この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。
・名著「はじめてのおつかい」などの絵本を描かれた林明子先生の訃報に接しました
・林明子先生の絵本には私も妻も子どもたちも大変お世話になったので、とても寂しい気分です
・「はじめてのおつかい」について家族でわいわい話していたら、ベスト絵本についての議論になりました
・「はじめてのおつかい」を始め、しんざき家メンバーそれぞれのベスト絵本について紹介したいと思います
・しんざきチョイスの「あおくんときいろちゃん」は、恐ろしい程の視覚的分かりやすさと「色の混じり合い」を展開に取り込んだ、天才的な発想の絵本だと思います
・子どもたちには「何かを作る」あるいは「色んなところを旅する」絵本が全体的に人気である様子です(あとでかいものを料理して食べる絵本)
以上です。よろしくお願いいたします。
ということで、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。
しんざき家は5人家族、子どもが3人います。上のひとりは長男、今春から大学生。下のふたりは中学生の双子姉妹。おかげさまで、皆仲良く過ごしています。
子どもたちは全員、幼少の頃から絵本が大好きで、小学校くらいまでは毎晩のように、寝る前の絵本の読み聞かせをしていました。
一度の読み聞かせで大体3、4冊は読まされるので、長男の幼少期から通しで考えると、軽く数千回は読み聞かせをしてるんじゃないでしょうか。
おかげで、「ぐりとぐら」やら「ノラネコぐんだんパンこうじょう」やら、頻繁にリピートする絵本については、ほぼ全文を丸暗記してしまいました。今でも暗誦できます。
子どもたちが自分で字が読めるようになってからも、かなり長い間、読み聞かせの習慣は続きました。
次女によると、「みんなで読めるから、自分で読むのと読み聞かせは別なの」だそうで、自分ひとりでの体験と複数人での体験は別コンテンツ、ということでしょうか。
しんざきも妻も本をなかなか捨てられない性分で、絵本も児童書も、かなりの冊数が本棚に残っています。これは正直良し悪しで、本棚がいつ倒壊するか怖くて仕方がないので、四次元ポケットの早急な商品化を祈るばかりです。
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先日、「はじめてのおつかい」や「こんとあき」など数々の絵本作品を描かれている、林明子先生の訃報に接しました。
「はじめてのおつかい」は1976年の作品で、しんざき家の子どもたちは言うまでもなく、私や妻も幼少期から何度も読んでいる一冊で、とても寂しい気持ちになった次第です。
とはいえ、「はじめてのおつかい」を今読み直してみると、改めて作中世界の広さというか、描写の圧倒的な「詳細さ」と「広さ」に驚かされます。
5歳になる「みいちゃん」が初めて牛乳を買いに行く話なのですが、作中スケールがちゃんとみいちゃんの視点になっていて、とにかく何もかもが大きく見えるんですよね。
例えばみいちゃんが筒井商店にたどりつくページ、恐らく描写からするとそこまで大きな店ではないと思うんですが、道も店もやたら広く思えますよね。
坂道の表現なのか、ちょっと見上げるような視点なのも、自然と街や看板が大きく感じられて素晴らしい。

しかも林明子先生の描写って一見シンプルなようでよくみると細部まで分かりやすく描き込まれていて、本当に自分が5歳の子どもになって作中世界に入り込んでいるような気がしてくるんです。
上記の場面でも、木や看板の書き込みとか、影の部分と日のあたる部分の色使いの濃淡とか、物凄くリアルに思えますよね。店の中の商品の描写、色使いの微妙な濃淡で色んな商品が並んでるように思えるところ、あまりにも表現が上手すぎる。
夕飯の後に家族でダベっている際、「絵がお上手過ぎる……!!」とみんなで戦慄するばかりでした。
あと、作中で「たばこ!!」とだけ怒鳴るおっさん、大人になって読むと「ああ、昭和の頃ってこういうおっさんいたわー…」となって、現代的感覚だとあんまりいい印象ないんですが、みいちゃんが牛乳を買うまでのプロセスで必要だったイベントでもあるので仕方ありません。
そのような次第で、「はじめてのおつかい」をみんなで覗きこんでいると、その場で昔よく読んでいた絵本の話になりました。
あの本が面白いこの本がお気に入りと皆でああだこうだ言い合い、それぞれのベスト絵本をチョイスする流れになったので、もちろん「はじめてのおつかい」はオールタイムベストとして、この場をお借りして各人のチョイスをご紹介したいと思います。

「色の擬人化」という絵本として天才的な発想、「あおくんときいろちゃん」
私があげたのは、レオ・レオーニ作、「あおくんときいろちゃん」。1959年の作品でして、しんざき自身ちっちゃい頃から読んでいる名著です。
この作品、登場キャラクターが「色」でして、一見するとページに無作為に色が落とされているだけのように見えるんですが、この「色」のキャラクターたちが文字通り入り交じって、ちゃんとお話を展開するんですよ。作中世界に入り込むと、ただいろんな色の丸が描いてあるだけなのに、みんなで仲良く遊んでいるように見えてくるので不思議です。
中でもしんざきのお気に入りポイントは、「混色」という現象を完全にストーリーに取り込んでいること。
表紙でも「あおくん」と「きいろちゃん」がちょっと混ざって緑になっていますが、この二色、作中でも混ざって緑になってしまって、それが起こすトラブルが話の主な展開になっています。
絵本ならではのシンプルな展開の中でも、きちんと「事件」と「その解決」が描写されていて、しかもそれが「混ざることで色が変わる」という現象に基づいたものであるところ、当時すごくユニークに感じられまして、しんざき自身何百回も鬼リピしてました。
しんざきが「色の変化」というものを覚えたのは間違いなくこの作品の影響でして、小学校の図画工作の時間で絵の具と絵の具を混ぜた時は、「これ絵本で読んだ!」と大納得した次第です。まあ、絵心はあんまり身につかなかったんですけど。
絵柄がシンプルでもちゃんと「キャラクター」と「お話」は作れる、ということを示した作品でもあると思っていて、これにインスピレーションを受けて色んな「お話」を作った子どもも多いんじゃないかなあ、と思う次第です。
いたずらっぽいおじいちゃんのユーモアとほんの少しの怖さ、「ベッドのしたになにがいる?」
こちらは妻のピックアップ。2007年、ジェームズ・スティーブンソンの作品です。
祖父の家に泊まりにいったルーイとメアリーが、怖い話を聞いた夜、目に入るものがなんでもお化けに見えてきて眠れなくなり、おじいちゃんにお話を聞きに行きます。するとおじいちゃんは、自分が子どもの頃、同じように夜眠れなくなった話を始めて……というストーリー。

このおじいちゃんがちょっととぼけた感じの人で、幼少期の描写の筈なのになぜか口ひげが生えていることを始め、大げさな物言いをルーイやメアリーにいちいち突っ込まれています。
「こわいことが起こっているようで、実際には大したことじゃない」という、子どもなら誰でも経験したことがあるような場面が何度も繰り返されます。
絵本の大部分が「おじいちゃんによる語り」であることが「読み聞かせ」としてのひとつのポイントで、「怖い話が始まるのかな…?」と子どもを身構えさせておいて、すぐにオチがついてそれが解除されるというお話の起伏が、しんざき家では大ウケしていたんですね。
「怖い場面」を読む時にちゃんと怖い口調を作るのも子どもたちにとっては楽しかったらしく、しかも妻はそれが超上手い。時には、おじいちゃんの台詞を私が読んで、ルーイやメアリーの台詞を長女や次女が読む、なんてこともありました。妻にとっては、そういう風情も含めての選択だった模様。
文字通り起伏のある展開と、「でかいものをみんなで料理する」ロマン、「もぐらバス」
長男チョイスは、佐藤雅彦さんの「もぐらバス」。
とある町の地下に広がっているもぐらのトンネル、その中を運行しているもぐらバスを、実は街の動物みんなが使っていた…!というストーリーのお話です。

私、この絵本で一番好きなのってこの「トンネルの地図」の描写でして、迷路のような構造が広がっているというだけで十分わくわく感があるんですが、一方バス停の名前が「だれかんちのにわ1ちょうめ」とか、「いぬのいるいえ2ちょうめ」とか、ちゃんと動物視点になっているところもユーモラスかつ妙なリアルさがあって面白い。
この地図自体ちゃんとその後の展開に沿った描写がきちんとされているところもあって、ここを読むだけで宝探しのような楽しさが味わえます。
長男がちっちゃい頃も、なんどもページに指を落として、バスのアナウンスの真似をしながら道路をなぞったりしました。その辺、鉄道好きな長男の血が騒いだ側面もあるのかも知れません。
この絵本、話のオチが「埋まっていた巨大なタケノコを重機で掘り出して、皆で料理して食べる」というものなんですが、ここも当時の長男にはツボだったようで、「ショベルカーで芋煮を作ってるってニュースみた時、まずこのシーンが頭に浮かんだ」って言ってました。
「ぐりとぐら」のカステラもそうでしたが、でかい器ででかい料理を作ることには何らかのロマンがありますよね。
帽子を飾り付けることに「ものづくり」の楽しさが詰まっている、「どんぐりむらのぼうしやさん」
長女の推し絵本。なかやみわさんの、「どんぐりむらのぼうしやさん」。
どんぐりたちの村で帽子を売っていた三人組が、売れ行きが悪くなったので旅に出て、新たな売り場を開拓する、という筋書のお話ですね。
長女は元々ミニチュアとかお人形とか、「小さいもの、細かいもの」が大好きで、かつそれを飾り付けるのも大好きなので、この作品での「帽子を自分たちの好きなようにアレンジする」というのは、好みど真ん中だったようです。
一時期、長女自身、リカちゃん人形やらメルちゃんやら、人形に色んなアクセサリーを手作りしてあげる遊びにハマっていたんですが、その明確なルーツのひとつがこの絵本だったと思います。
「村の中では過去の帽子がもうみんなにいきわたってしまって需要がない」
「既存の帽子にアレンジを加えて、付加価値をつけて売る」
という側面でいうと、実は案外ちゃんと経済活動をしている絵本でもあります。その辺、「視点を変えて違う楽しみ方ができる」というのも絵本の価値のひとつであって、大人になって読み直す時の醍醐味でもあります。
夢の中での奇想天外大冒険、「こんやはどんなゆめをみる?」
次女が選んだのは、工藤ノリコさんの「こんやはどんなゆめをみる?」です。
五匹のこぶた兄弟が、寝る前に「どんな夢をみたいか」について話し合うという設定なんですが、その夢が例えば海賊の大航海だったりジャングル探検だったり南極での釣りだったり、とにかくバラエティたっぷりの大冒険なんですよね。
この絵本の最大の特徴は、「とにかく夢の描写内のこぶた達がすげー楽しそう」なこと。それぞれの「夢」の描写は見開き2ページが丸々使われてたっぷり描写されているのですが、どうもこぶた達の好みは5匹それぞれなようで、みんな夢の各所で好き勝手やっていて、そこに感情移入して「自分ならこの夢の中でどう遊ぶか」を考えるのがとても楽しいらしいです。
様々な地域の描写がある、という点では「旅」「旅行」の楽しさも凝縮されていそうで、その辺は旅行好きな次女の好みも反映されているかも知れません。
文章量はそこまででもないので、読み聞かせの時にちょっと楽ができるというのも、親にとっては密かなポイント。
ということで、しんざき家チョイスとして5冊の絵本をあげてみました。他にも色んなタイトルがあがりはしたんですが、さすがにきりがないのでまた別の機会でも。
私、児童書を読むのは趣味のひとつで、大人になってからも色んな児童書を読んでいるんですが、「絵本」というのもなかなかどうして、今改めて読み直してみると、本当それぞれの面白さがあって超楽しいです。
気軽に読める長さでもありますし、皆様もぜひ、懐かしの絵本を久々に手にとってみていただければ、と思う次第です。
林明子先生の作品をきっかけに、久しぶりに家族みんなで昔の絵本を広げて、ああだこうだ語り合う時間が持てました。
子どもたちは大きくなりましたが、絵本が家族に残してくれた時間は、今でもちゃんと続いているんだなあ、と改めて感慨深かったわけです。
末筆になりますが、林明子先生が安らかにご永眠されますよう、謹んでお祈り申し上げます。
今日書きたいことはそれくらいです。
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(2026/7/8更新)
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
photo:Michael Pointner




