どうもしんざきです。とある業界の、社員100人ちょっとの企業で中間管理職をしています。

同業他社の管理職同士で飲むことがたまーにありまして、先日は何故か「どれくらい古いパソコン用語を知っているか勝負」という、冗談抜きでひとかけらの生産性もない話で盛り上がっていました。

平成も終わろうかというこの時代に、HYMEM.SYSの記述方法についての宗教議論とか、本当になんの役にも立たないのでやめて欲しいです。超楽しかった。

 

で、その時、もう一つ盛り上がっていた、というか愚痴の言い合いになっていたのが、「ちゃんとタスク切れる人不足」という話でした。

毎度毎度、人手が足りている、足りていないの話になるのは管理職飲み会あるあるです。飲み会の一つの焦点といっても良いかと思います。

 

業界にもよるのかも知れないんですが、実をいうと今、採用自体は割とスムーズにいっているという話を聞くことが多いんです。

それも、それぞれの分野でちゃんと経験を積んでいて、必要なスキルを持っている人たちが応募してきてくれることが多く、そこは恐らく「転職のマッチングシステムが進化していることが大きいんじゃねえか」という話に、少なくとも我々の間ではなっているんですが。

 

ただ、その上で頻繁に話題になるのが、「タスクをちゃんと具体化・詳細化出来る人マジ少ないよね」という話です。

要するに、ふわっとした課題がある時に、「どうすればそれを解決出来るのか」という形で具体的なタスクと段取りを考えることが出来る人。

曖昧な仕事について、「どういう順序で、どういうことをすれば、その仕事を達成したことになるのか」ということをちゃんと詳細化し、計画することが出来る人。

 

これ、単に「PMが採用出来ない」という話とは、多分ちょっと違う話なんですよ。

PMの能力や必要技能というのも色々ですが、例えば「明確なタスクをきちんと割り振って、ちゃんと進捗状況を管理出来る人」というのはいるんです。これもPMの技能の一つです。

 

けれど、「ふわっとしたタスクを具体化・詳細化出来る人」というのは凄く少ないし貴重だ、という話なんです。

 

つまり、「既にあるタスクをきちんと扱える人・処理できる人」はそこそこいるけれど、「扱いやすく、理解もしやすい形にタスクを分解・整形出来る人」は凄く少ない。

勿論、こういうことがごく自然に出来る人もいて、そういう人たちには逆に、この手の能力の貴重さが実感出来ないかも知れないんですが。

 

元より、会社という組織の中で、きちんとタスクを切れる人というのは非常に貴重です。

曖昧な要件、曖昧な仕事というのは、それだけで「そのタスクに関わる人のパフォーマンスを軒並み落とす」という、一種のバッドステータスのようなものです。

明確なゴール、明確なタスク要件、明確なマイルストーンというものがあってこそ、そこに向かって実施者がちゃんと走れるようになるわけです。

 

勿論、システム開発とか、技術的なタスクを細かく分解するのであれば、当然テクニカルな知識が必要となります。

ただ、この「タスク具体化能力」って、必ずしもテクニカルな側面だけではなくって、もうちょっと根本的なところに能力の淵源があるような気がするんですね。

 

つまり、「その目的を達成するにはどんな工程が発生するのか」ということを、細かく状況つきで想像、想定する能力。

そして、「どの工程を終えたらどんな状態になるか」ということを導出する論理力。

そういうものが大事であって、これ、たとえ技術的な知識があったとしても、苦手な人はとことん苦手な分野なのかも知れないなあ、と。

少なくとも、色んな人と仕事をしていると、経験や知識とは全く関係なく、こういう「タスク分解」が出来る人は凄く上手に出来るし、出来ない人は全然出来ないんだってことが分かるんですよ。

 

ところで先日、Books&Appsを主催されている安達さんが、こんな記事を書かれていました。

「そこそこ簡単で、それなりの給与と地位が約束される仕事」が消えた世の中では、見えにくい「弱者」が増えている。

つまり、

「考えてやれ」

「タスクを設定して管理せよ」

「自分で調べならがらやれ」

「改善しながらすすめてくれ」

こういう指示は彼らには、「難しすぎる」のである。

元記事で安達さんが書きたかったこととはおそらく微妙にずれるんですが、私はこれを読んで、「処理能力だけなら決して低くないが、タスクの具体化能力に欠けている」人材のことを思い浮かべたんです。

ちゃんとゴールが明確になっていて、要件がはっきりしていて、マイルストーンがきちっと置かれていれば、ちゃんとそのタスクをこなすことが出来る人たち。

ただ、自分で要件を具体化して、タスクを詳細にして、マイルストーンを置いていくのは苦手な人たち。

 

これが日本特有の話なのかどうかまでは分からないんですが、色んな人と仕事をしたり、採用面接をしたりしていると、こういう「お膳立てがされている限り、処理能力は凄く高い」人材って結構いらっしゃるんですよ。

正直、同じタスクを同じ条件で遂行するのであれば、私なんかよりも全然処理速いだろうな、とても敵わないな、と思うことだってしばしばあります。

 

ただ、そういう人たちは、「具体的なタスクの落とし込み、詳細化が出来る人」がいないと実力を発揮し切れない。

であれば、恐らくどの業界でも、「具体的なタスクの落とし込み、詳細化が出来る人」は極めて貴重であって、そういうスキルを持っている人はそれだけで重宝されるんじゃないか、と私は思ったんです。少なくとも私は、そういう人がもう何人か増えればかなり楽になります。

 

上でもちらっと書きましたが、「タスクの具体化、詳細化」に必要となる根本的な能力は、恐らく下記2点に集約される筈です。

・ふわっとしたタスクから、具体的にどういう工程が発生するか?ということを想定する想像力、想定力

・「どの工程を終えたらどんな状態になるか」ということを導出する論理力

 

管理職飲み会では、仮に転職するとしたら、こういう能力は凄く売りになるよね、という話になりました。

意外と職歴を見てもこういう能力の多寡って分からないもんで、どういう話をしたらこういう能力の有無が分かるかなー?という話も出ました。

 

この類の能力に自信がある方は、是非それを一つの売りにして、自分の市場価値を高めてみられると良いのではないでしょうか、というのが一点の結論です。

 

一方私は、最近は子どもの教育に主要な興味がありますので、子どもにこういう力をつけてもらうとしたら、どんなやり方が適しているかなー?などと考えます。

こういうのは基本、経験と実践からしか身につかないスキルだと思いますので、当然「実際にふわっとした仕事を具体的なタスクに整理してみましょう」ということになると思います。

 

例えば、夏休みの自由研究で、目的を決めたところから細かいタスクに落としてみたり、であるとか。

多めの宿題を出された時に、なるべく小さな単位に分解してみたり、であるとか。

何より、「仕事を片づける時にはこうした方が楽だしやりやすい」ということを実感してもらうことが、タスク具体化能力を身に着ける為の、一番の早道であるような気がしているんですよ。

 

幸いにしてというべきなのかどうか、私の子どもたちも皆私に似て面倒くさがりでして、宿題は面倒くさがりますし楽な道を探そうとします。

となれば、「ちょっとした工夫でやらなきゃいけないことが楽に片づけられる」ということを伝えて、やり方を教えて、実践・実感してもらう機会は、今後も度々あるのではないかと。

 

そういう機会をトリガーとして、「タスク具体化能力」を身に着けていってくれるといいなあ、と。

今の私はそんな風に考えているわけなのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Abdulla Al Muhairi