多くの企業や業界に打撃を与えた、新型コロナウイルス。
実際に勤めている会社が危機に直面し、転職を考えたり、行動に移している方も多いのではないでしょうか。
さらに今は、VUCAと呼ばれる将来の予測が困難な時代。
たとえ直近で転職を考えていかなかったとしても、誰もが自分自身の「市場価値」について考え高めていかなければなりません。
本記事では、市場価値を高める方法と、これからの時代のキャリア形成に必要なマインドセットについてご紹介します。
市場価値とは
市場価値とは、「自分を商品として考えた時の、世の中からみた価値(値段)」のことです。
今勤めている会社内での価値ではなく、「他社からみて価値があるかどうか」です。
市場価値が高い人材は、他社からみて魅力的な人なので、1つの会社に依存する必要はなくなります。
好きな時に会社を辞めることができ、「いつでもどこでも誰とでも」働くことが可能となります。
なぜ市場価値を意識する必要があるのか?
転職の文脈で良く聞く市場価値ですが、ウィズコロナ・アフターコロナでは転職の希望の有無に関わらず、誰もが市場価値を高めていかなければなりません。
理由①:誰でも突然キャリアショックが訪れる可能性がある
新型コロナウイルスの世界的流行という予想外の出来事により、多くの企業が打撃を受けました。
さらに現代はVUCA時代と呼ばれており、たとえコロナが終息したとしても、常に私たちにはキャリアショック(=キャリアの危機)が訪れる可能性があります。
「大企業だから安心」ということもなく、もはや安全地帯と言えるような業種や企業はありません。
そうなると、実際に転職を希望する人だけでなく、誰もが”もしも”に備えて市場価値を高め、転職力を磨いておく必要があります。
理由②:成果主義の導入が進む
コロナにより多くの企業がテレワークによる在宅勤務を導入しました。
この働き方の変化は、アフターコロナにおいても100%元に戻ることはなく、テレワークは新しい勤務体系として組み込まれていくでしょう。
テレワークでは、社員のがんばりやまじめに取り組んでいる様子が確認できないため、どんどん企業の評価方法が成果主義に移っていくと予想されます。
そうすると、「実力があり成果を出す人=市場価値が高い人」が社内においても、今まで以上に評価されるようになっていきます。
市場価値が高い人とは、実力(能力×経験)がある人
企業からみて「この人は市場価値が高いな」と思われる人は、「実力がある人」です。
実力は「能力と経験の掛け合わせ」です。
能力は、業務における専門性や知識、スキル、人間的な魅力などを全て含めて捉えています。
ここでの能力は「他社でも展開できるか?」が肝になります。
自社でしか通用しない知識やスキルは、含まれません。
能力は学習で高めることも可能ですが、潜在的なものなので、「その能力を使って何をしてきたか」という実績も重要になります。
これが経験の部分です。
つまり、実力とは「持っている能力を活用し、実践を通じて、こういう実績を出した」という一連の流れによって証明されます。
市場価値は、能力だけ、また逆に経験だけがどれだけあっても、それ単体ではだめです。
能力と経験の2軸をバランスよく拡げていく必要があります。
市場価値を高める方法
市場価値を高めていくうえで意識しておきたいことを5つお伝えします。
20代は能力を磨き、30代は経験を積む
20代はどうしても相対的に働いた期間が短いので、経験が少なくなります。
なので、20代は積極的に「能力を磨いていく期間」としましょう。
獲得した能力を使って実績を着実に積んでいくと、重要な役回りや全社横断プロジェクトへのアサインなど「貴重な経験」を積むきっかけをもらえるようになります。
能力は同じインプットをすることによって、ある程度差はなくなりますが、経験の質や厚みは人によって異なります。
20代で積極的に能力を磨き、30代でそれを活かしていかに貴重な経験を積むかによって、労働市場におけるビジネスパーソンとしての希少性が上がり、30代以降の市場価値が大きく変わっていきます。
実績をきちんとロジックで説明できるようにしておく
転職活動において、実績を説明する際には「ロジック(論理)」が重要です。
例えば、いくら営業で実績を出しても、単なる業務上の実績だけでは「たまたま市場環境が良かったからではないか?」「たくさん行動したから実績が出せただけではないか?」と、なかなか受け入れてもらえません。
「たくさん働いたから」「気合と根性で頑張ったから」ではなく、「自分はこういう環境下でこんなことを考えて動いた結果、このような実績が出せた」と説明できることが必要です。
実績ばかり語ったとしても、「他の業界や新しい会社でも同じように結果が出せるのか?」という不安を企業は持っています。
そこに何らかのロジック(論理)があり、再現性を予感させると、「うちの会社でもきっと活躍してくれそうだ」という納得に繋がります。
市場価値は相対比較で決まることを意識する
常に自分が必要とされるかは、他のビジネスパーソンとの相対比較によって決まります。
自分の会社の中だけでは見落としてしまっているものがあるかもしれません。
社外の同世代や同じ職種のビジネスパーソンと比べて、自分には本当に能力・実績が伴っているのかを冷静に見てみましょう。
“今の市場”で求められるスキルを見極め、高める努力をする
もう1つ意識しておくべきことは、現時点で市場価値があるものでも、5年後10年後にはなくなる可能性があることです。
市場価値は、いわゆる「労働市場」からも影響を受けます。
テクノロジーの進化によって、求められるスキルや知識はどんどん変わっています。
そのため、自分に市場価値があると思っていても、5年後には「それはもうAIでやっているから要らない」となっている可能性もあります。
市場価値がどう変化しているのか、今の市場ではどういった人材の希少性が高く需要があるのかを、しっかりと意識する必要があります。
汎用性の高い「ポータブルスキル」を高めておく
一方で、特定の業種や職種、時代背景に囚われることのない、汎用性の高いスキルもあります。
こうしたスキルを「ポータブルスキル(=持ち運びできるスキル)」と言います。
あらゆるビジネスパーソンに必須なスキルのため、「ビジネス基礎力」とも言えるかもしれません。
ポータブルスキルを高いレベルで身につけておくことも、自身の市場価値を高めるうえで重要です。
20~30代で鍛えるべきポータブルスキルの例
ポータブルスキルは、できるだけ若いうちから身に着けておくことをおすすめします。
なぜなら、その方が社会人人生における投資対効果が大きいからです。
ポータブルスキルの例を5つほど紹介します。
・論理的思考
・理解力
・仮説思考
・問題解決能力
・人を巻き込む力
論理的思考
論理的思考は、一言でいうと「複雑なものを整理し、シンプルにしていく思考法」です。
あらゆるビジネススキルを習得するうえで土台となる思考法なので、「どのスキルから鍛えていこうか…」と迷ったら、まずはここから強化していくことをおすすめします。
論理的思考と聞くと難しそうな印象を持たれる方もいますが、トレーニングによってどなたでも習得することができます。
詳しい鍛え方については、こちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
すべての社会人に必要不可欠な論理的思考を鍛えるためのポイントを3つご紹介します。
理解力
理解力は、物事の仕組みや状況を正しく判断する能力です。
仕事は多くの場合、様々な関係者と進めていかなければなりません。
理解力がないと、プロジェクトの進行を遅らせてしまったり、他者の業務の阻害になったりと、自分のみならず周囲に迷惑をかけてしまうことも起こりえます。
理解力は、スムーズかつ短時間で成果を出していくうえで、とても重要な能力と言えます。
仕事を効率的に進めるうえで不可欠!「理解力」を鍛える4つの方法
ビジネスにおいて様々な場面で求められる「理解力」を鍛える方法についてご紹介します。
仮説思考
仮説思考は、「おそらくこうなるかな」と先を見通していく思考方法です。
逆算するかのごとく、その答えに必要な根拠を探しに行くため、試行錯誤による余計な作業をしなくて済み、スピーディかつ精度の高いアウトプットを出すことができます。
短時間で質の高いアウトプットを出す人が実践している「仮説思考」の鍛え方をご紹介します。
問題解決能力
ビジネスでは「課題を解決すること」が企業の存在価値です。
なので、必然的に「課題を見つけ、解決策を考案し、解決に向けて実行していくスキル」はあらゆるビジネスパーソンに必要とされる能力となります。
ビジネスに必須な「問題解決能力」を鍛える3つの方法。本質の見極め方とは?
問題解決能力とは、問題や課題があった時に、問題の本質を押さえて、解決までの道筋を計画し、実行していける力です。問題解決能力の高め方についてご紹介します。
人を巻き込む力
ビジネスでは1人で完結する業務は少なく、他者の力が必要な場面が多々あります。
周囲に働きかけ、人々を巻き込み、協働していくための対人スキルを鍛えることで、仕事をスムーズかつ効果的に進めることができるようになります。
ファシリテーション能力は、人々を巻き込み、合意形成を得るうえで重要なスキルです。具体的なやり方と鍛え方を紹介します。
交渉力を高めるために必要なスキルと、プロセスごとの交渉のコツ
交渉力とは、「お互いが納得できるゴール」を目指して話し合う力のことです。交渉が上手い人の特徴と習得のポイントを紹介します。
ポータブルスキルを身につけるにはビジネススクールがおすすめ
ポータブルスキルを高めるうえで重要なポイントは、単なる知識の習得ではなく、「実践レベル」で鍛えることです。
ビジネススキルを実践レベルで習得するには、やはり書籍や動画学習などの独学などでは限界があります。
もし社内の能力開発環境が不十分であると感じたら、外部の機関で学ぶというのも1つの手です。
例えば、私が勤務しているグロービス経営大学院では、ポータブルスキルを学べる講座が豊富にあります。
オンラインクラスもあり、全国から幅広い年齢層&職種の社会人の方が学ばれています。
随時オンラインにて『体験クラス&説明会』を開催していますので、実際の授業の進め方やカリキュラムについてご興味のある方は、ぜひお気軽にご参加くださいね。
(▼日程一覧はこちら)
まとめ
これからの時代は、誰もが市場価値を高めていく必要があります。
日々の業務を通じて着実に経験を積み重ねながら、今の市場ではどのようなスキルや知識を持っている人の需要が高いかを把握し、スキルのアップデートを行っていってください。
(執筆:グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長 村尾 佳子)
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