わたしはよく、ウェブ小説やyoutube動画のコメント欄を眺める。

ほかの人はどう思ってるんだろー?と気になるからだ。

 

当然そこにはいろんな意見があり、場合によっては批判的なものも見かける。

 

それはまぁわかるのだが……

「要求」をするのはちょっとちがうんじゃないか?と思う。

 

「ここで主人公が勝つなんてクソ展開になったら読むのやめます(そうするな)」

「好きなキャラが最近出てこないんだけど(出せ)」

「更新遅すぎます。読者のことなめてるんですか(更新しろ)」

趣味で書いている人が大多数である無料のウェブ小説のコメント欄なのに、こういう意見をちらほら見かける。

 

youtubeのゲーム実況でいえば、

「その技さらっとやってますけど、素人はそれができないから苦労するんです。そこもしっかり教えないと」

「声がボソボソしていて聞きづらいです。もっといいマイク使ってください」

「○○さんのほうがうまい。もっと練習してからアップしろ」

なんて書き込む人がいる。びっくりだ。

というわけで、「ゲストとクライアントはちがうんだぞ」ということを改めて書いておきたい。

 

『ゲスト』と『クライアント』のちがい

まず、『ゲスト』と『クライアント』という言葉について。

 

ゲストは「賓客」であり、招待された人、遊びに来た人、その場かぎりの人、といったニュアンスだ。

運動会に来る県議会議員、週替わりでバラエティ番組に呼ばれる俳優、結婚式に参列する友人……そういった人々のことを指す。

クライアントは「顧客」。

依頼人や取引相手という意味で、仕事をやってもらうかわりに報酬を支払うビジネスの相手、というニュアンスだ。

 

この『ゲスト』と『クライアント』の大きなちがいは、「求めていい範囲」と「対応の義務」にあると思う。

ゲストはあくまで招かれた人、その場限りの人なので、ホスト役に「こうしてくれるとうれしい」という希望は言えても、「こうしなさい」と命令することはできない。

まぁできなくはないけど、命令された側はそれを聞き入れる義務はない。

 

結婚式のゲストがピーマン嫌いだったとして、「自分の料理からピーマンを抜いてもらえないか」とお願いはできても、「ピーマンを使う料理を提供するな!」と強制する資格はないし、新郎新婦がそれを受け入れるかは自由だ。

 

一方、クライアントはお金を払っているので、「こうしろ」と要求することはできる。

新郎新婦は結婚式場に対し、「ピーマンを使わない料理を用意してくれ」といえるわけだ。

 

でもそれはあくまで、報酬や契約の範囲内でのみ。

1万円の予算に対し「3万円のフルコースを出せ」という要求は当然通らない。

求めるなら相応の報酬を用意すべきなのだ。

 

ゲスト、クライアント、両方のおかげで生活できる。だけど

ライターとして生計を立てているわたしにも、『ゲスト』と『クライアント』がいる。

ゲストとはいまこの記事を読んでくださっている読者の方々で、クライアントとはお仕事をくださるこのサイトの運営者の方々だ。

 

ゲストからの感想はもちろんうれしいし、落ち込んだときは読者の方からいただいた応援メッセージに何度も励まされた。

「こうしてほしい」という意見もありがたくちょうだいし、参考にしたり検討したりする。

読んでくださる方がいてこそのライター。それはまちがいない。

 

ただ、たまーに

「ライターなら読者の役に立て! これを教えろ!」

「俺が納得するように記事を書きかえろ!」

「これについて書いてないなんて不親切だから付け加えろ!」

という指示や要求をされることがある。

 

おいおい、それはちょっとちがうんじゃないか。

読者の方のご意見はもちろん大事だし尊重したいが、あくまで『ゲスト』であって『クライアント』ではない。

ためしに何度か「書け、ということはお仕事の依頼ですね? お見積りしますよ!」と返信してみたが、100%音信不通になった。

 

ゲストとして希望や要望を伝えるのは「言うだけタダ」だし参考にさせていただくけども、要求や指示するなら『クライアント』になる。

それなら対価を払ってもらわなきゃいけない。

だれかになにかを要求するなら、その覚悟はすべきだと思うのだ。

 

一方、クライアントであるメディア側の方に「もっとこうしてほしい」と言われれば、それに応えられるように最大限の努力をする。

対価をいただくのだから期待どおりは当然のこと、それ以上のはたらきをしたい。

でも、たとえば時差があるのに曜日や時間帯を問わず常に即時対応を求めてくる場合や、指示が一貫せず修正指示がコロコロ変わる場合、「それは対価以上の要求だ」と突っぱねることもある(できるだけ穏便に済ませたいけども)。

 

わたしは読者の方々、お仕事をくださるメディアの方々のおかげで生活できているから、いつもとても感謝している。

いやもう本当にありがとうございます!

とはいえ、「クライアントの対価に対する限界」は存在するし、ゲストの要望にすべて応えられるわけではないのが現実だ。

 

自分はどんな「お客さん」なのかを理解しておきたい

自由に要望を言えるが強制力はないゲスト。

要求できるが相応の対価を払わなければならないクライアント。

 

日本語でいう「客」にも、ふたつの種類がある。

そこらへんを区別することは大事だし、自分もわきまえねばなぁと思う。

それを理解しないままいつでもどこでも「尊重されるべきお客様」感覚でいると、ズレた行動を取ってしまうかもしれない。

 

たとえば、無料のウェブ小説の筆者に更新をしつこく要求したり、微々たる対価で多大な成果を求めたり。

ゲストであればホスト役への配慮を忘れちゃならないし、クライアントであれば「取引」であると理解しておかなきゃいけない。

そうすることで、ホスト役は「より楽しんでもらえるように」と気持ちが充実するし、仕事を受ける人は「結果を出せるように」とがんばれる。

 

自分はゲストなのか、クライアントなのか。ゲスト、クライアントに対してどう対応するべきか。

日本語では両方とも「お客さん」ではあるけど、混同しないようにしていきたい。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


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(2025/6/2更新)

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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