筆者は一応医者である。当たり前の事だけど、医者になるためには医学部に入学しなくてはいけない。
ご存知の通り、医学部はなかなかの難関である。国公立の医学部だと、センター試験で九割近い点数を取らないと二次試験を受験する機会すら与えてもらえない。
さて、こんな感じで受験における難関の1つである医学部だけど、じゃあ入学している連中はいったいどういう人間で構成されているのかご存知だろうか?
試験で高得点を叩き出す必要があるのだから、子供の頃から勉強ばかりしていたような人間ばかりが集まってると思っている人も多いかもしれない。が、事実は全くの逆で、実はムチャクチャな努力で医学部に入学するような人間はどちらかというと稀だ。
雑感だけど、9割ぐらいの人間はそこそこの努力で受験をサクッと通過している。
これを読んで「やっぱり頭がいい人は違うなぁ」と思う人もいるかもしれないけど、筆者が医学部に入学して感じた事はそれとはほんの少し異なる。これは日本の社会に存在する見えない階層の差が深く関わっている。
頭のよさは遺伝する
背が高い両親からは、背が高い子供が生まれやすいという事はなんとなくわかるかと思う。
実はこれと同様、知能の高さも子供に遺伝する事がわかっている(更に言うと、人種でも知能の高さは異なる。ユダヤ人やアジア人は概して知的能力が高い民族だといわれている)
シンガポールを大国にのしあげたリー・クアンユー氏はかつて「医者は看護師と結婚するな。医者同士で結婚しろ」という過激な事をいっていたが、輸出する資源を持たない小国であるシンガポールが、生き残る為に高知能な子供を必要とする危機感から生まれた故の発言だろう。
高知能同士の親から生まれた子供は高知能である事が多い。そしてこの生まれ持った高い知性は、高い知性を持つ親により、更に高められていく。あるデータによると、子供が読む本の冊数は親の読む本の冊数に優位に影響を受けるという。
こうして高知能夫婦の家庭に生まれた子供は、既に知の高速道路を走り抜け終わった親による適切なマネジメントにより、割とすんなりと高学歴社会へと入っていく。そして高知能同士で社会を形成し、周りの影響も相まってグングン知能を伸ばしていく。
つまり高知能同士から生まれた子供は、生まれたときから頭の下地はいいし、その後も知能がガンガン向上する素地におかれるのである。
東京の一流進学校の実情
よく「東京の進学校は小さい頃から勉強漬けでかわいそう」というようなことを聞くけども、そういう雰囲気は実際は希薄だ。どちらかというと、みんなで楽しくワイワイやりながらお互いがお互いに勝手に成長していってるという事例が多い。
上記のような、知のスパイラルにのった人間は、普段の生活基盤がかなり知識向上に貢献している。だから普通に息を吸って生活しているだけで頭がどんどんよくなっていく。
これらの東京の進学校に通う学生がいつごろから受験勉強を始めるかというと、大体は高校3年生の夏からと比較的遅い。けどそれで全然間に合ってしまう。それまでに築き上げてきた知性が普通の人間と比較してメチャクチャ高いので、受験勉強なんてものはサラッと終わってしまうのである。
これが医学部に入学する生徒の9割がそこそこの努力でなんとかなってしまう秘密である。文字通り、生まれも育ちも違うのである。
一方、知の高速道路に乗れなかった人間は・・・
実は僕の生まれた家庭は高知能の素地はまったくない。
実家は医者家庭や上場企業の勤務のエリートサラリーマンといった知的階層と全く無縁であり、両親はほとんど勉強なんてしないタイプだ。学校も、上のような知のスパイラルがおきるような場所では全くなく、文字通りほとんど何の勉強もしないで高校3年生になる有様だった。
このように全く素地がない学生が医学部に入ろうとすると、文字通り激烈なまでの努力が必要とされる。両親も友達もまったく参考にならない中で、よくわかないけどひたすら努力し続けるのは、それこそ死ぬほどキツイものがある。
他のライバルの脳スペックが最新のF1カー程度だとすると、あの当時の僕の脳スペックはボロボロの自転車みたいなもんだったと思う。
入学して気がついたけど、医学部には僕のような経歴の人間はほぼ皆無であった。口ではみんな頑張ったと一応いってはいたけども、そこには苦労は全くにじみ出ておらず、僕は入学早々から物凄い疎外感に囚われたものである。
同じ人の形をしていても、自分と他の人間との間にはいいようのない生まれの差を感じ暗鬱な気持ちになった(由緒正しいサラブレッドの中に混じった雑種犬のような気持ちとでも言えばいいだろうか)
現代社会に漂う閉塞感
あまり勉強をしない環境に身をおいている人間が、高知能社会に入り込むのは物凄く大変だ。知識の差は、生まれと育ちという2つの強い要素があり、これらは一念発起して覆そうにも一朝一夕でどうにかなるようなものではない。
現代では知的能力が収入にそのまま結びつくケースが多く、これが格差の固定にも強固に関係している。
かつてのように医者の家庭に生まれないと医者になれないような社会と違って、いちおう医者への道は幅広く開かれている。が、実際その辺の普通の家庭の子供が医者になるのは上記理由につき非常に難しい。
頑張ればギリギリなんとかできなくもないけども、かなり狭い入り口である事もまた事実である。
かつて赤木智弘氏が「希望は戦争」という文を書かれたが、高知能である事が高収入に結びついている今の現状に強い閉塞感を感じる人は非常に多いと思う。
僕は偶然なんとかなったけど、なんとかならなかったら同様の閉塞感を抱えて生きていたであろう事は想像に難くない。閉塞感に囚われた人間が、戦争のような行為がおきる事により格差がリセットされるような事に希望を見出す気持ちは痛いほどよくわかる。
トランプ大統領が生まれたアメリカも、恐らく多くの人が同じような閉塞感を抱えているのだろう。
かの国は、今ではトップ1%の人間が全体の99%の所得を稼ぐような超格差社会に突入してしまっているが、そういう国に住む人間が感じている閉塞感は日本のそれとは比較にならないぐらい大きいであろうことは容易に想像が可能だ。
知能レベルにより生じる格差の拡大はしばらくは収まることはないだろう。こうして私たちは、好む好まずに関わらず、これまで以上に知能超格差社会を経験する事になる。それがいいか悪いかはわからないけども。
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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