医者をやっていると全く働かないでお金をもらっているタイプの人間を結構目にする。

朝から晩までインターネットサーフィンだけやって年収1000万超。

世の中にはそういう人間が存在する。

 

この人物をみて何を思うかは人それぞれだろうが、以前にそれらの人たちについてどう思うかと聞かれたので

「ああなりたいかって言われると微妙な所ですが、ある意味では人間の理想像だなぁとは思いますよ。」

「だって毎日遊んでてお金もらえてるんだし」

と率直な気持ちを述べた。

 

それを聞いていた人は僕をジッと見てこう応えた。

「いやぁ先生。仕事って、そういうもんじゃないですよ」

なかなか含蓄のある言葉である。

 

じゃあ人間は何のために働くのか。

今日はそれについて個人的に感じ入った事でも書いていこうかと思う。

 

仕事の効用は自分におきた変化を楽しめること

個人的な話で恐縮なのだが、去年の年末から最近あたりまで仕事でとんでもない事に巻き込まれて人生最大の修羅場を迎えていた(念の為いっておくと訴訟ではない)。

 

残念ながら詳細は書けないのだが、少なくとも僕はこの修羅場で体重が5キロ落ちてだいぶ細くなった。

あまりにも色々と辛すぎてサウナでの瞑想ならびにランニングを生活に導入するなど、身も心もタフにならないと生き抜けないような状況が半年ほど続いていた。

 

最近になってようやく状況が落ち着いてきたのだが、そうして地獄から脱出できて己の身を振り返ってこう思った。

「ああ、生物として随分強くなったな」

と。

 

少なくとも自分では絶対に選ばないであろう位の困難を乗り越えた事で、僕は随分と自信がついた。

そうして半年間で劇的に成長し強くなった自分をみて「人間は半年間でここまで変わるんだな」と変化自体を感慨深く思った。

 

そしてふと思ったのだ。「これこそがひょっとして人間が働く事で得られる最大の恩恵なのではないか」と。

 

自分自身を思ってもみない方向に変えられるのが仕事の最も強い効用の一つ

僕のこの半年間はあまりにも短期間で色々とドラスティック過ぎたが、多くの人も学生時代と働き始めた後のように己がある時を境に変わったと思える断絶点があるはずだ。

その断絶点の前後でもって己を眺めてみて、どう思うだろうか?

 

僕はその変化を楽しめる部分に仕事の効用が最も詰まっているように思う。

もっというと自分自身を思ってもみない方向に変えられるのが仕事の最も強い効用の一つなんじゃないかと思うのだ。

 

冒頭であげた毎日遊んでお金をもらっている人に対して「仕事って、そういうもんじゃないですよ」と答えた人がいいたかったのは、たぶんなんだけど「変われない働き方」しかできていない事への哀れみのようなものだと思う。

それは良くも悪くも心が死に体になってしまったという精神的な意味で行き止まる事の悲しさを指し示している。

 

傍からみれば職場で遊んでお金をもらっているのだから良さそうにみえるかもしれないが、その実はそこがその人の魂の墓場となっているのである。

まさしく生ける屍だ。

 

大きな環境の変化を前にした時に、その人の人間としての本質が試される

もちろん、その断絶点は仕事以外の手法でもっても獲得は可能だ。

インドにいったら人生変わったみたいな話を聞く事があるが、カルチャーショックのようなものを通じて己の身におきる変化を楽しむ方法もあるだろう。

 

部活やゲームといったアクティビティに尋常じゃないレベルで真剣になって取り組んだタイプの人達も、それらを通じてきっと人間的に大きな変化を得たに違いない。

それらは一般的には成長という単語で語られる事が多いけど、僕は成長というよりもやはり自分自身が変化したという言葉の方がより本質を言い表しているように思う。

 

例えば子供を持つ前と子供を持った後。

例えばコロナ前とコロナ後。

そういった大きな環境の変化を前にした時、その人の人間としての本質が否応なしに試される。

 

そこで悪い意味で変わってしまう人もいるだろうし、逆にその変化を楽しみつつより己の魅力的な部分を引き出す事ができるタイプの人もいる。

そうやって自分自身も知らなかった自分の一面が引き出された事を後ろ向きに振り返って感じ取れた時に哀愁のようなものを感じるのは僕だけではないだろう。

 

人は良くも悪くも時と共に変わる。

その最前線にたって自分自身におきる変化を楽めるだなんて、なんだかとっても贅沢な事だと思わないだろうか?

 

厳しい環境にいなくても変化はできる

これは何も刺激的な人生を送れとか厳しい環境に自分を置けというわけではない。

安定した人生を送りつつも自分を変化させる事は当然可能だ。

 

大切な事は、たぶん目の前の事にキチンと真面目になって取り組む事だ。

それが掃除であれ自炊であれ、キチンと真剣になってやれば感じ入るものは絶対に何かあるはずだ。

 

お片付けの魔法を唱えられるようになった貴方はお片付けができなかった頃の貴方とは全くの別人だろうし、スパイスカレーを作れるようになった貴方は、スパイスカレーを作れなかった頃の貴方とは全然別物だろう。

<参考 私でもスパイスカレー作れました!>

 

何かができるようになるという事は、それだけで自分が変わったという事の証である。

そして何かができるようになったという事はちゃんと人生を真面目にやっているという事の証でもある。

 

自分のできる範囲で十分だ。

その範囲で真剣に人生をやれば、あなたは必ずちょっと前の貴方よりも魅力的になり、その変化をポジティブに受け入れられるようになる。

 

変化するのに始める時期も年齢も関係ない。

人間はいつだって変われる。あなたが真剣に人生にコミットすれば、だが。

 

あまり興味がなかった活動でも後ろ向きに楽しむと、物凄く面白い

生産的な活動に限らず、消費的な活動でもって他人の仕事を後ろ向きに振り返って楽しむ事も可能だ。

 

最近僕がびっくりした事の一つに朝マックのソーセージエッグマフィンが驚くほどに美味しくなっていた事があった。

朝マックなんてもう10年以上食べてなかったが、マフィン生地にチーズが軽く溶け込んだそれを頬張ると「あれっ?朝マックってこんなに美味しかったっけ???」となり、時代の進歩を確かに感じた。

 

ぶっちゃけ看板商品なんかより遥かに進化していて、マクドナルドの職人達の確かな「こだわり」を感じ取れた。

これも僕が10年ぐらい朝マックを食べなかったからこそ感じ取れた進化の姿だろう。

毎日朝マックを食べている人では、この劇的な変化を味わう事は難しいに違いない。

 

他にもコンビニおにぎりも随分と進化を感じて興味深かった。

こちらも10年近く食べてなかったので記憶がやや不確かな部分もあるが、お米がかなり美味しくなったように自分は感じた。

 

高級食材もいくつかラインナップに加わっており大変興味深く感じた。

流通が良くなったからなのか、以前なら間違いなく使われなかったであろう名古屋コーチンなんかが使用されていたりして、並々ならぬ企業人の努力を感じてしまった有様である。

 

まるで興味がないからこそ、タイムカプセルを開けるかのごとく楽しめるモノというのもこの世にはある。あなたももう何年も試してない昔はよくやってた事が一個や二個はあるだろう。そういうものにこそ、お宝体験が間違いなく詰まっている。

<参考 ホイチョイの リア充王 遊びの千夜一夜物語>

 

みんなが真剣に生産や消費をしてくれるからこそ、世の中はどんどん良くなっている

ベストセラーであるFACTFULNESSは人間の悲観的な思い込みをデータでもって論破し、世の中がいろいろな人が思っている以上によくなっているという事を示した。

世の中が昔と比べてどんどん悪くなっているように感じてしまうのは人間の認知のバグが原因だが、逆にこうも問いかけられるはずだ。

 

なんで時代とともにこんなにも世の中がよくなってしまうのだろうか?

人間の本性が善だからだろうか?

しかしそれでは邪悪な人間の存在を許容する事が難しい。

 

邪悪な人間がいるにも関わらず、世の中がどんどん意図せず良くなってしまうのは僕が思うに人間が物凄く真面目な生き物だからだ。

人は好きなものには真剣になってしまう。

そして人間は自分が真剣に愛するものに対して絶対に嘘をつくことができなくなる。

 

この愛するものに対して嘘をつけない事は僕が思う人間の最も優れた点の一つである。

そうして各々が生産ならびに消費に皆で真剣になって向き合い続けると、本当にいいものだけがこの世の中に残り続ける事になる。

これが世の中がどんどん意図せず良くなってしまう事の正体だろう。

 

真剣になって世の中を研鑽し、より良いものだけが残り続けるように活動し続ける。

その世の中をより良くしてゆく活動の環の中に自分も参画していると実感できる。

この事こそが仕事そして遊ぶ事の喜びの本質なのではないかと僕は思う。

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

 

【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

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