・・・と言っても連絡は完全に一方的なものです。

商社に勤めていると言う彼は、

「営業課長だから好きに時間が作れるんだ~」

そう言って毎日、私に通話をかけてきました。

 

当時の私は『工場作業員』

昼勤と夜勤の単純作業を繰り返すだけの毎日・・・

時間の不規則な仕事ですから、

平日の昼間や深夜や早朝に時間が空きます。

 

そんな私はAにとって絶好の通話相手。

Aはとにかく『よく喋る男』でした。

 

学生時代に不遇だった話。

プロレーサーになり活躍レースで優勝した話。

大手商社で役員にまで上りつめた話。

 

と・・・・まぁ・・・・・・

『栄光のストーリー』を語って聞かせるのです。

・・・まるで漫画の主人公のような話。

工場仕事で疲れボロボロの私は、

毎日かかってくる電話に迷惑しながらも・・・

 

唯一自分に関心を持ってくれる彼に、

どこか親近感を抱いておりました。

 

 

ある日、私は仕事中に大怪我をしました。

※画像はイメージです。(実際は首の骨をやっちゃっただけです)

 

上司は冷たく言いました。

「体が動かないお前に居場所は無い」

知人の紹介で入社した私は、もめ事を起こせない。

 

会社も上司もそれをわかっているのです。

「申し訳ない、黙って会社を辞めてくれ」

知人にそう言われれば、そうするしか無かった。

 

家族は「もう別々に暮らそう」と言う。

恋人からは「好きな人が出来た」と言われる。

 

まぁ・・・・・そりゃそう言われますわね。

体を壊した30代無職の人生はあまりに重い。

私は一人遠く離れた土地に移り住み、

在宅で電話応対や事務の仕事を始めました。

在宅仕事の社長さんは、とても良い人でした。

「カラダを悪くしている?お気の毒に・・・・

私がお仕事を用意して生活をサポートしますよ」。

 

私は言われるがまま、必死に働きました。

 

しかし・・・なかなかお給料が支払われない。

 

「ビジネスが軌道に乗ったら支払います!」

何度もそう言われ続けたのですが・・

 

結局半年ほどたっても、

給料は支払われなかった。

 

そして社長さんとの連絡が途絶えてしまった。

 

 

アウチッ!

騙された・・・まぁでも・・こんなもんか。

こんなもんだ・・・・しょうがない。

なんか、『やっぱりな』って感じでした。

 

そのタイミングで・・・

Aから連絡が入りました。

 

私が事情を説明するとAは言いました。

「そうか・・じゃぁライターになれば良いよ!」

 

(ライター?)

 

「実はオレ、雑誌でコラム書いてるんだ」

 

(んん???・・・そうだったのか????)

Aはライターの魅力を存分に語ります。

「これからはライターの時代だよ、

体が動かないなら文章で稼ごうぜ!」

 

「まずはセンスを見てやるから、

試しに何本か書いてみろよ!」

 

そう言われた私は、ワラにもすがる思いで、

昔好きだった『漫画のコラム』を書き上げました。

 

文章を書くなど高校生以来・・・

書き上げたコラムをAに見せると・・

「誤字脱字だらけだけど、なかなか面白かったよ

・・・そう褒められ嬉しくなった。

 

「じゃあこのコラムを知り合いの出版社に持ち込んでライターの仕事とってきてやるよ!」

 

その話を聞いて・・・・私はハッと目が覚めた。

あっ・・・これたぶん・・・・

 

また騙されてる。

 

別に証拠は無いのですが『疑心暗鬼』になった。

なにせ先日、騙されたことに気づいたばかり。

 

 

 

なぜ私にそんな親切をするのか?

会ったことも無い。

ただのネットの知人である。

 

そして気になるのがAの輝かしい経歴・・・・

 

怪しすぎるだろう。

このAは一体・・?

後日、Aは私のコラムを出版社に持ち込んだ話を、

面白おかしく語って聞かせてくれました。

 

「〇〇会社の担当さんが、このコラムに書いてある漫画のファンでさぁ~話が盛り上がったよ!」

なんてね。

 

(ウソばっかり・・・)

 

・・・私はその話を全く信じませんでした。

そこでAとの関係をバッサリ切った!

無職でカラダを壊しているのなら、

『ライターとして食べていけば良い?』

そんなこと出来るワケないだろう。

 

ああぁ・・・・もう充分やっただろう・・・

いろいろ限界。

でもコラムは書いてみると楽しかった・・・・

 

(ブログで何か書いてみようかな?)

 

そんな軽い気持ちで始めたのが、

『警察官クビになってからブログ』でした。

 

私が18歳で警察をクビになってからのお話を面白おかしく書いたブログです。

 

それがハネた。

出版社さんからも声もかかり・・・・

そして1年後・・カドカワから本にもなり・・

そしてコラムの仕事が来るようになりました。

まさか自分がライターになるとは・・・

まさかのまさかです。

 

思えばAが1年前に、

『コラム書いてみろよ!』と言ったことが、

ブログを始めるきっかけでした。

 

(一言くらいAにお礼を言うべきじゃないか?)

そう考えた私はAにメッセージを送りました。

私がライターになった話を聞いたAは、

「すごいじゃないか!」と褒めてくれた。

 

「Aは今何をしてるんだ?」と聞くと。

 

「実は仕事は辞めたんだ・・・」と言う。

 

 

Aはボロボロでした。

何でも仕事で『鬱』になり、

無理やり病院に入れられたのだとか。

 

そして『時計しか無い部屋』に拘束され、

ずっと繋がれていたのだと言う。

はぁーなるほど・・大変だったようだ・・・・

 

何度か適当な世間話をしているなかで・・・・

 

「実はいま就職活動をしている」。

という話をポロッとAにしました。

ブログは本にもなり一段落。

 

体も癒えてきた私は、

そろそろ社会復帰したかったのです。

 

何よりもう、静かに暮らしたかった。

 

それを聞いたAは言いました。

「なぁお詫びをさせてくれないか?」

 

(お詫び???)

 

Aは重苦しい声で言います。

「うん、気づいてたんだろ?

1年前に俺が騙そうとしていたこと?」

 

(ああ・・そういえばそうだった・・・)

Aは私のような人を集めライターとして働かせ、

仕事を振って楽して儲けようとしていたらしい。

 

どういう仕組みか知りませんが、

「実はそう企んでいた」と聞かされました。

ははぁ・・・ふーん?なるほど?

 

「もう済んだ話だから、気にしなくて良いよ」

もちろん私はそう言いました。

 

しかしAは食い下がります。

「それじゃぁオレの気が済まない!頼む!

今度こそ本当に仕事を見つけてきてやる!」

 

私が黙っていると。さらにAは言いました。

「今の彼女と出会って自分は生まれ変わった!」

 

「これまでの悪事を清算したいんだ!」

力強く電話口で語るA。

 

(うーん・・・・?????)

そうか・・・よし・・・・

これも何かの縁だ。

Aを信じてみようじゃないか。

私はAに仕事探しを任せることにしました。

 

・・・ところが話は2転3転した。

「これはお詫びだから金は要らない!」

Aは最初そう言っていたのですが・・・

 

「これを商売にしたい!」

と後日言い出し。

 

ついには、

「仕事探しには金がかかる・・・」

と金の話をはじめたのです。

 

不審に思いましたが・・・・

仕事探しから帰ったAが言うのです。

「今日は〇万円かかったよ・・・」

そんなような話をされると、良心が痛む。

考えてみれば、彼は無職。

私もたまにコラムは書くけれど、ほぼ無職。

 

生活が不安定でつらい気持ち・・よくわかる。

金が欲しいのだろう。当たり前だ。

 

『ライターに仕事を斡旋する、

コンサルのような商売をしたい』

彼は楽しそうに、そんな話をします。

 

もしこれが、彼の仕事に繋がるのであれば・・

私は全力で応援したいと思いました。

 

・・・お金も出来る限り出してあげよう。

 

そう思っていたある日、

とんでも無い提案がAからありました。

「ちゃんと営業するためには、

東京に移住しないと無理だ!」

 

Aは熱弁をふるいました。

「オレの好きな西原理恵子先生を見習うんだ!

新聞と求人誌でコラムを書こう!」

 

つまりAは東京の『新聞社』『求人会社』に、

自ら営業に行くと言うのです。

 

なんだか就活が・・随分と壮大な話になっていた。

ウソは言ってないよな?」

「隠し事は無いよな?」

私は何度かAに念を押しました。

 

 

「当たり前だろ!

仲間には絶対ウソは言わん!」

とカメラ越しに啖呵を切るA。

しかし・・・怪しい。

怪しい・・・・が、

『自分は生まれ変わった』『真っ当に生きる』

と言う彼の言葉を信じたかった。

 

結局、私は営業経費3か月分として、

『約50万円』

をAの口座へと振り込みました。

 


Aには心配かけまいと、

「金はある」と言っていましたが・・

本当は・・・なけなしの50万円です。

50万円を手にしたAは陽気に言いました。

 

 

「東京に移住する前に、

沖縄に会いに行くよ!」

 

私も悩み・・・考えました・・・

もし仮にAが詐欺師だとしたら?

わざわざ私が住む沖縄へ来るだろうか? 

 

それとも何か企みがあるのか?

Aとは一体何者なのか?

 

元プロレーサー?

元大手商社の役員?

プロのライター?

 

・・・私はAの素性を調べることにしました。

 

後編に続く。

 

 

【プロフィール】

著者名:ハルオサン

18歳で警察官をクビになってから、社会の闇をさまよい続けた結果、こんなことを書いて生活するようになってしまいました。

『警察官クビになってからブログ』⇒keikubi.co

ツイッター⇒https://twitter.com/keikubi123