「あぁ、まったく。これだから昭和の婆さんは嫌いなんだよ」

と毒づいては

「いや、そんなことを思っちゃいけない。AIどころかパソコンすらまともに使えない世代では、これが精一杯だったんだ」

と打ち消すことを、1日に10回は心の中でしている。

 

会社の経理担当者が社長夫人とのトラブルで辞めることになり、仕方なく私が経理業務を引き継ぐことになった経緯は以前書いたが、その引き継ぎが始まってから、およそ2ヶ月が経った。

 

辞めることになった前任者はまだ若いのだが、もともとこの会社で経理を担当していたのは70代の高齢女性だったのだ。

ご高齢を理由に昨年ついに退職されたが、経理の業務フローはその高齢女性のやり方がそのままの形で引き継がれていた。

 

「パソコンは苦手だから」と言い、令和になってもまだコクヨのノートに手書き、計算はカシオの電卓が頼りという昭和スタイルで仕事をしている姿を私も見ていたので、ある程度の予想はしていたものの、いざこれまでの業務フローの実態を知ると仰天の連続だった。

「すげぇな」という驚きと、「マジかよ」という苛立ち。それに加えて「またかよ」という腹立たしさと、泣きたいような諦めの気持ちが食道からせり上がってくる。

 

「デジャブかよ。クソがっ!」

と叫んで、引き継いだコクヨのノートを床に叩きつけたい衝動に何度もかられた。

しかし、自分の置かれた状況に絶望せずにいられるのは、「同じ状況をすでに一度乗り切った」経験と、その経験から来る自信があるからだ。私なら、きっとまた切り抜けられる。

私は、前職でもヒドイ目に遭った。その時のことは記事にしてある。

 

この時と違うのは、今の会社はキャッシュリッチで、少なくともお金が足りないという心配だけはないことだ。

では、どこに既視感があるのかというと、頭痛がするほどのどんぶり勘定である。

 

「これをどんぶりと言わずして、いったい何をどんぶりというのか?」と思うほど仕分けがテキトーで、最初に帳簿を見た時は鼻血が出そうだった。

なぜこんなことになってしまうのかというと、昭和世代のお婆ちゃんが紙と鉛筆で仕事をしてきたからなのだ。

 

今どき、クラウド会計ソフトを使えば一瞬にしてできることや、簡単に自動化させられることでも、昭和のやり方で仕事をしていれば、どうしても作業量が膨大になる。

そこで、お婆ちゃんなりに効率化を考えた結果、あるべきものをないことにしたり、まとめてはいけないものをまとめてしまったり、対応しなければいけない法改正を無視してしまったりしてきたのだ。

 

真面目にやっていたら手間が増えるばかりだから、わざとそうしていたのだろう。面倒だから。

 

今回、特に笑ってしまったしまったのが、経費の大部分を「雑費」で仕分けてあることだ。

クラウドストレージの追加料金や、各種SaaSの利用料、ドメイン代が雑費に仕分けされているのは、まだ心情的に理解できる。

Googleが何なのかも分からないお婆ちゃんなのだから、「理解できないものは、とりあえず雑費にしておこう」というルールだったに違いない。

 

けれど、税理士や社労士など士業への支払い報酬も雑費。専門家への業務委託費も雑費。本社からの出向社員たちの給料も雑費。各種会費も雑費。複合機のリース料も雑費。とにかく雑費。なんでもかんでも雑費に放り込んである。

 

いや、これは流石におかしいだろう。誰かツッコめよ。

これに疑問を感じないのだとしたら、経営陣が決算書をまともに読んでいないのが丸わかりだ。

 

よくこの内容で確定申告が通ってきたなと逆に感心するが、代理申告を依頼している税理士は

「まあ、経費は経費ですよ。大雑把にくくればみんな販売管理費なのですから。ちゃんと勘定科目を分けたところで、納める税金の額が変わるわけじゃないですし」

と、のたまう。はぁ? 何だそりゃ? それでいいの?

 

「でも、何でもかんでも雑費にしていたら、決算書が経営分析をするための資料にならないじゃないですか。今の状態じゃ、人件費が一体いくらないのかも正確に把握できていませんよ。

今はまだ黒字だからいいようなものの、今後いざ状況が変わった時、これでは経営の見直しができません。管理会計はどうなります?」

と聞こうとして、口をつぐんだ。

 

愚問である。この会社では、誰も経営分析などしないのだ。管理会計など思いつきもしないのだろう。

ついでに「勘定科目もテキトーなら、税区分の仕分けも間違いが多いですけど、税理士先生は今までいったい何をチェックしていらっしゃったの?」

という嫌味も飲み込んだ。

 

結局のところ、社長が「親の代からの付き合いだから」という理由で顧問を頼んでいる税理士も仕事がテキトーなのである。

テキトーな相手に細かいことを言っても仕方がない。これで通用してしまうのが田舎のレベルの低さというものだ。

 

創業からこれまでに一度も税務調査が入っていないことも、杜撰さが放置されてきた理由だと思うが、調査が入っていたとしても、おそらく運用は変わらなかっただろう。
こういうことは、担当者にスキルがなければどうしようもないからだ。

高度化が進む時代に、複雑な経理処理を70代のパート社員に任せてきたことがそもそもの間違いなのであって、これは担当者個人に責任があるのではなく、経営の問題である。

 

時代に合った適切な知識とスキルを持つ人間に対し、相応しい給料を払おうという意識が経営者にないのだ。

問題点や改善点を指摘しても、危機意識がないので、まともにとりあってもらえない。

「まあ、いいさ。どうせこの会社は遠からず潰れるんだろう」

と、口には出さないが、確信はしている。

 

良い時代に「稼げるシステム」を作り上げ、しっかり金を蓄えてあるので、そう簡単に倒れはしないだろう。

しかし、地道に数字を読み解いていると、徐々に会社の内情が分かってきた。この会社に将来性はないし、すでに翳りは見えている。

 

第一、いまだに平成どころか昭和を引きずっているボケた経営陣が、変化のスピードが増すばかりの令和を生き抜いていけるはずがないのだ。

などと他人事のように思うのは、会社が潰れたところで私個人はちっとも困らないからだ。

 

最近では、紙の帳簿と伝票からクラウドソフトにデータを手打ちで入力しながら、「もういっそ、これを仕事にしようか」などと考えている。

この会社で3年ほど経理経験を積み、その間に日商簿記2級も取ろう。

そして、デジタル化やAI活用の進んでいない中小企業の実務補助を請け負うのもいいかもしれない。

 

もし、私が旅立つ予定よりも早く勤め先が潰れるのだとしたら、ますます面白いじゃないか。

会社は、起こす時よりも潰すときの方が大変だと言うけれど、それはそれで貴重な経験が積めるチャンスだ。きっと、私のスキルと経験値を大いに引き上げてくれるだろう。

ついでに、寄稿記事のネタにも困らなくなって助かるな。

 

 

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(2026/9/16更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

マダムユキ

ブロガー&ライター。

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