1週間ほど前に、おもしろいツイートが回ってきた。
これほどまでに人々を陰鬱な気持ちに陥らせる画像が、今まであっただろうか pic.twitter.com/Av9LNVkdRi
— さい (@saiculture) 2015, 1月 10
受験勉強を始める子供に見せる画像(本当なのだろうか?)のようだが、よく出来ているな、と感じる。「子供の頃から勉強して、いい学校に入って、良い企業に就職すると、一生安泰だよ」というメッセージを伝えているのだろう。
さて、この画像の中で注目したいのが40歳の「もうここからは人生は変えられない」という一言だ。これを読んで、ある方の話を思い出したので、それを書こうと思う。
私は以前、殆どの社員が50歳以上、という会社に訪問したことがある。社長はすでに65歳を超えており、役員も軒並み60歳以上、普段はむしろ20代、30代の方々が多くを占める企業ばかりに訪問していた私としては、全く異質の会社であった。
若手の全くいない会社の社長にお話を聞くのははじめての経験だ。私は社長に素朴な疑問をぶつけた。
私 「若手が全くいない会社にご訪問するのは初めてです。」
社長 「そうでしょう。他にはあまりないと思います。」
私 「なぜ若手が全くいないのですか?」
社長 「カンタンですよ。採用していないからです。」
私 「採用していない…?」
社長 「そうです。ウチでは50歳以上の人しか採用しません。」
私 「…!!」
社長 「不思議ですか?普通に考えればそうですよね。でも、採用にはちょっとした基準があるんです。」
私 「どんな基準ですか?」
社長 「人生を変えたい、という人だけを採用しています」
私 「50歳以上で、かつ人生を変えたい人、ということですよね…?変わっていますね…!」
社長 「そうでしょう。普通は「人生を変えたいなら、若いうちにやらないといけない」って言われてますからね。でも、人生を変えるなんて、誰でも、いつでもできるんです。」
私 「……ぜひ、そのお話、聞かせていただけないですか?」
社長 「いいですよ。」
社長 「安達さん、私は社員にいつも言っているんです。人生を変えるには、ほんのちょっとのことを知るだけでいいんだ、と。」
私 「はい。」
社長 「一つ目、人生を変えるのは、一発逆転の出来事ではなく、些細な日常の習慣です。「続けること」そのものに価値があります。例えば、「早起きする」であったり、「通勤時間に必ず本を読む」でもいい。仕事も同じです。電話を毎日10本する、であったり、お客さんにこころをこめてメールを書く、でもなんでもいいです。とにかく、小さい習慣から人生は変わります。」
私 「でも、大きくは変わらない気もしますが…」
社長 「そう思いますか?電話を毎日10本かけた社員は、トップ営業になりました。こころをこめてメールを書いた社員は、リピート率No.1です。2年もすれば、誰にでも自信が生まれます。」
私 「…」
社長 「とにかく、何かを続けることが出来た、という実績が人生を変える第一歩です。」
私 「確かに…そうですね。」
社長 「二つ目、先ほどの習慣が意識せずにできるようになったら、次の習慣に挑戦する。なんでもいいから、常に新しいことを始めることです。」
私 「なんでもいいんですか?」
社長 「本当に、なんでもいいです。挨拶を欠かさない、でも、9時を過ぎたら食事を慎む、でもいいです。自分が前から気にしていたことをやればいいんです。」
私 「確かに…私もやりたいとおもっていたこと、あります。」
社長 「ここまで、だいたい皆5年かかります。でも皆、見違えるようになりますよ。」
私 「でも、習慣を続けられない人もいるんじゃないですか?」
社長 「そのとおりです。そこで、三つ目、一つ挫折したら、次のものを設定する。無理して出来ないことを続けない。失敗は、それ自体がノウハウです。習慣には自分に合うものと会わないものがありますから、ムリはしない。重要です。先ほどの「電話をかけ続ける」という社員は、そこに辿り着くまでに二回ほど挫折していますよ。何かができない、ということについて、罪悪感を感じる必要は全くありません。「できないこと」がわかることは大事です。」
私 「なるほど…」
社長 「四つ目です。決して他人のせいにしない、ということを守ってください。他の人のせいにするということは、自分の人生を自分で決めていない、ということです。」
私 「嫌な上司のせいであっても?」
社長 「ハハッ、そうですね。仮に上司のせいであっても、自分のせいであっても、結果は同じですから、悩むだけ時間の無駄でしょう?」
私 「…」
社長 「五つ目です。人に親切にする、ということを守ってください。」
私 「普通ですね。そんなのでいいんですか?」
社長 「もちろん。大事なことです。すべての変化は、人に親切にすることから始まるんですよ。安達さんは、電車でお年寄りに席を譲ってますか?」
私 「むー…。」
社長 「最後です、「人生を変えようと思った時点で、既に人生は変わり始めている」と思ってください。」
私 「…どういうことでしょう?」
社長 「50歳で人生を変えたい、という決意がどれほどのものか、安達さんに分かりますか?」
私 「相当の決意、ということでしょうか。」
社長 「そうです。だからこそ、私は50歳以上を面接する、そして、今の話に賛同していただいた方々だけを、採用するのです。私は、そういう方々をリスペクトしているのですよ。」
中年になったら人生は変わらない、とか、人生を軌道修正するにはとてもエネルギーが要る、といった言説を見る度に、私はあの社長の言葉を思い出し、「そんなことは決まってない」と思い返すのである。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
筆者Twitterアカウント安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
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