もちろんマイケル・ジョーダンは今でも「神」です。
でも、ジョーダンが得意としていたあの芸術的なフェイダウェイシュートは絶滅危惧種、みんな大好き「スラムダンク」には存在すらしなかったステップバックスリーが、NBAどころか世界中のあらゆるバスケシーンで使われる「花形」スキルになっています。
マイケル・ジョーダンの呪縛
私たち世代は、ジョーダンの凄さをリアルタイムで目の当たりにした世代です。
信じられない跳躍力によるあり得ない場所から踏み切られるダンク、想像したことすらなかったダブルクラッチ(レイアップシュート)、そして誰もが夢見るクラッチシチュエーションでのブザービーター(試合最終盤土壇場での逆転シュート)。
ジョーダンはそれらすべてが「美しく」、一瞥するだけでその凄さがわかるものでした。
さらに恐ろしいのはそれだけの選手ではなかったことです。
現実離れした「実績」が輪をかけて伝説的です。
シカゴ・ブルズでの2度の3連覇、その最初の3連覇直後の父親殺害が遠因となった突如の引退とMLBへの挑戦、そして復帰後再び3連覇。
入団3年目から最初の引退まで7年連続、復帰翌年から2度目の引退までの3年連続を含めた実質10年連続の得点王。そして6度のファイナルMVP(要するに優勝した時全て自分がMVP)など、彼はまさにGOAT(Greatest Of All Time)なのです。
そんなジョーダンの影響で私はもはやNBAマニアと呼んでいいほどにNBA大好き人間になってました。
もちろんジョーダン引退後もアレン・アイバーソン、コービー・ブライアント、今シーズン22年目を迎え未だ現役バリバリのレブロン・ジェームズなど、どの選手たちも個性的かつ実力も圧倒的で、私が大好きなNBAは輝きを放ち続けていました。
でも、彼らをどこか「ジョーダンの後継者」として見てしまう自分がいつづけたのです。
ジョーダンのダンクを超えるのは誰か?
ジョーダンのように美しいフォームでシュートを打つ選手は誰か?
ジョーダンのようにクラッチショットを決め続けるのは誰か?
それら全てを兼ね備えた選手は誰か?
要するにジョーダンを基準としてNBAを語ろうとしてしまうのです。
これが「マイケル・ジョーダンの呪縛」です。
呪縛を解いたステフィン・カリー
しかし、ついに私はその呪縛が解かれる瞬間がきました。
それを解いてくれたのがステフィン・カリーです。
カリーを象徴するプレーは、パリ五輪の決勝で見ることができました。
対フランス戦決勝で第4Q残り3分を切ってから3本連続で3ポイントシュートを決めました。
その一本一本それぞれがあの状況ならではの重要な意味がありましたが、特に3本目が象徴的でした。
(パリ五輪2024 バスケ決勝 残り時間41秒から)
残り約40秒。リードしているとは言え、絶対にミスが許されないあの緊迫した場面で、現NBAでレジェンドと呼ばれ別格扱いされている2人、レブロン・ジェームズとケビン・デュラントがドドドドフリー(特にレブロンに注目!)だったにもかかわらずカリーはパスを選択せず、しかも目の前には二人のディフェンダー(共にNBAでは名の通った選手)がいるにもかかわらず、強引に3ポイントシュートを放ち、そして決めました。
試合後にカリーは「リングしか見てなかった(All I saw was the rim)」と言ってましたが、
そんなん決めても決めなくても皆言うんだよw
が、そこで決めてしまうそんなショットを何度も決めてきたから、カリーはあの場面でショットを打つ決断ができ、それを周囲も打たせてくれるのです。
そして、彼が躊躇なく打ったあの3ポイントシュートこそ、現在のNBAのスタイル、そして世界のバスケスタイルをも変えてしまったプレイそのものなのです。
30年の「マイケル・ジョーダンの呪縛」から解放された瞬間
私は「マイケル・ジョーダンの呪縛」から解放された瞬間を、今でもはっきりと覚えています。
それはわずか3年前、2021-22シーズンにステフィン・カリーがゴールデンステート・ウォリアーズで4度目の優勝をした時です。
カリーが3ポイントシュートの名手であることはデビュー時から知られていました。彼が本格的に注目を集め始めたのは、入団4年目2012-13シーズンに年間3ポイントシュート記録を更新(272本)した頃からです。(その後2015-16シーズンに402本を記録)
この時期、ウォリアーズはまだプレイオフ進出がやっとのチームでしたが、クレイ・トンプソンとのコンビ「スプラッシュブラザーズ」が3ポイントシュートを次々に決めるスタイルを確立し、さらにドレイモンド・グリーンがリーダーとして成長し、この3人が後にチームの黄金期を支える存在となります。
カリーは6年目の2014-15シーズン、ウォリアーズを初優勝に導き、以降5年連続でファイナルに進出します。
そのうち4回はレブロン・ジェームズ率いるキャバリアーズと対決し3度の優勝をしました。特に2015-16シーズンからは、ケビン・デュラントも加わり「デス・ラインナップ」と呼ばれる圧倒的なチームが完成し、それはウォリアーズ・ダイナスティー(王朝時代)と呼ばれました。
しかし、王朝は一旦崩壊します。
2018-19シーズンのファイナルでトロント・ラプターズに敗れ3連覇を逃した翌2019-20シーズン、デュラントが同僚のグリーンとの不仲が遠因で移籍、トンプソンは前年ファイナル最終試合に全十字靭帯断裂で全休。
さらに、カリーも開幕5試合目で骨折し、ほぼ全シーズンを欠場することになりました。結果、チームは最下位に沈みます。
続く2020-21シーズンも、トンプソンが再びアキレス腱断裂で全休。ウォリアーズはプレーイントーナメントで敗退し、プレイオフ進出を逃しました。
それでも、孤軍奮闘したカリーは、2度目の得点王に輝きます。1度目の得点王はチーム全体が完成度の高い状態での結果でしたが、今回はカリーが一人でチームを支えたシーズンでした。
そして迎えた2021-22シーズン、トンプソンがシーズン半ばに復帰し、カリー、グリーンと共にかつてのBIG3が再び揃いました。
カリーはこのシーズンでNBA通算3ポイントシュート記録(2,973本)を更新し、名実共にNBA最高の3ポイントシューターになりました。(現在3,747本更新中)
その勢いのまま、ウォリアーズは2年ぶりにファイナルに進出し、カリーは4度目の優勝を果たし、その時初めてファイナルMVPを獲得しました。
私はこの優勝でようやく「マイケル・ジョーダンの呪縛」から解放されました。
少なくともカリーをリアルタイムで13年間、入団時から3ポイントシュートに関する数々の記録更新、そして4度目の優勝をこの目でしっかり見てきて、やっと目が覚めました。ジョーダンを初めて見た時から30年以上も経っていました。
この時、既に世界中のバスケットボールが3ポイントシュート中心のスタイルに完全に変わっていました。
ジョーダンの時代は、圧倒的な身体能力を武器に、ダンクや豪快なドライブで相手をねじ伏せるプレーがNBAの象徴でした。彼はその超人的な身体能力でコートを支配し、1対1で相手を圧倒するスタイルによってNBAの魅力を世界に広めたのです。
一方、ステフィン・カリーは、これまで脇役とされていた3ポイントシュートを完全な主役にしました。
カリーの成功はウォリアーズという一チームの成功にとどまらず、すべてのNBAチームの戦術スタイルを変え、さらには世界中のバスケットボールにも大きな影響を与えました。
例えば、東京五輪で銀メダルを獲得した日本女子代表も3ポイントが戦術の中心でしたし、パリ五輪でも他国に対して身体能力で圧倒的優位な男子アメリカ代表でさえ、コートに出てくる全ての選手が3ポイントシュートが打てる選手でした。そうしないともう勝てないからです。
この優勝を機に、私はNBA選手たちをジョーダンと比較することから解放され、今のNBAをありのまま受け入れることができるようになリました。
ジョーダンという「バイアス」がなくなった今、現在のNBA選手たちの「個性」がより際立って見えるようになったことで、
NBAが以前より何倍も面白く感じられるようになったのです。
控え目に言っても今のNBAって本当に本当にめちゃくちゃ面白いです。
カリーには心から感謝しています。
2024-25シーズンの注目選手たち
2024-25シーズンは10月23日に開幕しました。レギュラーシーズン82試合、ベスト16から始まるプレイオフが4月上旬からはじまり、6月半ばでNBAファイナルでシーズン終了となります。
NBAは全30チームで、スタメン選手150名、年間登録選手総数でも500名程度しかいませんので選手を覚えるのはとても簡単です(笑)が、ここまでお読み下さった方のために、断腸の思いで厳選3名に絞ってご紹介します。
本当は八村塁や河村、富永について語りたいのですが長くなりそうなので、まだジョーダン(MJ)の影響から抜け出せていない人向けMJの系譜に連なる選手を紹介します。
まずは、ジョーダンの象徴だったダンクに注目するならアンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブス)です。
彼は2021年ドラ1、4年目の昨年ついにティンバーウルブズのエースとして覚醒し、今年はさらに活躍しそうです。パリ五輪にもアメリカ代表として出場しました。まさにNBAの顔になりつつあります。(まだ候補の一人レベルですが)
彼は身体能力お化け揃いのNBAの中でもさらに際立った身体能力を持っているとされています。
昨シーズンはそれを本当に証明しました。「ダンク・オブ・ジ・イヤー」と「ブロック・ジ・イヤー」の両方のTOP1に選ばれました。
どゆ意味?見ればわかるw
(2023-24シーズン NBA TOP100 アンソニー・エドワーズのダンク)
(2023-24シーズン NBA TOP25 アンソニー・エドワーズのブロック)
次に、クラッチプレーに強い選手といえば、スロベニア出身のルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)です。
いわゆるユーロリーグ出身選手です。彼はデビュー1年目(19歳!)から、数々のクラッチショットを決め「普通のNBA選手ではないこと」を示してきました。
6年目の昨シーズンはじめて得点王となり、ついにNBAファイナルまで辿り着きました。
彼はずば抜けた早さや強さがあるわけではありません。ジョーダンに近い世代で言うとむしろラリーバードに喩えられたりしますが、ルカマジックと呼ばれるようにマジックジョンソンのようなトリッキーなパスもあり、ジョーダンとバードとマジックを足して3で割ったような選手です。今私が思いついたのですが、まさにそれです。
彼が昨年炸裂させた「クラッチスリーポイントフローター」は、その象徴的なプレーです。
(ルカのクラッチスリーポイントフローター)
そして、今ツウな人に「コイツは確実に結果を残すよな」と注目されているのが、SGAことシェイ・ギルジャス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー)です。パリ五輪ではカナダ代表でした。
彼はサンダーが弱体化した時代(年俸上限制限やドラフトの仕組み上どのチームにも必ずそういう時代がくる)にエースとして頭角を表しました。孤軍奮闘している間にチームは若手有望株を次々獲得し、昨年はレギュラーシーズン1位になるまで上り詰めました。
彼は現代NBAでカッコ良いとされるスキル全部持ってます。
鋭いドライブからのアンクルブレイク(ドリブルで相手に接触しないでよろけさせる)、華麗なステップによる3ポイントシュート、クラッチシチュエーションでの冷静さなど、彼は一人で試合を決めてしまう力を持っています。西の優勝候補筆頭です。
(シェイのアンクルブレイク・ステップバックスリー)
また機会があればここBooks&AppsでNBAについて語りたいと思います。
-スパークル株式会社- 1.企業の課題解決に向けたDX推進人材の採用・育成に関する状況 -ティネクト株式会社- 1.「営業リストが尽きた時に次に取るべき行動とは?」
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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5.まとめと次のステップへ
日時:
2024/11/22(金) 10:00-11:30
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【プロフィール】
著者:楢原一雅
ティネクト株式会社創業メンバー
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