多様な働き方が注目される昨今。わたしは紆余曲折あって、フリーランスライターとして生計を立てている。

 

フリーランスになって得られる自由と、それに対して負うべき責任は、事前に理解しているつもりだった。

でも実際フリーランスになってみると、思わぬところで「フリーランスってしんどいな!」と実感した。

 

フリーランスの『自由』が取り上げられることが多いから、ひとりの体験談として、フリーランスの『むずかしさ』もお伝えしたい。

 

覚悟していたデメリットとはちがう落とし穴

わたしはかれこれ2年と少し、フリーランスライターとして暮らしている。

 

「フリーランスのメリットは?」と聞かれれば、いつ・どこでも働けるところ、好きなことを仕事にできるところ、スーツを着て通勤しなくて済むところなどがまっさきに浮かぶ。

それに対するデメリットとしては、収入が不安定、社会的地位が低い、税金などの手続きを自分でしなくてはいけない、企業が守ってくれない、などがよく言われることだ。

 

このデメリットは承知していたから、フリーランスになっても「まぁこんな感じだよね」と慌てることも、困惑することもなかった。

 

でもいま挙げたところ以外にも、フリーランスのデメリットはある。

デメリットというか、『むずかしさ』とでも言おうか。フリーランスは想像している以上にシビアで、想定外の部分で自己判断と自己責任を求められる働き方だった。

 

産休・育休が取れないフリーランスの女

ちょっとこれは間抜けなのだが、ついこの前、「これはやばい」と思ったことがあった。高校の同級生数人と話していたとき、こんなやり取りを耳にしたのである。

「この会社だと育休が取りづらいから、転職するならいまのうちだよね~」

「入社して一定期間経たないと産休取れないところもあるから、早い方がいいよ」

 

うん? ちょっと待て。フリーランスって産休も育休もないじゃないか!!

よく考えたら当然なのだが、フリーランスになったときは24歳でまわりに結婚している人がほとんどいなかったし、ネットではフリーランス女性の産休・育休について書いている記事なんて見たことがなかった。

 

それに、わたしはバセドウ病になったことをきっかけに、休養しながらでも働けるフリーランスになったという経緯がある。

だから、「フリーランスは病気や出産・育児で休職したら給料がゼロになる」ということがすっかり頭から抜け落ちていた。

 

実際、手術で1週間以上働けなかったときは、ブログの微々たる収入以外の稼ぎはゼロだった。それがもっと重い病気で1か月働けなかったら? 子どもができたら?

 

フリーランスは万が一に備えて貯金するか、不労所得を用意するか、なにかしら対策を打たなくてはいけない。

それはわかっていたけれど、いざ自分が妊娠・出産をリアルに考える年齢になってみると、それがとてもむずかしいことを痛感する。

 

だれにでも働けなくなる可能性がある以上、「長期休職を余儀なくされたときに後ろ盾がない」ということは、かなり深刻なデメリットだ。

とくに子どもがほしい女性は、産休・育休がないという重みを理解してからフリーになる必要がある。

 

最近は若い女性のフリーランスも増えているから、「産休・育休ないんだよ!」というのは、真っ先に伝えておきたい。

 

自動的にスキルアップができないフリーランス

実はわたしはいま、ちょっとした壁にぶつかっている。

 

フリーライターとして2年間、結構うまくやってきたつもりだ。でもこの先5年、10年を考えると、「これでいいのか?」と心配でたまらない。

 

企業、とくに年功序列の日本企業で働いていれば、勤続年数に応じて仕事のランクがある程度までは自動的に上がっていく。

なにも知らない素人でも、雑務からはじまり少しずつ知識と経験を積み重ねていき、5年もすれば立派な中堅社員になる。

 

でもフリーランスはそうじゃない。ぼーっとしていれば、なにも起こらない。

ステップアップしたければ、自分でできることを増やして営業して実績を作って……というのを、繰り返す必要があるのだ。

 

自分からゴリゴリと行動を起こして、いつも新しいことに挑戦するような探検家タイプなら、それも苦にならないのだろう。

しかし残念なことに、わたしはそういうタイプではない。

 

いままでは比較的うまくやってきたと思う。でもこのあとは? 収入を上げたり、スキルを磨いたり、多くの人に評価されるためには? 目標は? それに至る手段は? そもそもなにをするべき?

 

わたしはスキルが未熟なまま勢いでフリーランスになったぶん、本気で自分磨きをやっていかなければ次のステージに進めないという自覚がある。

だからこそ、近々『若さ』という武器がなくなる自分はどう勝負していくべきか、結構本気でずっと悩んでいる。

 

導いてくれる人はいないし、自分を育ててくれる組織もない。

自己責任のフリーランスにおいて、キャリアアップのハードルはなかなか高いのだ。

 

わたしみたいに社会経験が浅いフリーランスは、『若さ』に依存しないスキルを身につけておかなければ、すぐに淘汰されてしまうだろう。現実は厳しい。

 

好きなことだけするにはカネがかかる

「フリーランスの一番のメリットは?」

フリーランサーにそう聞くと、高確率で「好きな場所、好きな時間に好きなことだけをできる」という返事が返ってくると思う。

 

実際、多くのフリーランスは「好きなことしかしたくない」という気持ちを多かれ少なかれもっているはずだ。それはわたしも同じである。

 

でも意外なことに、フリーランスは「好きなことだけすればいい」というわけではなかった。

正確に言えば、「好きなことを仕事にできるけど、好きじゃないことも自分でしなきゃいけない」だ。

 

企業にはさまざまな部署があって、それぞれ分野に詳しい人がいる。困ったことがあれば担当部署に丸投げすればいい。

給料計算や広報デザイン、クライアントとの交渉など、担当者にお願いすれば、数日以内に対応してもらえる。

 

でもフリーランスは、全部自分でやるか外注しなきゃいけない。

税金でなにかあれば何度も何度も税務署に行かなくてはいけないし、ブログのデザインを変えたければ自分でやるか外注することになる。

 

外注とはいってもお金がかかるし、頼む相手を探さなきゃいけないし、発注の際はいろいろと打ち合わせしなきゃいけない。「よろしく」と丸投げするのにも準備がいるのだ。

 

フリーランスなら、たしかに好きなことを仕事にできる。

でも本気で「好きなことだけする」を実現したければ、身銭を切って苦手な作業を外注するしかないというのが現実である。

 

あなたに最適なのは、本当にフリーランスか?

働き方なんて、自分の好きなスタイルを選べばいい。

だからわたしは、フリーランスを勧める気もなければ、フリーランス志望の人を止める気もない。

どんな働き方にだって、いいところもあれば悪いところもあるからだ。

 

ただわたしの場合、『覚悟していたフリーランスのデメリット』の外に、結構大変なデメリットがあると後になって気がついた(どれもちょっと考えたらわかることではあるのだが)。

 

収入が安定しないとか社会保障費が高いとかローンを組めないとか、そういう典型的なデメリットもたしかにある。

でもそれだけではない。フリーランスとは、常に自力で前進し、常に自力でリスクヘッジしないといけない働き方でもあるのだ。

 

「そんなこと言われなくてもわかってる」と言う人もいるだろう。そういう人に関しては心配していない。

ただ、「会社員が必ずしも安定しているわけではない!」と会社員を毛嫌いしてフリーランスの世界に飛び込む人や、「自由で制約のないノマド生活」なんかに憧れている人には、こういう「リアルなフリーランスの大変さもあるよ」と伝えておきたい。

 

まぁ、それを理解してもなお『自由な働き方』であるフリーランスがいいから、フリーランスとして生活してはいるのだが。

 

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・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

(Photo:Trung Le)