いまどきの20代~50代で、フェイスブックやツイッターといったSNSを使っていない人は少数派といっても過言ではないでしょう。
誰もがオンラインに投稿して、だれもが「いいね」や「シェア」をするのが2018年の現状です。皆さんは、良いインターネットライフを送っていますか。
さて先日、「はてなスター」という(株)はてなのローカルサービスについて、ネットの片隅でちょっとした論争が起こりました。
わたしのブログでははてなブックマークへのスター連打はやめてください
もし嫌でなければ、わたしのブログに関しては、はてなブックマークへのスター連打は自重してくださるようお願いいたします。
私は、はてなブックマークコメントへスター連打する行為や人が大変嫌いです。そういうことをされるとものすごく気分が悪くなるのです。これは感覚の問題なので、みなさんを納得させることは難しいです。嫌だから嫌としか言いようがありません。
ですが、「ああ、この人はそういうのが嫌なんだな。」ということをとりあえず心に留めておいてほしいのです。
「はてなスター」とは、フェイスブックやツイッターでいえば「いいね」にあたるものだと思ってください。
ただし、一般的な「いいね」とは違って、「はてなスター」は一人で十個も二十個も重ねられる点が違っているのですが。
日々ブログを読んでいていいなと思っても、コメントを書いたりトラックバックを送るのは敷居が高く、気持ちが十分に書き手に伝わらずに終わってしまうことも多いでしょう。
はてなスターは既存のブログにワンクリックで★がつけられます。あなたのいいなと思った気持ちを★に変えて、世界のブログに★をつけよう!
今回の論争のなかでは、「恣意的に大量のスターをつける人によって、オーディエンスの反応が扇動されている」という指摘や、「いつもは冷静沈着な投稿を心がけている人が」「誤解を招くかもしれない発言にもはてなスターをつけていることがある」と指摘がなされていましたが、私もはてなブログを利用しているため、思い当たるふしがたくさんありました。
特に後者、ブログやツイッターでは失言や誹謗にいつも気を配っている人が、かなり危うい投稿に「はてなスター」を付けていたり、非常に攻撃的な投稿に「はてなスター」をつけていたりする光景は、しばしば見かけるのです。
私自身も、「はてなスター」を付ける時には少し“脇が甘く“なっているかもしれません。
「『はてなスター』を付けている時は、ユーザーの脇が甘くなる」というのは、はてなユーザーとして気を付けておかなければならない点だと思いました。
フェイスブックやツイッターのユーザーも他人事ではない
では、フェイスブックやツイッターの場合はどうでしょうか。
見たところ、それほど事情は変わらないように思えます。
たとえば、あるツイッターユーザーがつけた「いいね」の痕跡を追いかけていると、「どうしてこの人が、こんな記事に『いいね』をつけているの?」とびっくりさせられることがままあります。
本人自身の投稿は非常に用心深くて、不偏不党を心がけているふしのある人でさえ、「いいね」を追跡するとそうとも限らない……ということは珍しくありません。
また、本人自身の投稿からはメンタルの安定性がうかがわれるのに、「シェア」や「リツイート」する投稿からは不穏な雰囲気が漂っている……ということも珍しくありません。
これらから、SNSユーザーとして気を付けなければならない点が少なくとも二つあるように思われます。
ひとつは、「いいね」や「シェア」や「リツイート」をする時に、自分の判断が甘くなっている可能性を自覚すること。
自分自身でメンションを投稿するのとは違って、「いいね」や「シェア」のたぐいには炎上のリスクがありません。
だからかもしれませんが、「いいね」や「シェア」をする際には、判断が甘くなってしまいがちです。
その「いいね」は、本当にあなたが押すべきものなのでしょうか? ひょっとして、雰囲気や気分に流されて「いいね」を押す羽目になったりしてはいないでしょうか。
もうひとつは、「シェア」や「リツイート」はもちろん、「いいね」も見ている人は見ている、ということです。
どれほど酷い投稿に「いいね」を押したとしても、あなたは炎上しないでしょうし、そのことで、あなたが誰かに詰問されることも稀だとは思います。
それでも、あなたが「いいね」を押したという状況そのものは他人には見えますし、比較的簡単にチェックすることもできます。
あなたが「いいね」を付けた投稿を、たまたま別の人が見かけてそれを発見することもあるでしょうし、なかには思想警察のごとく、他人のつけた「いいね」を過去に遡って調べてまわるような人もいることでしょう。
そうである以上、自分自身で投稿する時ほどではないにせよ、「いいね」のひとつひとつがあなたの評判や人品に影響する可能性がある、と考えておくべきでしょう。
あなたが何気なくつけた「いいね」によって、誰かがガッカリしていたり、誰かが驚いていたりすることがあるかもしれません。
そういった可能性を承知のうえで「いいね」をつけるのは正当なことだと思いますが、そういう可能性に思いを馳せることなく、漫然と「いいね」をつけているとしたら、あまり利口なこととは思えません。
「たかが『いいね』」、「されど『いいね』」
こう書くと、「たかが『いいね』じゃないか」とおっしゃる人もいるでしょう。
ええ、私も「たかが『いいね』」だと思いたいですし、「『いいね』ぐらい自由につけさせろ」、とも思うのです。
すっかり公なコミュニケーション手段と化してしまったSNS、やたらと気を遣わなければならなくなったSNSにおいて、「いいね」ぐらい自由につけさせろ! という気持ちはわかるつもりです。
でも、「たかが『いいね』」とみんなが思っているからこそ、その人の素顔に近いものが現れ出るし、そこに“読み“を働かせる人も現れてくるのではないでしょうか。
いまどきは誰もが炎上に気を付け、SNSを社交手段と心得ているので、投稿そのものに対してはネットリテラシーが向上しているように思います。
とりわけ、ツイッターやフェイスブックのような歴史の長いSNSに関しては、下手なことを書いたらまずいと知らない人のほうが少ないでしょう。
そうなると、他人を評価する際のプラスアルファの基準、あるいはあら探しの目のつけどころとして、「いいね」が浮上してくるわけです。
あなたの「いいね」は、今のままでも本当に大丈夫なのでしょうか?
文章や写真を投稿するのとは違い、「いいね」はボタンを一回押すだけの、とてもイージーな行為です。
それでも「いいね」はあなたの「意志表明」であり、あなたの内心の反映には違いなく、他人にはそれが見えているのです。
イージーだから油断しても構わない、というわけにはいかないでしょう。
まあ、なにかと面倒な昨今のインターネットですが、気を付けてやっていきましょう。
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【プロフィール】
著者:熊代亨
精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。
通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)など。
twitter:@twit_shirokuma
ブログ:『シロクマの屑籠』
(Photo:Stock Catalog)