少し前に、大学生の「就職活動」についての相談に立ち会った。その時に思ったことがあったので記す。
彼は、私の友人に「どういう会社を受けたら良いか?」と聞いた。行きたい業界、やりたい仕事などは特に無いとのこと。
まあそうだろう。就きたい職業が明確に決まっている学生は相当レアで、ほとんどお目にかかったことがない。会社の内情など、誰も教えてくれないのだ。
彼は、「とりあえず、給料が高く、ネームバリューのある会社から順番に、手当たり次第に受けておけばいい」と、答えていた。
学生は、「無責任な発言だなあ」と言わんばかりだ。
彼は言う。「就職活動において、「最も後悔することの少ないやりかた」が今言ったことだ。就職活動の典型的な「苦労するパターン」って、知ってるかい?
まず、序盤に会社を絞り込みすぎて、大手や有名どころをあまり受けない。また、「自分には無理だ」と最初から諦めてしまう。
そして、中盤に入り、内定をもった友人がちらほら出てくる中、焦って手当たり次第に受けるが、面接などの経験値が足りず、落ちて自信なくす
最後に、夏を迎え、優良企業が軒並み採用活動を終えた中、「あまり待遇の良くない企業」を回らなければいけなくなり、やる気を無くす。」
彼は、最後にこう言った。
「だから、これを回避するために必要なのは、「序盤に実戦で面接やグループディスカッションの練習をたくさんする」ことだ。面接なんて、やればやるほどうまくなる。
とりあえず序盤にスタートダッシュし、落ちてもともと、と思ってたくさんの会社を受けることで、就職活動の練習をする。そして、中盤を迎えた時に、どこかの会社に引っかかる。
これがおそらく一番確実に、それなりの会社に就職できる方法だ。」
彼が話し終わると、学生は「でも、「それなりの会社」には入れますけど、いわゆる「超有名企業」は無理ですよね?」と尋ねてきた。
彼は、「そうだね」と短く答えた。そして彼は、「超有名企業に入りたいと思っているの?」と聞いた。
学生は、「その方法が知りたいです」と言った。
余談だが、人手不足の世の中とはいえ、「超有名企業」に入るのはやはり難しいようである。
就職四季報総合版には「就職人気企業ランキング300社」が掲載されており、その上位企業の倍率を見ると、丸紅82倍、カゴメ308倍、味の素267倍、森永乳業533倍、東レ213倍などとなっている。
大学入試よりもはるかに厳しい倍率が並んでいる。
彼は、学生に言った。「確実に超有名企業に入るなら、コネを探すほうがいいよ。」
学生は「コネなんて、あるのかなあ…。もっとまともな方法はないんですか?」
彼は「コネが一番まともな方法だ。実際、マスコミや広告、金融、製造業など、ほとんどの超有名企業が縁故採用をしている。」
学生は言った。「コネがない人は、どうすればいいんですか?」
「どうしようもない。でも、目の前の面接官を楽しませることだけを考えていれば、どこかに引っかかるかもしれない。でも、保証はできない。」と彼は言う。
「なんだか、不公平ですね。」
彼は、暫く黙っていたが、それを聞いて静かに答えた。「公平な条件でできる競争なんて、スポーツくらいだ。」
学生は頷く。
彼は続ける。「これから出る「社会」は、ルールもわからず、公平でもなく、努力が報われるかどうかもわからない競争ばかり。その最初の競争が、就職活動だ。だから、できるだけ早く就職活動を始めて、出来る限りたくさんの会社を受けることで経験を積んで、「ルール」を理解するんだ。使えるコネや人間関係はなんでも使え。」
そのやりとりを聞いて、私は
「就職活動って、仕事と同じだな。頭を切り替えられる学生が、うまくいくんだろうな。」
と思ったのである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58