企業は採用面接で「コミュニケーション能力」を最重要視することは正しい。なぜなら今は、コミュニケーション能力の高い人物が公私に渡ってにおいて非常に得をする時代だからだ。

例えば顧客との折衝、人脈の獲得、学業におけるコラボレーション、果ては恋愛におけるパートナーの獲得まで、様々な所で、相手の気持を汲み、適切な発言と行動を選択する「コミュニケーション能力」が必要とされる。

人間の3大能力は、身体能力、知力、そしてコミュニケーション能力だ、と言う方もいるくらいだ。

 

だが、逆に言えばコミュニケーション能力の低い人にとっては大変厳しい時代とも言える。

コミュニケーション能力を駆使して有利に立ち回る人物がいる一方で、頼れる人が少ない、相談できる人がいない、友達がいない、と人間関係のネットワークから排除され、身動きが取れなくなる人が大勢いる。

 

彼らは助けを求めることもヘタだが、助けてくれようという人とすらうまくコミュニケーションが取れず、孤立を深めていく。

そして、しばしば、「貧困」「失業」あるいは「人間関係の破綻」などの深刻な事態を引き起こす。

 

しかも、これらの状況は、周囲の人々が救ってあげることが非常に難しい。なぜなら「コミュニケーション能力の低さ」は自覚が難しいからだ。

言い換えれば、「コミュニケーション能力が低い人は、それを自覚できないからこそ、コミュニケーション能力が低い」とも言える。

 

———————————-

 

私の知るだけでも、知的能力が高く学歴も良いのだが、著しくコミュニケーション能力の低い人物が数名いる。

そして彼らに共通する課題は「伸び悩み」である。それなりの成果は出すのだが、それらはすべて「まあまあ」という程度に留まってしまう。

彼らは知的能力や学歴が高いがゆえになおさら「正当な評価を受けることができていない」とギャップに悩む。

 

たとえば、かつて自分を助けてくれた恩人と、必ずトラブルを起こして絶縁していくフリーランスの方がいる。

彼とその周辺の人物から話を聴くと、全ての原因は「その人物のコミュニケーション能力の低さ」にある事がよくわかる。

 

例えば、サラリーマン時代の上司は、「才能はあるが、周りに敵を数多く作る」ことを知っていたので、独立しても彼を助けたのだが、彼がたびたびトラブルを引き起こすので、

「このままだと、大した仕事ができないよ。もう少し人の指摘に素直にならなきゃダメだ。」と彼にいったところ、

「お言葉ですが、あのクオリティの仕事しかできない人たちの指摘は聴いても仕方ありません。」と返された。

 

それでも元上司はなんとかもう少し広い視野を持ってほしい、と考え、

「それはそうかもしれないが、彼らにも良いところがあるし、前回やった仕事は世間的にも非常に評価されている」

と諌めると、彼は「なぜ私の仕事にケチを付けるんですか」と言い、怒って帰ってしまった。その後、彼とは連絡が取れないという。

 

元上司は

「彼はもう少し柔軟かと思っていたのですが……。私の言い方がマズかったのでしょう。」

と言い、

「彼が自分自身のコミュニケーション能力が低い、と自覚さえしてくれていれば、なんとでもやりようがありますが、「コミュニケーション能力が低いのは周りであって、自分ではない。自分が評価されないのは、彼らのせいだ」と言われると、もう如何ともしがたいです。」と語った。

 

このように、彼らはすべて、自分のコミュニケーション能力の低さに関して、ほぼ無自覚である。

いや、むしろ「自分は能力が高いのだから、コミュニケーション能力も同じように高い」と信じて疑わない。それに反して、周りの人物は「あの人、頭はいいけど残念だよね」という評価がほとんどだ。

 

コミュニケーション能力の本質は「自分自身を俯瞰する能力」である。

 

・自分の発言に対して相手がどのような印象を持つのか

・相手の価値観と自分の価値観の相違は何か

・自分にとっての正義がどれほど相手にとって受け入れられるのか

 

上のようなことに想像が及ばなければ、知的に優れ、合理的な判断を下せる人物であっても、「コミュニケーション能力」はお粗末なものとなってしまう。

むしろ、逆説的ではあるが

「所詮人と人は分かり合えない、そして自分は更にコミュニケーション能力が低いのだから、相手のことを誤解しているかもしれない」

と、常に思える人こそ、本当は最もコミュニケーション能力が高いのである。

 

知的に優れているのにコミュニケーション能力が低い人。彼らこそ、何より残念な人たちだ。

良い人と巡り会い、その人物が彼らのコミュニケーション能力の低さを補完してくれることを祈るのみである。

 

 

【お知らせ】
「記憶に残る企業」になるには?“第一想起”を勝ち取るBtoBマーケ戦略を徹底解説!
BtoBにおいて、真に強いリストとは何か?情報資産の本質とは?
Books&Appsの立ち上げ・運用を通じて“記憶されるコンテンツ戦略”を築いてきたティネクトが、
自社のリアルな事例と戦略を3人のキーマン登壇で語ります。



▶ お申し込みはこちら


こんな方におすすめ
・“記憶に残る”リスト運用や情報発信を実現したいマーケティング担当者
・リスト施策の限界を感じている事業責任者・営業マネージャー
・コンテンツ設計やナーチャリングに課題感を持っている方

<2025年5月21日実施予定>

DXも定着、生成AIも使える現在でもなぜBtoBリードの獲得は依然として難しいのか?

第一想起”される企業になるためのBtoBリスト戦略

【内容】
第1部:「なぜ“良質なリスト”が必要なのか?」
登壇:倉増京平(ティネクト取締役 マーケティングディレクター)
・「第一想起」の重要性と記憶メカニズム
・リストの“量”と“質”がもたらす3つの誤解
・感情の記憶を蓄積するリスト設計
・情報資産としてのリストの定義と価値

第2部:「“第一想起”を実現するコンテンツと接点設計」
登壇:安達裕哉(Books&Apps編集長)
・Books&Apps立ち上げと読者獲得ストーリー
・SNS・ダイレクト重視のリスト形成手法
・記憶に残る記事の3条件(実体験/共感/独自視点)
・ナーチャリングと問い合わせの“見えない線”の可視化

第3部:「リストを“資産”として運用する日常業務」
登壇:楢原 一雅(リスト運用責任者)
・ティネクトにおけるリストの定義と分類
・配信頻度・中身の決め方と反応重視の運用スタイル
・「記憶に残る情報」を継続提供する工夫

【このセミナーだからこそ学べる5つのポイント】
・“第一想起”の仕組みと戦略が明確になる
・リスト運用の「本質」が言語化される
・リアルな成功事例に基づいた講義
・“思い出されない理由”に気づけるコンテンツ設計法
・施策を“仕組み”として回す具体的なヒントが得られる


日時:
2025/5/21(水) 16:00-17:30

参加費:無料  定員:200名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
こちらウェビナーお申込みページをご覧ください

(2025/5/12更新)

 

Books&Appsで広報活動しませんか?

 

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥509(2025/05/15 13:30時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング112,669位

Paul Morgan