夫がオフィスで働く生活に戻った。

もともとオフィスワーカーの彼が在宅ワークに切り替えたのは、まだ肌寒さが残る3月半ば。新型コロナウイルスの影響を受けてのことだ。

6月末までの3ヶ月間は在宅でリモートワークをしていたが、7月からはふたたびオフィスに出勤している。

 

わたしはもともと在宅ワークだから、わたし自身の労働環境は変わっていない。

だから夫が出勤するようになっても、「元の生活に戻るだけ」だと思っていた。

 

でもね、その……大変言いづらいんですけど、夫の働き方がフレキシブルすぎて困ってます……。

 

夫の働き方が超フレキシブルで自由度が高い。だけど……

まず、現状はこんな感じだ。

 

・夫は基本毎日出勤するが、在宅ワークも可

・夫いわく「在宅よりやっぱりオフィスのほうが集中できるし、いちいち同僚に電話せず直接話せるし、外に出てメリハリがつくからいい」とのこと

・わたしとしても「ひとりで在宅ワークは自由で気楽」

 

とまぁこんな感じで、以前のような日常に戻り、のんびりとした日々を送っている。

ただ問題は、「夫の労働環境がフレキシブルすぎる」ことだ。

 

もともと夫の会社はかなり融通が効く体制だが、いまはさらに柔軟になっている。

フレックスタイム、在宅ワーク可、というのは以前から変わらないが、その決まりもだいぶゆるい。

コアタイムなんてないに等しいし、午前中在宅ワークしてたけど「書類が会社にあるから」と午後から出勤することもある。

 

かと思いきや、「今日はゆっくり寝てたいから家で働けばいいや」もある程度許される。

同僚も、出勤派と在宅派とフレキシブル派それぞれいるらしく、ミーティングもリモートでOK。

 

それを聞くと、

「さすがドイツ」

「いいなー、そんなところで働きたい」

と思う方もいらっしゃるだろう。

実際わたしも「ドイツすげーな」と思うし、「企業勤めでもこんなに自由なのか」と感心する。

 

でもさ、ちょっと待ってよ。

柔軟な働き方は結構だけど、その働き方に応じて家のことをするのはわたしなんですが!?

 

「柔軟な働き方に合わせて家事ルーティーンを適宜変更」というタスクが発生

あまりに柔軟な夫の働き方によってどんなことが起こったかというと、

・ほとんどオフィスにいるのにたまに在宅ワークもするから、リビングに陣取った夫のワークスペースを確保し続けなきゃいけない(大きい液晶2つ乗ったデスクが埃をかぶってる)

・急に出勤することになり、「マスクがない」と大慌て(ドイツでマスクは洗濯できる布製がメイン)

・かと思いきややっぱり在宅ワークになり、突然お昼ご飯を食べるという(お昼はひとりの予定で食材消費予定を組んでいた)

・夫がオフィスにいるあいだ友人とオンラインゲームの約束をするも、急に在宅ワークになり予定が狂う(ゲーム機はリビングにある)

・コロナの影響で仕事が二転三転。7月初旬に2週間休暇の予定が翌週になり、その翌週になり、「明日から休む」が数日続いた結果伸びに伸びて結局2日しか休めなかった(しかもその予定変更がわかるのは数日前、場合によっては前日)

 

おおらかな夫だから、「いや俺が洗濯するよ」「都合悪いならご飯はデリバリーでいいよ」と言ってくれてはいる。

でもこっちとしては

「この日までにこれくらいの洗濯物が出るから洗濯は火曜日に」とか、

「今日の夕飯にベーコンを半分使って翌日のお昼に余ったベーコンでパスタをつくろう」とか、

いろんな予定があるわけで……。

 

夫がオフィスに行くこと前提としてすべての予定を組んでるから、急にいろいろ変えられても、正直困っちゃうのだ。

 

「柔軟な働き方になったから家庭もそれに合わせてね」と言われましても

仕事をがんばってる夫の手助けをしたいとは思うし、我が家は「生活できてりゃ家事なんて適当でOK」なので、家事負担なんて高が知れている。

子どもがいないから、育児中の方々と比べれば圧倒的に楽だろう。

 

それでも、

「柔軟な働き方に合わせるこっちの身にもなってくれよ! 今日洗濯されると洗濯サイクルが狂うの! 勝手に卵使って料理しないでよ、明日足りなくなるでしょ!」

ってなるときがありましてね。

「柔軟な働き方」は結構だけど、それに適応した「柔軟な家庭環境」を期待されても……と思うのだ。

 

いままでは、「柔軟な働き方=プライベートを大事にできる」「プライベート都合に仕事を合わせられる」と、あくまでプライベートを中心に考えていた。

たとえば子どもが熱を出したとか、宅配便がくるから家にいたい、だとか。

 

でも、働き方を柔軟にすることで、それに影響される家族がいたら? 適応しなきゃいけない配偶者がいたら?

「やっぱり今日は遅く出勤することにした」

「明日は在宅ワークでいいかなー」

そういう働き方が可能なのは先進的だとは思う。

 

ただ、それに合わせなきゃいけない側……家事をする側、もっといえば多くの場合女性(妻)は、その対応にストレスを感じるかもしれない。

だって、こっちの予定がぶち壊されちゃうから。

もちろん、夫に協力する気がないわけじゃないし、夫が家にいるのが嫌なわけでもない。

 

ただ、「柔軟な働き方になったから家庭もそれに合わせてフレキシブルにお願いね!」って言われるとちょっとこう、困るというか、「そっちは自由でもこっちの負担が増えてるじゃん?」と思う。

とくにわたしは1日の予定を決めて動くタイプだから、急にその予定を変更せざるをえなくなると、「キィィィイイ!!」とイライラしてしまう。

 

あなたの働き方の変化を支える家族がいることを、忘れないでほしい

現在も引き続き自宅で働いている人は多いだろう。

いまはオフィスにいても、今後の状況次第で働き方を適宜変える人もいるはずだ。

そんなとき、もしあなたが家事をメインでしない側、ふだん家にいない側であれば、少しだけ考えてみてほしい。

あなたが在宅することによって生活環境が大きく変わり、それに合わせてくれる家族がいることを。

 

「来週からやっぱり自宅で働けってさ」というあなたの言葉に、

「大変だねぇ。まぁ仕事があるだけありがたいと思わないとね〜」なんて言いながら、相手は心の中で

「お昼ご飯も必要になるなら明日買い物に行っておいたほうがいいかも。でもお魚が安いのはあっちのスーパーだから明々後日はそっちに行って……。スーツが必要ないならクリーニングは後回しでいいかな」

と、何気ない顔で、あなたの働き方に合わせる算段をつけているかもしれない。

 

急にワイシャツが必要になった、とか、お昼ご飯は家で食べる、とか、そういうのにも対応できるようにいろいろと気を配って労力を割いてる人のおかげで、いつ出勤することになってもワイシャツがあるし、いつ在宅になってもご飯を食べられるのだ。

共働きであればなおさら家事ルーティーンの変更は負担が大きいし、子どもがいればさらにハードモードになる。

それでもなにも言わずに、「うんわかった」の一言ですべてを請け負っている人だっているだろう。

 

恩着せがましくいうつもりはないけど、柔軟な働き方を支えている人が家にいるからこそ成り立ってる部分があることも、ちょっとは思い出してくれるとうれしいなぁ……と思う。

多くの主婦、主夫の人はあえて言わないだろうし、みんな当たり前にやっていて見過ごされがちだけど、いままでのルーティーンを壊していろんな予定を組み替えるのって、結構大変なことだから。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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