学生の勉強と社会人の勉強で一番大きく違うのは、主体性の有無だ。

学生の本分は勉強だが、社会人がわざわざ勉強するのは、そこに主体性があるからだというのは、特におかしくはない。

 

ただ、ここで言いたいのは、主体性がないのは良くないことで、主体性があるのは素晴らしいことだ、ということではない。

主体的である、というと言葉の響きは良いけれど、そこには気持ち次第で簡単に崩れてしまう危うさが含まれている。

主体性は脆いのだ。だからこそ、その脆さはどうにかして補強しなければならない。

 

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個人的な話だが、1ヶ月ほど前、人事から経理に異動した。

実は異動の話は昨年の冬、つまり半年以上も前から言われていた。その時、社長に呼び出されて言われたことは「簿記の勉強をしたほうがいい」ということだった。

「『買掛金って何ですか?』という状態では、さすがに困る」と笑いながら言われた。

 

「買掛金って何ですか?」という状態だった私は笑えなかったので、とりあえず本屋さんの資格本コーナーへ向かった。

まずは簿記3級から、ということでテキストを購入。早速パラパラと読み進めていった。

 

「漫画で学ぶ」形式のものだったので、とっかかりやすさはあったが、何しろ初めて学ぶ分野だ。

貸借や仕訳の概念すら一切なく、「そもそも簿記ってなんだっけ?」「経理って何するところだっけ?」というところから始めるレベルである。

 

だが、読んでいるうちにふとこんなことを思ってしまう。

「これ、経理で働いてから勉強したほうがラクなんじゃない?」

 「経理で働くために勉強したほうがいい」と言われていたのに「経理で働いてから勉強すればラクに資格が取れる」と思ってしまった自分がいた。

 

異動前にとりあえず3級を取得することはできたが、「主体的に勉強する」のは案外難しい、と思い知らされた出来事だった。

 次は2級を取ろうとしている。

 

誘惑に負けず勉強を進める工夫

そこでいよいよ本題だ。

資格を取るとなると「問題を解く必要がある」という壁にぶち当たる。

新しい知識を得ることに喜びはあるけれど、正直なところ、問題を解くのは結構面倒くさい。

「勉強が主体性に任されている」状態は、迷いが生じやすく、誘惑に負けやすい。そう痛感した私は、誘惑に勝つため、ある工夫をした。

 

私が一番効果を実感しているのは、次のやり方だ。

 

1. いつまでにどれだけの量をやるべきか、決める。

2. エクセルや紙に今日から期日までの日付を書き、カレンダーを作成する。

3. 1.で決めた量÷日数を計算し、1日にやる量をカレンダーに記入していく。

4. 終わったら塗りつぶしていく。

 

このやり方、実は、小学生の頃にやっていた“色塗り”と同じだ。

小学生の頃、夏休みの宿題と一緒に、終わったら塗りつぶしていくすごろくのような紙を配られた記憶はないだろうか。

あの頃は宿題に「毎日塗っていく無駄な作業」が加わっただけだと感じていたため、とにかく面倒で仕方なかったが、今になってあのすごろくの優秀さが身に染みる。

 

やるべきことが可視化され、全体像が見えること。スケジュール感を掴めること。どこまで進んているかが一目瞭然であること。

こういったメリットがあのカレンダーにはある。

(ちなみに可視化についてはどこかで読んだことがあったような、と思ったので調べたところ、かつてしんざきさんがご子息の宿題で可視化の話をされていました。子どもの勉強に限らず、大人でも有効ですね!https://blog.tinect.jp/?p=45869

 

可視化は「努力の貯金」を可能にする

可視化はスケジューリングを可能にする。

これでも充分なメリットだが、私が一番大きなメリットだと感じているのは、実は別のところにある。

 

それは、「努力の貯金ができるので、やらされ感を消せること」である。

 何事も、義務だと思うとやる気は起きてこない。どうしても“やらされている感”が出てきてしまう。

それは自分で決めたことであっても同じで、自分がやりたいと思い、やることを決め、楽しささえ感じていたはずの勉強も、一日にこれだけやらなければならない、と思うと、なんとなく億劫になってしまい、他のことをやりたくなってしまう。

 

でも、このカレンダーを使えば、やらされ感を消すことができる。

どういうことかというと、最初だけ、先取りしてしまうのだ。最初だけ「明日の分」までやってしまう。

そして、明日の分まで、塗りつぶす。

 

すると、翌日はやらされ感がなくなっている。翌日にやるのは「この日の義務」ではなく、「翌々日の先取り」だからだ。

先取りというのは、気分が良い。「予定より進んでいる」のは気持ちが良く、順調に進んでいるということ自体が、やる気を生み出す。

 

先取りしていなかったら、一日でも躓いてしまうと「挽回するために2日分やらなきゃいけないのか」と暗い気分になってしまい、「もうやめよう」とくじけてしまうかもしれない。先取りは、そういうことも回避できる。

 

借金している人が返済するためにお金を稼ぐのは、義務感から強い思いで働けるのかもしれないけれど、ポジティブな気持ちにはなりにくいだろう。(あくまで想像だ。)

でも借金がなかったら、稼いだ分は自分の好きなように使ったり、貯金したりと、ポジティブなものになるから楽しい。

 

勉強も同じで、毎日その日のやるべきことをやるのは、毎日借金が生まれ、毎日借金を返済して0にしているようなものだ。

でも最初だけ先取りしてしまえば、あとは頑張れば頑張った分だけ、努力を貯金できる。

 

もし「最初だけ『明日の分』までやってしまう」ことが難しいのだとしたら、最初から1日減らしてスケジュールを組めばいいと思う。とにかく「先取り」している状態を強引にでも作り出しておくことが大切だ。

 

「わざわざカレンダーを作る必要はあるのか」と思った人がいるかもしれないが、カレンダーを作成しないと、先取り感を味わうことはできない。

頭の中で「いつもより多くやった」と思っても、今日やるべき量、明日やるべき量がどれだけなのかが明確になっていないと、今日やったことは今日で完結してしまい、翌日にはまたゼロからスタートしなければならなくなる。

勉強に継続性を持たせるためにも、カレンダーに落とし込んで可視化させることはすごく大事なのだ。

  

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学生は、「最優先にやるべきこと」が勉強だった。これは人によって違うだろうが、私はそうだった。

だから勉強を差し置いてやりたいことはなかったし、それゆえに「誘惑と闘う」ことも経験してこなかった。(唯一闘っていたのは、睡魔だった。)

だから友達が「嵐(ジャニーズ)が大好きで、テレビの誘惑と闘うのがつらい」と言っていても、心の底から共感することはできなかったし、眠さ以外で勉強しない理由があるのだろうか、とさえ思っていた。

 

しかし、今ならわかる。人生の楽しみややりたいこと、やるべきことは必ずしも一つではないのだ。

 

自分が社会人であることもあり、社会人が勉強するケースを想定して書いているが、もちろん学生であってもこのやり方は有効だ。

ありふれたやり方かもしれないけれど、最近になって初めて素晴らしさを実感しているということもあり、ぜひおすすめしたい。

 

「気になる内容だけど読むのに骨が折れる本」を読む時なんかにも、使えるのではないかと思う。

 

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【著者プロフィール】

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

【著書】

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(Photo:Aaron Jacobs