最近は自宅にいることが多いので、子供とのやり取りが増えました。

特に5歳の娘は、ここ1年くらいで扱える言葉が急に増えたようで、大人と様々なやり取りができるようになってきています。

 

これはなかなか得難い経験でした。

上の子供のときは、日中、仕事で外に出ていてばかりだったので、わかりませんでしたが、子供との会話が増えると、言葉の発達の過程をつぶさに観察できるのです。

 

特にこのくらいの子供になると増えると感じるのが「質問」です。

小さい子供は「水をくれ」とか「いやだ」とか、自分の欲求の表明が中心です。

ただ、4,5歳くらいになると、複雑な文章が使えるようになり、質問が増えます。

 

「なんで空は青いの?」とか「なんで雷は大きな音がするの?」とか「サンタは家の中にどうやって入ってくるの?」とか。

実際に聞かれると、「おおー、テンプレの質問」と、うれしくなってしまいます。

 

これだけなら、単に「子供の質問にどう答えるか?」みたいな、昔ながらの話です。

とくに問題にもなりません。

 

ただ、現実はもう少し複雑です。

実は、真に回答に詰まる質問は、上のような答えやすい質問、つまり「何を聞かれているかわかりやすい質問」ではありません。

そうした質問は、一緒に調べればいいし、大人の悪知恵で回答をごまかしたりすればいい。

 

そうではなく、答えに窮する質問は、例えば、何の前触れもなく

「これはなんでお母さんが気になるの?なんで銀色なの?」とか。

いきなり聞かれるような質問です。

 

「これ」ってなんだ?

お母さんが何を気にしてたんだ?

銀色?

 

そもそも、質問で何を聞かれているのかが不明という状況のほうが、圧倒的に多いのです。

もちろん、子供に尋ね返します。

「これ」って、何?お母さんが何か気にしているって言ったの?

と。

 

でも、子供ってそれを正確に答えられないのです。

わかっているのか、わかっていなのかは不明ですが、あまりきちんと答えが返ってこない。

「(娘)ちゃん、お母さんが昨日嫌いって言ってたの知ってる。」

とか。

また新しい情報が出てくるんです。

 

結局、「そうかー、嫌いなんだ。」と返すしかない。

「うん、(娘)ちゃんも嫌いになっちゃった。」

「そっかー。」

で、会話が終わる。

 

一体、何の質問だったかは、永遠の謎です。

まあ、特に意味のない質問なのかもしれないですし、話しかけたいだけなのかもしれません。

 

ただ、いつまでもこれでは困ります。

相手に正確に質問をすることは、世の中をサバイブするのに重要な一種のスキルであり、身に着けるべきものだからです。

 

特に学校などでは、質問ができないと損をする。

「ハサミがない」と表明するだけではなく「ハサミを忘れたので、借りられないですか」と、状況を正確に描写したに質問ができれば、困ったときにも適応する術を他者から引き出すことができます。

 

だから、最近は努めて娘に対しても、質問の意味が分からない場合は

「質問の意味が分からないのだけど。お父さんに何を聞いているの?」

と率直に返すようにしています。

 

相手に、質問の意図が伝わっていないことを教えないと、子供がいつまでも

「わけのわからない質問」

を繰り返してしまうからです。

 

自分の欲することを言語化するスキル

ただこれは、必ずしも子供の話だけではないかもしれません。

大人であっても「何を言いたいのかよくわからない人」はたくさんいます。

そして、クライアントから呆れられたり、上司に指摘されたりしてしまう。

 

ですから「自分が何を欲しているのか」を明確に定義できるというのは、重要なスキルです。

ほしい。

売りたい。

付き合いたい。

改善してほしい。

待遇に不満である。

一緒にやりたい。

こうしたことをうまく言語化できないと、人生のあらゆるシーンで、損をする可能性が高いのです。

 

前にこんなツイートを見ました。

主人公が「ふわっとしたあこがれ」を持っているのに、何もしないで現状に愚痴ばかり言っている漫画に対しての感想です。


このツイートの主は、努力不足を責めていますが、私としては「主人公が、欲求を明確に言語化していない」部分に起因しているように見えました。

 

なぜなら、欲求のレベルが高いほど、明確な言語化を必要とするからです。

「喉が渇いたのでジュースが欲しい」くらいなら、大人ならなんとなく達成可能です。

自分だけで、簡単にできますから。

 

でも

「部門の目標を達成したい」

「望むキャリアを得たい」

「理想のパートナーが欲しい」

という高度な欲求になってくると、言語化し、明確に指針を作って他者に動いてもらわないと目的を達成することができません。

幼い子供と違って、泣いても誰も何もしてくれないのです。

 

実際、私が、コンサルティング会社で働き始めて習ったことの一つに、暗黙のルールを言語化することの大切さ、と言うものがありました。

とにかく、他者を動かす仕組みというのは、言語化、文書化、そして記録の嵐なのです。

 

さらにトラブルの解決にあたっても明確な言語化が欠かせません。

問題は何か。

我々に何ができて、何ができないか。

今できることは何か、優先されるべきは何か。

何をもとに意思決定するか。

手元にあるデータは何か。

そうしたことを明確にすればするほど、トラブルにうまく対処することができます。

 

キャリア形成も、資産形成も、人生も、自らの「願望」がはっきりしている人は、とても強いです。

「欲しいものがない」と言う発言。

「やりたいことがない」という発言。

これらは、たいていの場合、欲求を感じていないのではなく、欲求の言語化が不足していることに起因します。

 

欲しいものがなく、やりたいことがない状態の人と、欲しいものがあり、やりたいこともある状態の人。

競争においては、後者が必ず勝ちます。

「やりたい」「ほしい」を具体化し、道筋を決めた人物しか、それを入手できないのが、世の常。

幸運は、勝手に転がり込んでくるわけではありません。

 

思い通りに生きることを欲するなら、

·望む幸福

·望む仕事

·望む生活

などは、必然的に明確にしなければならないのです。

だから、「日記」などをつけている人は、こういう時にとても強いです。

 

スキルならば練習でに身につく

ただし、大事なのは、これらは「スキル」なので、練習で身につくという事実です。

とくに「書く」行為によって身につく。

 

ここにおいては、才能などはあまり関係がありません。

重要なのは考え方です。

特に、言語化の巧拙というのは、「まとまったから書ける」ではなく「書いたからまとまる」という考え方を持っているかどうかが、練習量に大きく影響します。

 

ですから、「書きだしてみなよ」というアドバイスに、素直に従うかどうかが結構重要です。

そして、幸いなことに日本人で読み書きできないは、ほとんどいない。

言語化はほぼすべての人に「身に着けることができる可能性がある」スキルです。

 

話が大きくそれました。

子供の質問に話を戻します。

 

昔、しんざきさんがこんな記事を書いていました。

「こういう子はほぼ100%伸びた」というパターンの話

何かを理解出来た時に「先生、じゃあこれはどうなの?」と聞ける子で、救い上げられなかった子は一人もいません。

私はこれを、「興味が連鎖する子」と呼んでいて、塾の中でもそんな風に共有していました。

つまり、

・何か一つのことが分かった時、それだけで満足しないで、次の疑問に発展させることが出来る子。

・一つの興味が満たされた時、更にその次は、という興味を見つけられる子。

・更に、それを大人に聞くことが出来る子。

 

これ、言葉にしてしまえばたった三行なんですが、本当に色んなものに繋がってくる話だと思うんですよ。

(太線は筆者)

何にも興味を持たない子は少ないと思います。

ただ、質問をするスキルは、先に述べたように、聞き返してあげたり、紙に書いてもらったりと、子供のうちは、大人が面倒を見てあげないと、なかなか育たないかなとも思いますので、ここは親の責任において、面倒がらずにしっかり対応しようかな、と思います。

 

最後に。

「言語化スキルなんぞなくても、幸せになれる世の中がいい」

という人がいると思います。

全くその通りです。私もそう思います。

でもそれこそ、道筋をつけて、実現に向け計画を作って動かないといけないやつです。多分。

 

 

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(2024/12/6更新)

 

 

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