コンサルタントの仕事は、「人に教える」仕事と思っている方が多いかもしれないが、実際には様々な人に意見を聞いて回る仕事だ。

というのも、人は自分のやりたい事しか真面目に取り組まないので、「自分が何をしたいのか」をはっきりさせてもらうために我々は意見を聞いて回る。

 

だが、絶対にやってはいけないことの一つが、「人の言うことを鵜呑みにすること」だった。なぜなら人は意図的に、あるいは無意識に事実と異なることを言うからだ。

 

あえて語らず隠す

本気でそう思っているわけではないが、体裁のため言う

自分の利益のために言う

他者を利用するために言う

よく知らないが適当に言う

 

時には自分の本心を隠し、いかにも「協力しますよ」と見せかけながら、妨害を仕掛ける方も数多く見てきた。そしてそれは、地位の高い人にも、低い人にも等しく存在する。

特に、頭の良い人物は巧みな話術であからさまには嘘をつかない。少し匂わせる程度の話でこちらを操ろうとするので非常に厄介である。

 

したがって、我々は発言の裏を必ず取る。

利害の対立する方々の言うことが一致していればそれなりに信憑性の高い話であると判断できるが、ほとんどの場合は立場が異なれば言うことが異なる。

「お互いが、お互いをどう見ているか」を両面から見て初めて、何が起きているかを客観的に判断できる。

 

代表的な例をいくつか挙げてみよう。

 

「◯◯さんが言っていた。」という発言を聞いたとき

おそらく嘘ではないが、本人のバイアスが確実にかかるので、◯◯さんにそれとなく確認する。

 

KPIや経営指標などの数字を見せられて、説得されたとき

どこから持ってきた数値なのかを確認する。どのように計測したのかを知るまでその数字を使ってはいけない。実際のところ、計測方法次第でデータは簡単に操れる。

データを信じて動き、その結果「ああ、その数字は使えないですよ」と言われた苦い経験がある人も多いだろう。

 

「みんなやっている」という発言を聞いたとき

「みんな」とは具体的に誰かを確認する。「私も話をお聞きしたいので、該当する方を教えて下さい」と必ず確認する。裏を取ると実は「みんな」ではないことがわかる。

 

資料を見せられたとき

誰が作ったものなのかを確認。その後、本人に誰に向けて作成したのかを確認。大体は口当たりよく加工されている。

 

「ルールだから」と言われたとき

権限を持っている人に、本当にルールか確認。すると結構な割合で「それはルールではない」と言われる。

 

「◯◯をやりたい」と言われたとき

まずは、誰かにそう言わされている可能性を確認する。なぜそう思ったか?どこまでやりたいか?いつまでやりたいか?を聞く。

具体的であればあるほど、言わされている可能性は低い。

 

「本に書いてあった」と言われたとき

当たり前のこととして、出典を確認し、元ネタをあたる。

 

「上からの指示だった」と言われたとき

「上」の名前を確認。その人に直接問い合わせる。半分程度しか伝わっていないケースが多い。

 

「この仕事は、やりがいがあります」と言われたとき

一つ一つの仕事の納期遵守率を見る。遵守率が高ければ信憑性がある。

 

「課題だと思っている」と言われたとき

今実際に課題を解決するために何をしているかを聞く。何もしてないときには実際には「課題」ではない。

 

 

もちろん、ここに挙げたことは基本中の基本である。

世の中には様々な人がいる。人を信じるのも良いことではあるが、常に「自分で考えて、本当かどうかを検証する」クセも必要ではないかと思う。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

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(2025/6/2更新)

 

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(Photo:Nimish Gogri