しょうもない話をします。

ちょっと前に、はてな匿名ダイアリーで「クソデカ羅生門」ってのが流行ったんですよ。

皆さんご存知ですか?

クソデカ羅生門

ある日の超暮方(ほぼ夜)の事である。一人の下人が、クソデカい羅生門の完全な真下で雨やみを気持ち悪いほどずっと待ちまくっていた。

馬鹿みたいに広い門の真下には、この大男のほかに全然誰もいない。ただ、所々丹塗のびっくりするくらい剥げた、信じられないほど大きな円柱に、象くらいある蟋蟀が一匹とまっている。クソデカ羅生門が、大河のように広い朱雀大路にある以上は、この狂った男のほかにも、激・雨やみをする巨大市女笠や爆裂揉烏帽子が、もう二三百人はありそうなものである。それが、この珍妙男のほかには全然誰もマジで全くいない。

何故かと云うと、この二三千年、京都には、超巨大地震とか破壊的辻風とか最強大火事とか極限饑饉とか云うエグすぎる災が毎日つづいて起こった。

そこでクソ広い洛中のさびれ方はマジでもう一通りとかそういうレベルではない。旧記によると、クソデカい仏像や文化財クラスの仏具をものすごいパワーで打砕いて、その丹がベッチャベチャについたり、金銀の箔がもうイヤになっちゃうくらいついたりした木を、路ばたに親の仇のようにメチャメチャつみ重ねて、薪の料に売りまくっていたと云う事である。

……

はてな匿名ダイアリー、通称「増田」では、たまにこういうオーパーツみたいな謎の勢いとフレーバーに満ち満ちた文章が読めるのが素晴らしいですよね。なにこれ。

 

この話自体は言うまでもなく、芥川龍之介の名著である「羅生門」の表現を全て無暗やたらにデカくしたという内容であって、そのなんだかよくわからない凄まじいエネルギーと恐るべき味わいで大変な評判になったわけでして、作増田の方に敬意を表するわけなんですが、それはそうとこれ読んだ時ちょっと既視感がありまして。

 

評判になった記事に後から「これ昔見たわー」などと言いたいわけではなく、そういえば私もちょっとだけ似たようなことやってたなあ、というか今もやってるなあ、などと考えたわけです。

 

それは、「昔話の登場人物を全員最強にすること」。

 

しんざき家では就寝時に雑魚寝制が採用されておりまして、消灯時間に子どもたちと一緒に寝ているわけなんですが、特に長女と次女(双子、8歳)には今でも割と頻繁に「お話」をせがまれます。

ストーリーをその場ででっちあげるのは割と得意な方なので、以前は電車好きの長男の為に作った「総武線のそうちゃん」というJRに怒られそうな脳内キャラを作って、機関車トーマスとトランスフォーマーとアンパンマンを足して平方根をとったような珍妙な話をメインコンテンツにしていたんですが、ある時たまたまでっちあげた話が滅茶苦茶受けまして。

 

その話のタイトルは、「舌切り雀・ブラックレーベル」。

 

どんな話かといいますと、

・その舌をにんにくとしょうがで炒めて美味しく頂けば不老不死になれるという伝説を持つ最強の雀、ピジョン・ザ・グレートバード。幾多のハンターがピジョンに挑んではその圧倒的なパワーとスピードの前に散ってきた

・ある時ピジョンの前に立ちふさがったお爺ちゃんは、255体に分身してピジョンに挑むが、ピジョンの65535体影分身の前に敗れる

・そこに現れたお婆ちゃんは、かつて「暴風のトメ」と呼ばれた最強の格闘家だった

・糊を自由自在に操るお婆ちゃんの前に、ピジョンは徐々に追い詰められる。地上にたたきつけられ、ついにここまでか、と観念をしたピジョンに迫るお婆ちゃんの拳。その拳を寸前で受け止めたのは「みにくいあひるの子」…!!

 

というような話でして、しんざき奥様の感想は一言「ピジョンって雀じゃなくてハトじゃない?」だけだったんですけど、子どもたちは呼吸困難になるくらい笑ってくれまして、そのせいで30分くらい寝なかったんです。

 

それ以来、我が家では「登場人物が全員最強になった昔話」が一つの鉄板コンテンツになっておりまして、

 

・斧一振りで山中の竹を伐採する竹取の翁の刃を、指二本でつまんで止めて不敵に笑ったのが生後初めての言葉だったかぐや姫・ザ・グレート

・モヒカンの子どもたちにいじめられていた亀が実はガメラの幼生で、連れていってもらった竜宮城でクラーケンが舞い踊る浦島太郎大往生

・おじいちゃんが灰を撒くとそこが熱帯の原生林になって通りがかった大名が未踏ジャングルの踏破に挑むハイパー花咲かじいさん

・ガラスの靴が100kgくらいの重さで、唯一それを履いて仮面武闘会を勝ち抜くことが出来た姫を自ら倒す為に探し求める最強の王子が主人公のスーパーバトルシンデレラ

 

などのお話が毎回バカ受けしていたわけなんです。

いや、実はこれ系の話すると興奮してしばらく寝なくなるので、多少遅くなっても大丈夫なように翌日休みの日だけにしてはいるんですが。

 

で、子どもたちの反応を見ていると、

・モチーフ自体はよく知っているお話、エピソード

・そのエピソードの展開にアレンジを加えることで予想を外す

・馬鹿らしい程大げさにすることでツッコミどころを作る

というのは、子どもに対してフックを作る時の一つの鉄板なんだなー、などと思ったんですよ。

 

これは昔から思っていることなんですが、子どもって「意外性」と「納得感」の合わせ技がすごーーい好きなんです。

知っているお話通りではなく、とんでもない方向にお話が動いていく意外性。

 

けれどただ滅茶苦茶なだけではなく、話自体には統一されたフレーバーがあるし、元の話のモチーフはどこかに残っている納得感。

「強くする」というアレンジの方向性の明確さと、それに伴ったお話のフック自体の分かりやすさ。

 

これらが交互に来ると、大体の場合子どもって話にノってくれるんですね。

これについては、聞く姿勢にさえなっていれば今まで触れた大体の子どもがそうだったので、結構一般的な話なんじゃないかと思っているんですが。

 

そこから考えると、モチーフ自体は馴染み深い童話や昔話、けどそれを大げさにすることによって意外性を加えるというアレンジって結構普遍的なものなんじゃないかと。

冒頭引用した「クソデカ羅生門」も、そのメソッドに沿ったコンテンツなのかも知れないなあ、と考えた次第なんです。

 

なんにせよ、「昔話の登場人物を最強にする」というアレンジは、子どもに対して鉄板コンテンツになり得るのでお勧めですよ、というだけの話でした。

よろしくお願いします。

 

子どもにするお話、結構自分のストーリーテリング力が問われてやりがいがありますよね。

またオリジナルキャラクターが大活躍する話も作りたい。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/6/2更新)

 

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

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