『人は見た目が9割』

『女は見た目が10割』。

人は見た目が9割(新潮新書)

人は見た目が9割(新潮新書)

  • 竹内一郎
  • 新潮社
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女は見た目が10割 (平凡社新書)

女は見た目が10割 (平凡社新書)

  • 鈴木 由加里
  • 平凡社
  • 価格¥1(2025/06/10 14:15時点)
  • 発売日2006/07/11
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いずれも既刊の書籍タイトルであり、これが両方正しいとしたら男性は見た目が9割、女性は見た目が10割ということだろうかと思うわけだが、それより筆者が気になったのは次の点である。

「では、仕事をする上で、見た目は何割か?」

 

個人的な思いとしては、外見より実力と言いたい。

また、自分の周囲には公言こそしないものの明らかにルックス採用を行っている企業があり、見た目はいいが中身は空洞、もしくはモンスター級といった社員も多々目にしてきている。

 

だが、仕事のさまざまな場面では中身をしっかり見てもらえず、またはこちらが精査する機会もなく、ビジュアルからもたらされる情報のみで相手を判断しなければならない場面も少なくない。

そうなると、表面上どうにでもつくろえるものであったとしても、外見は意外とおろそかにできない要因ということになる。

 

実際のところ社会人、特に見られることへの意識が薄い男性は、微に入り細に入り身だしなみに気遣う必要性がある。

手間暇はかかるけれど、そこを楽しみながら頑張れば「デキる人」感につながるし、自分磨きは決して無駄にならない

ーーそう語るのは銀座で男性向けネイル店を営む、とある女性経営者だ。

 

その知見に耳を傾けつつ、本稿では仕事と見た目を整えることの関係について論じる。

 

神は細部に宿る! 適当では済まないパーツの身だしなみ

バリッとスーツを着こなし、時計や靴など小物のコーディネートも気を使い、顔もそこそこイケていて、さっそうと歩く姿も魅力的。

そんな方と面と向かって話していて、相手がニッと笑顔になった時、もし前歯が1本かけていたら、どう思うだろう。

 

もちろんこれは仮定の話だが、細部が全てをぶち壊すことは実際にある。

そんな悲劇を避けるため、「社会人にとって身だしなみは大事」ということなのだけども、ではどこまで気を遣うべきなのか。

 

ムダ毛処理や肌のケアなど男性向けの美容が長年話題となる中、ここ数年一気に伸びてきたのがメンズネイルである。

今年の6月オープンした、銀座の一等地のメンズネイルケア専門サロン「男の美爪」を経営する長瀬仁美さんは言う。

「恋愛でも仕事でも、外見が10割っていうことはないと思います。でも、人からどう見られるかという意識が低い人は、間違いなく損をしていると思うんですよね。

恋愛でよく清潔感が大事って言いますけど、あれは仕事でも同じ。清潔と清潔感は別物で、いくら毎日お風呂に入っていても、たとえば握手した時に爪が汚かったり黄ばんでいたりしたら、ネガティブな想像をされても仕方がないっていうか、お風呂に入っているって信じてもらえないんですね。

相手がどこに注目してくるかなんてそれこそ分からないわけですから、爪も含めてあらゆる面を気遣うのがベターです。当店のお客様には社会で成功している人、特に経営者の方々も大勢いますが、そういう方はやっぱり自分自身に相応の投資をしているし、セルフケア意識が高いなって感じます」

 

これまで一般的な男性にとって、オシャレや身だしなみで爪の優先順位は高くなく、女性のネイルアートに対して「なぜ爪に2万もかけるの?」といったふうに理解を示さない向きも多かったが、そのような風潮が変わりつつある。

 

現在長瀬さんのお店は外見に対する意識が高い男性で日々賑わっている。

「まずリピーターになっていただけたのは、職業上爪を意識することが多い方、それから外見で判断される機会が多い職業の方ですね。

当店は銀座にあり、築地に近いせいか寿司職人のお客様がいらっしゃいます。それこそ指先の一挙一動が注目されるお仕事なので、爪の仕上がりについてのオーダーもとても細かく、こだわりを感じます。

あとはボディトレーナーの方も多くいらっしゃいますが、これはお仕事の内容が身体を整えるサポートですから、やはり見た目や自己管理への意識が強いということなのだと思います。

それから、営業職の皆さまにもご贔屓にしていただいてます。初対面の相手に見た目の与える印象がどれだけ大きいか、細かな部分をおろそかにしないことがいかに大事かっていうことを、営業の方は仕事を通じて理解されていますね」

 

昔は、珍妙な服装をすることを信条としていたが……

長瀬さんの話は自分にとって、実に耳の痛い話だ。というのも出版社勤務時代、筆者は背広着用を求められない編集業だったのだけども、あえて珍妙な服装をすることを信条としていたからだ。

 

それは、たとえどんな格好をしていようが、実務で責任を果たしていれば文句を言われる筋合いはないという自己主張だ。

もっと言えば、定時キッチリで帰り売り上げ云々を問われない背広組=管理側の社員に対し、2日や3日泊まり込みは当たり前の自分たちの方が間違いなく会社に貢献しているだろうという、無言の意思表示だった。

 

時にはそれが行き過ぎてモヒカンにして怒られる先輩もいれば、オキニのアロハシャツで出勤するオジサンもいた。社長に目をつけられて説教を受けることもしばしばあったのだが、「自分を他者がどう見ているか」という意識が果てしなく希薄だったのは事実だ。

 

だが、それからだいぶ時間が過ぎ、今は社会人としての体裁が必要な仕事に就いているせいか、見た目を気にするようになったし、他人の身だしなみから情報を拾うクセがついた。

外見で全てを見極めることは不可能とはいえ、社会常識があるか、自己管理の能力を備えているか、はたまたこの人は自己投資にいくら使える立場なのかといったことに思いが及ぶようになった。

 

そうなると、身だしなみとは奥が深いもの、というかより面白いものであると分かる。また、自分は見た目で相手にどういう情報を与えようかと思案し、それが成功するかどうかという駆け引きも楽しめる。

要は、身だしなみを頑張るモチベーションが生まれたのである。

 

前出の長瀬さんは次のように言う。

「見た目って、考えすぎてネガティブになったり、コンプレックスをこじらせたりするのはダメですが、考えなさ過ぎるのはもっとダメだと思うんですね。

大事なのは、楽しむことです。

メンズネイルにしてもそうですが、『誰にどう見られているか分からないから、ちゃんとしなきゃ!』っていうのではなく、自分を磨くことに喜びを見出して欲しい。

仕事でも恋愛でも、身だしなみでもそうですが、何でも楽しくないと続かないし、嫌々やるのなんて勿体ないですよね。

楽しく人生を送っている人はやっぱり輝いて見えますし、見た目も中身もしっかり意識して磨いている人は本当に素敵です」

 

結局、中身と見た目は、どちらも大事だ。

比率配分は人それぞれだろうが、合わせて10割になるように楽しみながら努力すればよいだろう。

 

中身を磨くのが難しいなら、せめて見た目だけでも磨いて「デキる人」感を演出するのも一つの手なのかもしれない。

 

だからもし貴方が喜々としてオシャレを楽しみ、自分磨きに全力投球しているおっさん社員を見かけても、それを「はい無駄」などと切り捨てたり、卑下してはならない。

他人が楽しんでやっていることを笑うのは、野暮の極みである。

 

自らを磨き、己を高めようとする全ての人々に幸あれ! 光あれ!

たとえイケメンに生まれなかった人であっても、その努力はきっといつか報われる!! ……と思う。

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

【プロフィール】

御堂筋あかり

スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

Photo by Towfiqu barbhuiya