Books&Appsを運営する弊社は、2016年からテレワーク(リモートワーク)を行っているので、私は今ではもう4年以上、テレワークをしている。

 

過去には、その利点と課題について書いたこともある。

約二年やってみてわかった、リモートワークのホントのところ。

Books&Appsを運営する弊社は、現在フルリモートワークで仕事をしている。

といっても、小規模な会社なので大企業が言うフルリモートワークとはちがい、「やってみましょう」の一言で、結構気楽にやれている。

そして実際に二年ほどフルリモートワークをやってみると、利点や欠点がよくわかる。

かいつまんで言えば、テレワークは生産性は上がるが、それは仕事ができる「ベテラン」の話で「新人を育てるには向いていない」と私は考えていた。

 

ところが現在では、コロナウイルスの影響で、真の意味で全面的なテレワークが、あらゆる会社に強制的された。

すると、様々な情報から、また別に見えてくるものもある。

 

特に

「本当に新人には向いていないのか?」

「生産性は向上するのか?」

といった疑問については、多くの会社が新卒も含んだ形でのテレワークに移行しているため、私の単なる思い込みではないか?という疑問も湧く。

そこで、あらためて「テレワーク」の実際の状況に関してのインタビューを行い、状況を確かめることにした。

 

テレワークにおける「疑心暗鬼」

株式会社CINCの當摩(たいま)さんは、インタビューに応じていただいた方の一人だ。

當摩征也さん

・株式会社CINC所属の、今年4月に社会人となった新卒新人

・会社ではKeywordmapというweb分析ツールの販促、および自社の採用広報業務を担当

・主たる業務は、公式Twitterアカウント採用Twitterアカウントの運用、セミナー運営。

當摩さんは、今年の4月にCINCへ入社したが、コロナウイルス禍の影響で、入社直後の新人研修からテレワークが始まったという。

 

これは私にとっては、かなり冒険的な試みだと感じたので、當摩さんに

「テレワークで困ったことはありましたか?」と聞いた。

すると、会社は開放的で面倒見がよく、「新人はとにかく好きなだけ聞いていい」という文化だが、それでも「疑心暗鬼になる」という話が出た。

 

例えば、自分の提出した成果物に対して、先輩から

「その方向性で構いませんが、○○の箇所、修正してください。」

と丁寧なメッセージが来ることがある。

 

顔を合わせてコミュニケーションしていればあまり気にならないが、テレワークでは

「もしかしたら、上司を怒らせてしまったのかもしれない。」

共有した文面が良くなかったのだろうか…。それとも提案の質が低かったのだろうか…。」

とあらぬ疑いを持ってしまうことがある。

 

あるいは、ちょっとした申請書類のミスに対して指摘をもらい、お礼を述べたときに先輩から

「気にしないでね」といわれたが、表情が見えないので仕事を邪魔してしまったのではないかと心配になる。

 

また、当たり前だが、新人は「会社への貢献の度合い」が見えにくい。

会社も特に新人に対して成果を要求しないが、當摩さんは「受注に貢献できていない、私の存在意義はどうなのかこのままでいいのだろうか」と思う。

 

職場にいれば、先輩の様子や同僚の様子を見て、そうした疑心暗鬼をうまく解消できる。

しかし、自宅で一人になると、そうした情報量の少なさがキツいのだという。

 

逆に、些細なことでも励みになったことがある。

例えば、先輩社員の日報に名前が取り上げられ、感謝されたことだ。

「雑談の感覚で提案したのですが、まさか感謝されるとは思わなかった。やる気が出た。」と當摩さんは言う。

 

ともすれば、テレワークは情報量の少なさ故に「ちょっとした出来事が引き起こす感情のゆらぎ」が増幅されやすいのかもしれない。

 

「出社したい」と強く願っていた當摩さんは、6月からテレワークとオフィスワークが半々になり、ホッとしていると言った。

 

「ちょっとした質問」が扱いづらい

また、別のインタビューでも課題が上がった。(社名・名前は非公開)

現在プログラマーで、入社3年目の男性だ。

 

彼は、テレワークで困ったことの例として「わかんなかったら聞いて」というリーダーの言葉を挙げた。

 

一見問題はなさそうだが、意図がよくわからないので、「なぜですか」と聞いた。

すると、「「聞いて」と気軽に言われるけど、テレワークでは、「聞く」のが結構たいへんなんです。」と彼は答えた。

 

仕事で出てくる疑問が最初から明瞭なことは少ない。

特にスキルが低いうちは「何がわからないかわからない」ことも多い。

 

だから、オフィスワーク時は、モヤッとした疑問を「些細なことですが……」と、気軽に先輩に持ち込んでいた。

曖昧な疑問であっても、誰かと話しているうちに明瞭になってくるからだ。

 

ところが、今では「質問」を考えるのも一苦労だ。

当然ながら、拙いメッセージを投げると「で、何がわからないの?」と、聞かれる。

 

オフィスワーク時は先輩も気を遣って、先輩から色々と聞き出してくれたが、チャットではかなりのやり取りをしないと「わからない」を明確にできないので、先輩にも負担が大きい。

悪いなあ、と思ってしまう、と彼はいう。

 

私は「電話やzoomで会議すればいいのでは?」と聞いた。

彼は「まあ、そうなんですが、5分、10分くらいのディスカッションに対して、がっちり時間を取ってもらうのもなんだか悪くて。」という。

 

逆に、リーダー側も「ちょっとした質問」に対して、必要以上に構えてしまうのか

「今日は忙しくて時間が取れないから、明日でもいい?」

と言われたこともあるという。

 

このように、

「ちょっとした質問」

がリモートワークだと扱いづらいのは、私も同感だ。

 

「疑心暗鬼」と「ちょっとした問題」を解決する

これらの問題に対して、web会議システムへの常時接続で対応するという工夫をしている会社がそこそこある。

 

業務時間は皆、システムへ繋ぎっぱなしにして、「会話」をいつでも可能にしておくやり方だ。

「自宅でもWebカメラをつけて働く」「抵抗感ない」 KDDIの先進事例に学ぶテレワークを成功させるヒント

全員がカメラの前にいれば、たまにミュートを解除して、「ねえねえ」と特定の相手に話しかけられる。質問や雑談が気軽にできるので、リモートとはいえリアルに近いコミュニケーションができるようになった。

 

だが、「常時接続」は、カメラやマイクに家の中の映像や音が常に入ってしまうので、必要以上に神経を使って疲労困憊してしまう方もいるだろう。

テレワーク継続のコツ:Zoomでビデオをオフにしろ

ビデオ機能は、WEB会議で使える数少ない情報共有ツールの一つですが、積極的コミュニケーションにおいては必要以上の情報を獲得してしまうことで、会議参加者の心理的負担が増えてしまいます。

常時接続ならば、基本カメラはオフ、マイクはミュートにしておいて、必要なときだけ社内に呼びかける、という形式で運用することになるのが望ましいと私も思う。

 

だが、現時点で「疑心暗鬼」や「ちょっとした問題」をテレワークだけで扱うには、もう少し工夫が必要かもしれない。

 

例えば、「いきなり全面テレワーク」ではなく、CINC社で行っているように、「テレワーク」と「出社」をミックスし、自宅だけでは孤独を感じる社員に対して、ある程度の頻度でケアをできるようにするのも、必要だろう。

 

 

ただ、表層的なコミュニケーションの問題よりも大きな、真の課題が上のような話の向こうにちらほら見える。

 

それは、自由には責任がともうなうがゆえの、「プロセスより、アウトプット重視」の変化だ。

「テレワーク」は上の話のように、仕事のプロセスが見えにくくなるがゆえに、アウトプット志向を先鋭化させる。

 

だから「問題を切り分け」て「明確化できる」能力の獲得が、稼げるか否かの分かれ目になる。

アウトプットだけを比較する場合、「割り振られたタスクだけをこなす」だけであれば、社員でなくとも可能だからだ。

 

しかし、現在のところ、この能力は誰にでも備わっている能力ではない。

今の時代、「ふわっとした仕事を具体的なタスクに落とし込むスキル」だけで十分食えると思う

頻繁に話題になるのが、「タスクをちゃんと具体化・詳細化出来る人マジ少ないよね」という話です。

要するに、ふわっとした課題がある時に、「どうすればそれを解決出来るのか」という形で具体的なタスクと段取りを考えることが出来る人。

曖昧な仕事について、「どういう順序で、どういうことをすれば、その仕事を達成したことになるのか」ということをちゃんと詳細化し、計画することが出来る人。

だが、この変化は不可逆であり、変化に適応せねばならない未来は、すでに見えている。

 

そういえば最近、zoomで参加した読書会において、東京の大手コンサルティング会社に勤務する参加者の一人が「離島に移住した」と報告していた。

「それで仕事が可能なの?」

「会社が認めてくれたの?」

と皆心配していたが、「東京で仕事しなければならない時には、自腹で移動する」という条件と引き換えに、認めてもらったという。

仕事には全く支障がないそうだ。

家賃やもろもろのメリットを考えると、「絶対に収支はプラス」とその方は言う。

 

適応可能な人々にとっては、まさに理想の世界になったのだなあ、と、しみじみ思う。

 

 

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【著者プロフィール】

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元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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(Photo by Humphrey Muleba )