肥満は伝染するという話をご存知だろうか?
これは2007年にハーバード大学のニコラス・A・クリスタキス教授らが発表した研究結果なのだけど、太った友達が身近にいると、2~4年以内に自分自身も肥満になる確率が最大で171%も増加するのだという。
この肥満の伝染だが、一般的には肥満体質の人と親しければ親しいほど伝染しやすいようで、同性の友人、兄弟・姉妹が特に影響力が強いという。
この原因としてニコラス教授は「恐らく近くにいる事で食生活などが知らず知らずのうちに影響を受け、似通っていく事が元となっているのだろう」と述べている。
言われてみれば確かにという気がするが、改めて指摘されると感慨深い現象であるといえよう。
僕がこの研究結果を知って一番初めに思ったのは「果たして人間の意志はどこまで自由なのだろうか」という事だった。
普段、私達は好きなものを選んで好きな量を食べていると思っているかもしれないけど、ニコラス教授の研究結果をみるに、事はそう甘くないのではないかと思ったのである。
麻薬依存症ですら環境次第で抜け出せる
「自分の意思は自分の力でコントロールできるものだのだろうか」
この疑問はある報告書を読む事で、更に深まる事となった。
かつてアメリカとベトナムとの間で激しい戦争があった。
このベトナム戦争時、アメリカ兵の約50%が戦争の辛さから逃れるために麻薬を使用していたといい、うち20%の兵士は深刻な麻薬依存症に侵されていたという。
さてここであなたに質問をしよう。ベトナム戦争が終結した後、アメリカ本国に戻った退役軍人のうち、何%の人が帰国後も麻薬を使用していたと思うだろうか?
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答えはなんと1%以下である。ちなみにこれは、アメリカ人の平均的な麻薬の使用率とほぼ同様であるという。
僕はこの報告書を読んでおったまげた。かつて「麻薬を一回でも使ったら廃人になる」というキャッチフレーズを何度も何度も聞かされていただけに、「こ・・・こんな事があっていいのだろうか」とそれこそ膝から崩れ落ちるぐらいの衝撃を受けたといっても過言ではない。
その後、上の2つ以外にも様々な研究結果を読んだけど、どれもこれも言っていた事は全て同じような事であった。
結局、人間は環境の奴隷なのだ。意思とか気合とかではどうにでもならないものが私達を動かしているのである。
自分を変えるためにはどうすればいいか
肥満も麻薬依存症も環境次第なんだから、その他の事も環境さえ変えればかなり改善が見込めるだろう事は想像に難くない。
じゃあ実際問題、私達はどうすればいいのだろうか。
環境を変えるといったって、実際問題、環境なんて様々なファクターがあるし何を変えればいいのかなんてわからないだろう。
ここで1つ参考にある意見がある。元マッキンゼー日本支社・社長の大前研一さんによると、以下の3つの方法で人は変われるという。
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人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目は付き合う人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。
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これは実に含蓄深い指摘だ。上のネットワーク理論と合わせて考えても、最も合理性のある言葉だろう。
例えば1番目の時間配分だけど、例えばあなたが退社して、毎日30分だけ会社近くの喫茶店によって勉強する習慣を導入したとしよう。
これを継続したら、たぶんあなたは凄く成長できる。
もちろん数日単位では何も変化は起きないだろう。けど、これが1ヶ月、1年と続いたとしたらどうだろうか。
一ヶ月なら10時間、1年なら120時間もの勉強時間を捻出できる。
120時間もの時間を勉強に当てる事ができらた、下手したら100冊近くの本は読めるはずだ。
2つ目の住む場所というのも非常に強い環境因子だろう。
例えば、あなたが学校や会社の近所の家に住めば、睡眠時間を今よりも遥かに増やす事ができるだろう。
睡眠は最高の万能薬だ。きっと体調はすこぶる良くなるだろう。
これの逆の事をして生活を改善する事もできる。
僕の知り合いに、電車の始発駅近所に住んでいる奴がいるのだけど、彼は毎日通勤電車の中で座って往復で2時間近く本を読むのだという。
この習慣を導入した事で、彼はこの5年間で見違えるほどの成長を遂げる事に成長した。これも住む場所を変える事で成功した一事例だ。
3番目は付き合う人を変えるも秀逸だ。例えばあなたがもしモテたいのなら、非モテ連中と「なんで私達はモテないんだ」と傷を舐め合うよりも、モテまくってる人となんとかして友達になって、その習慣を自分の身体に叩き込んでしまうのが一番だろう。
ネットワーク理論も立証している通り、結局人間は環境の奴隷なのだ。
モテている奴のマネをすれば、あなたも必然的にモテるようになる。無駄なこだわりや自我、プライドを捨て去ってマネに徹すれば、あなたも必ずといっていいほどモテるようになる。これはもう、間違いない。
ちなみに僕は仕事ができるようになる為にこの理論を導入した。
これは学生時代にコンサル会社勤務の方から聞いた話なのだけど、人の能力値はその人の所属する組織の平均値とほぼ等しいのだという。
もちろん中には仕事が凄く出来る人もいるし全然できない人もいるけども、全体を総じてみると結局のところ、全体の平均値と組織人の仕事能力はほぼ比例してしまうそうなのだ。
ということはである。逆説的にだけど、そこの組織でなんとか食らいついていく事さえできれば、その職場の平均的な存在ぐらいにはなれるんじゃないかと思ったのである。
で、気になる結果だけど、確かに自分の仕事能力は所属する組織の平均とほぼ比例しているなと感じている。
自分はそこまで物凄く自己研鑽をしているわけではないけども、何故か結果的に”組織の中の平均値”ぐらいには成長できている。
さしたる特殊な訓練もせずに組織の平均的な存在に達する事ができたのは、所属する組織の空気が最大の要因だろう。
人は職場に通って空気を吸いさえすれば、1人であーだこーだやってるよりも遥かに成長できるのだ。
影響力って、凄いと思いませんか?
このように環境次第で人はこんなにも変われるのだ。あなたも是非、自分によい環境を選択して欲しい。
大前研一先生もおっしゃってるではないか。決意をあらたにしても何も変われないのだ。そんな無駄な事をするぐらいなら、ぱっと所属する場所を変えてしまえばいいのである。
時間と場所と付き合う人を変えるだけで人は変われる。人が真の意味で自由に選べる場所は、そこしかないのである。
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