最近ふと英会話系YouTuberの動画を見たからか、その後頻繁に語学系動画がおすすめされるようになった。

 

そのなかには「ネイティブはそんな言い方しない!? 本当は失礼な〇〇」「ネイティブらしい表現を覚えよう!」「誤解されがちな××、ネイティブが解説」といったものも多くある。

 

そういえばXでも、「ネイティブはそんな言い方しない」的な議論は、定期的に話題になっていた。

 

リプ欄を見ると、「自分はアメリカに5年住んでるけど聞いたことない」「10年海外でビジネスしてますが普通に言いますよ」のように、英語ネイティブはその表現を使うか否かを、日本人たちが言い争っている。

 

でもドイツに住んでそれなりの年数が経ったいま、改めて思う。

外国人がネイティブっぽく話す必要は一切ないし、中途半端にネイティブの真似事をするよりも大切なことがあるんじゃないか、と。

 

ネイティブやバイリンガルってどういう人たちのこと?

この手のコンテンツや議論で毎回思うのだが、そもそもネイティブって、だれのことを指しているんだろう?

 

英語でいえば、ネイティブ=英語を母語としている人、だろうか。

でも英語が公用語であるアメリカとイギリス、カナダ、オーストラリアでは、それぞれまったくちがう単語・表現を使うこともあるし、発音も異なる。

 

ハリポタの原作者はイギリス人なので、同じ英語でも「アメリカ版ハリポタ」が存在するくらいだ(『賢者の石』はタイトルからしてちがう)。

そんななかで、「ネイティブならこう!」なんて一概に言えるのだろうか。

 

また、語学系YouTuberには「バイリンガル」を謳っている人も多い。両親は日本人で生まれも育ちもアメリカという人や、高校から留学して現地の大学を卒業して暮らしている人、などなど。

 

でもバイリンガルにもかなり幅があって、2つの言語を母語レベルに話せるからといって、「生まれも育ちもその国の人と同レベルの語学力か」というと、そうともいえない。

 

たとえば、日本人とドイツ人の両親から生まれ、ドイツで育ったAちゃん。

Aちゃんは母親とは日本語で話しているので、日本語もペラペラ。ドイツ語で教育を受けているのでドイツ語ネイティブ、まさに「バイリンガル」だ。

 

ある日Aちゃんに、「水着ってドイツ語でなんていうの?」と聞いたことがあった。

そしたらAちゃんは、「ビキニ」と答えたのだ。

 

ビキニとは上下が分かれてヘソが出ている女性用水着のことであり、ビキニは水着だが、水着=ビキニではない。でもAちゃんは、水着=ビキニと訳した。

 

実はバイリンガルといっても、『吾輩は猫である』の「吾輩」の意味がわからない、「揚げ足を取る」「ご無沙汰しております」といった言い回しを知らない、みたいな人は結構いっぱいいる。

 

さらにいえば、ネイティブだからって正しい言葉遣いができるわけではない。

日本人だって最近では「言う」を「ゆう」と書く人が増えているし、てにをはや敬語の使い方が怪しい人はたくさんいる。「もうすぐ」が5分なのか10分なのかは、日本語が母語の日本人でも認識が異なるし……。

 

「ネイティブ」や「バイリンガル」だからって、盲信するものじゃない。

日本語ネイティブだけどまともな文章を書けない人、自称バイリンガルだけどまともに漢字を読めない人なんて、たくさんいるんだぞ!

 

それが悪いというわけじゃなくて、語学力や国語力っていうのは人によって大きくちがって、だからこそ言語を学ぶのはおもしろいという話だ。

 

所詮外国人、ネイティブっぽさなんて必要ない

そもそも日本人の多くは、「まちがえないこと」に固執しすぎなのだ。

 

外国人なんだもの、語学力が足りないのなんて当然だよ。

失礼な言い回し? ネイティブは使わない古い表現? だからなに? それ使ったら死ぬの?

 

これくらいの気持ちがなければ、外国語学習なんてやってられない。

「こっちが一生懸命話してるんだから、そっちも頑張って理解しろ!」くらいドンと構えるくらいがちょうどいい。

いくらネイティブ表現を学んでも、ディスカッションで萎縮して発言できなければなんの意味もないから。

 

もちろん意地悪な人はどこにでもいるけど、「バカにされて恥ずかしい……」と落ち込むんじゃなくて、知ってる単語を並べて「あなたはまちがってる! 外国人を差別するな! 俺の話を聞け!」と主張するメンタルのほうがよっぽど大事だ。

 

いや本当、かなり独特なアクセントで英語を話すインド人も、「自分は英語ペラペラだ!」って堂々と商談に行くからね。結局はそういう人が成功するんだよ。

 

多くの外国人が暮らす国では、ノンネイティブがそこらじゅうにいるので、いちいち外国人に「ネイティブっぽい語学力」を求めることはない。

お互い「いいんだよ、伝われば」くらいのテンションで生活してる。

 

それなのに、語学学習=外国語を正しく扱う、ネイティブっぽく話す、というイメージをもっている人が多すぎるんだよな。

ネイティブっぽい語学力より、乏しい語彙力でも意思疎通しようとするふてぶてしさのほうが、百倍大事なのに。

 

自分で調べて考えてこそ、糧になる

とはいえわたしは、「ネイティブはそんな言い方しない」という主張自体に価値がないとは思っていない。そこから学べることもあるからだ。

 

たとえば、「ドイツ人は『Guten Morgen(おはようございます)』と言わない」という主張があったとする。

ドイツ語で「おはよう」は「Guten Morgen(良い朝)」だが、日常生活ではおもに「Morgen」だけで挨拶する。これは事実だ。

 

一方で、授業のような1対多数の場合や、病院や役所に電話するちょっとフォーマルな場合は「Guten Morgen」を使う。だから、「ネイティブはGuten Morgenなんて言わない」という主張は正しくない。

 

でも大事なのは、「ネイティブはGuten Morgenと挨拶するか否か」ではなく、「いや、ニュースではGuten Morgenで始まってるぞ。でもドイツ人ストリーマーは『morgen』で配信スタートしてるな。どういう使い分けをしているんだろう」と考えてみることだ。

 

真偽を確かめるために調べるなかで、

「なるほど、気軽な挨拶は『morgen』なんだな。日中の挨拶は『Guten Tag』だけど、それも『Tag』と略すんだろうか? うーん、ドイツの映画を見ても、日中は『Hi』だな。そういえば日本でも、友だちに『おはよう』とは言うけど『こんにちは』は言わないもんな……」

なんて学びが生まれる。

 

「なぜその人は『ネイティブはこうだ』という主張をするのか? それは正しいのか? 正しいとしたらどういう場面で正しいのか?」と考えることが、勉強になるのだ。

 

日本語解説に甘えずにナマのその言葉に触れるべき

「ネイティブっぽい」のに憧れる気持ちはわかる。ペラペラってかっこいいもんね。なりたいよね。

でもそれなら、日本語で解説された「ネイティブ英語」を学ぶより、英語を母語としている人のYouTube配信を見るとか、アメリカの歌手のSNSをフォローするとか、「ナマの英語」に触れるほうがいい。

 

よく「『How are you?』『I’m fine thank you, and you?』はネイティブは使わない!」なんて言われるが、じゃあなんて言うんだろう。

そんなの、アメリカの学園映画でも見れば一発でわかる。しょっちゅう電話する遠距離カップルの恋愛ドラマでもいい。

 

日本語で解説された理屈を学ぼうとするから、ネイティブとの差が気になるのだ。それならいっそのこと、その国でその言葉を使って生活している人たちから勉強すればいい。

いやまぁ日本語で勉強したほうが楽だから、「日本語で解説されたネイティブ表現」に食いつく気持ちはわかるけどね。

 

でも言語は多様だから、日本語解説の「〇〇語ネイティブは~」論は、あんまり鵜呑みにしないほうがいいと思う。

 

外国語学習で大事なのはとにかく堂々と主張するメンタル!

言語はあくまで、コミュニケーションの手段。

いくらヘタでも相手に伝わればいいし、いくら上手でも相手に伝わらなければ意味がない。

 

もちろん、「伝える」ためには最低限の文法の知識や語彙力、正しい発音が必要で、それらは勉強するべきだけども。

でも外国人に「ネイティブっぽさ」なんて基本求められないし、それを自分に求めちゃうと外国語学習がしんどくなるよ。だって、どこまでいっても外国人だもん。

 

また、日本人同士で「〇〇語ネイティブは~」と議論するのもしょーもない。

地域や年齢、教養の度合いなどで、言葉遣いは大きく変わる。「ネイティブならみんなこういう」はたいしてアテにならない。

 

それよりも、外国語で堂々と自分の主張するメンタルのほうが、よっぽど大事だ。

外国語学習なんて、そもそもまちがえてナンボなんだから。

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
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岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

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