『人は見た目が9割』
『女は見た目が10割』。
いずれも既刊の書籍タイトルであり、これが両方正しいとしたら男性は見た目が9割、女性は見た目が10割ということだろうかと思うわけだが、それより筆者が気になったのは次の点である。
「では、仕事をする上で、見た目は何割か?」
個人的な思いとしては、外見より実力と言いたい。
また、自分の周囲には公言こそしないものの明らかにルックス採用を行っている企業があり、見た目はいいが中身は空洞、もしくはモンスター級といった社員も多々目にしてきている。
だが、仕事のさまざまな場面では中身をしっかり見てもらえず、またはこちらが精査する機会もなく、ビジュアルからもたらされる情報のみで相手を判断しなければならない場面も少なくない。
そうなると、表面上どうにでもつくろえるものであったとしても、外見は意外とおろそかにできない要因ということになる。
実際のところ社会人、特に見られることへの意識が薄い男性は、微に入り細に入り身だしなみに気遣う必要性がある。
手間暇はかかるけれど、そこを楽しみながら頑張れば「デキる人」感につながるし、自分磨きは決して無駄にならない
ーーそう語るのは銀座で男性向けネイル店を営む、とある女性経営者だ。
その知見に耳を傾けつつ、本稿では仕事と見た目を整えることの関係について論じる。
神は細部に宿る! 適当では済まないパーツの身だしなみ
バリッとスーツを着こなし、時計や靴など小物のコーディネートも気を使い、顔もそこそこイケていて、さっそうと歩く姿も魅力的。
そんな方と面と向かって話していて、相手がニッと笑顔になった時、もし前歯が1本かけていたら、どう思うだろう。
もちろんこれは仮定の話だが、細部が全てをぶち壊すことは実際にある。
そんな悲劇を避けるため、「社会人にとって身だしなみは大事」ということなのだけども、ではどこまで気を遣うべきなのか。
ムダ毛処理や肌のケアなど男性向けの美容が長年話題となる中、ここ数年一気に伸びてきたのがメンズネイルである。
今年の6月オープンした、銀座の一等地のメンズネイルケア専門サロン「男の美爪」を経営する長瀬仁美さんは言う。
「恋愛でも仕事でも、外見が10割っていうことはないと思います。でも、人からどう見られるかという意識が低い人は、間違いなく損をしていると思うんですよね。
恋愛でよく清潔感が大事って言いますけど、あれは仕事でも同じ。清潔と清潔感は別物で、いくら毎日お風呂に入っていても、たとえば握手した時に爪が汚かったり黄ばんでいたりしたら、ネガティブな想像をされても仕方がないっていうか、お風呂に入っているって信じてもらえないんですね。
相手がどこに注目してくるかなんてそれこそ分からないわけですから、爪も含めてあらゆる面を気遣うのがベターです。当店のお客様には社会で成功している人、特に経営者の方々も大勢いますが、そういう方はやっぱり自分自身に相応の投資をしているし、セルフケア意識が高いなって感じます」
これまで一般的な男性にとって、オシャレや身だしなみで爪の優先順位は高くなく、女性のネイルアートに対して「なぜ爪に2万もかけるの?」といったふうに理解を示さない向きも多かったが、そのような風潮が変わりつつある。
現在長瀬さんのお店は外見に対する意識が高い男性で日々賑わっている。
「まずリピーターになっていただけたのは、職業上爪を意識することが多い方、それから外見で判断される機会が多い職業の方ですね。
当店は銀座にあり、築地に近いせいか寿司職人のお客様がいらっしゃいます。それこそ指先の一挙一動が注目されるお仕事なので、爪の仕上がりについてのオーダーもとても細かく、こだわりを感じます。
あとはボディトレーナーの方も多くいらっしゃいますが、これはお仕事の内容が身体を整えるサポートですから、やはり見た目や自己管理への意識が強いということなのだと思います。
それから、営業職の皆さまにもご贔屓にしていただいてます。初対面の相手に見た目の与える印象がどれだけ大きいか、細かな部分をおろそかにしないことがいかに大事かっていうことを、営業の方は仕事を通じて理解されていますね」
昔は、珍妙な服装をすることを信条としていたが……
長瀬さんの話は自分にとって、実に耳の痛い話だ。というのも出版社勤務時代、筆者は背広着用を求められない編集業だったのだけども、あえて珍妙な服装をすることを信条としていたからだ。
それは、たとえどんな格好をしていようが、実務で責任を果たしていれば文句を言われる筋合いはないという自己主張だ。
もっと言えば、定時キッチリで帰り売り上げ云々を問われない背広組=管理側の社員に対し、2日や3日泊まり込みは当たり前の自分たちの方が間違いなく会社に貢献しているだろうという、無言の意思表示だった。
時にはそれが行き過ぎてモヒカンにして怒られる先輩もいれば、オキニのアロハシャツで出勤するオジサンもいた。社長に目をつけられて説教を受けることもしばしばあったのだが、「自分を他者がどう見ているか」という意識が果てしなく希薄だったのは事実だ。
だが、それからだいぶ時間が過ぎ、今は社会人としての体裁が必要な仕事に就いているせいか、見た目を気にするようになったし、他人の身だしなみから情報を拾うクセがついた。
外見で全てを見極めることは不可能とはいえ、社会常識があるか、自己管理の能力を備えているか、はたまたこの人は自己投資にいくら使える立場なのかといったことに思いが及ぶようになった。
そうなると、身だしなみとは奥が深いもの、というかより面白いものであると分かる。また、自分は見た目で相手にどういう情報を与えようかと思案し、それが成功するかどうかという駆け引きも楽しめる。
要は、身だしなみを頑張るモチベーションが生まれたのである。
前出の長瀬さんは次のように言う。
「見た目って、考えすぎてネガティブになったり、コンプレックスをこじらせたりするのはダメですが、考えなさ過ぎるのはもっとダメだと思うんですね。
大事なのは、楽しむことです。
メンズネイルにしてもそうですが、『誰にどう見られているか分からないから、ちゃんとしなきゃ!』っていうのではなく、自分を磨くことに喜びを見出して欲しい。
仕事でも恋愛でも、身だしなみでもそうですが、何でも楽しくないと続かないし、嫌々やるのなんて勿体ないですよね。
楽しく人生を送っている人はやっぱり輝いて見えますし、見た目も中身もしっかり意識して磨いている人は本当に素敵です」
結局、中身と見た目は、どちらも大事だ。
比率配分は人それぞれだろうが、合わせて10割になるように楽しみながら努力すればよいだろう。
中身を磨くのが難しいなら、せめて見た目だけでも磨いて「デキる人」感を演出するのも一つの手なのかもしれない。
だからもし貴方が喜々としてオシャレを楽しみ、自分磨きに全力投球しているおっさん社員を見かけても、それを「はい無駄」などと切り捨てたり、卑下してはならない。
他人が楽しんでやっていることを笑うのは、野暮の極みである。
自らを磨き、己を高めようとする全ての人々に幸あれ! 光あれ!
たとえイケメンに生まれなかった人であっても、その努力はきっといつか報われる!! ……と思う。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
【プロフィール】
御堂筋あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。
Photo by Towfiqu barbhuiya