苦労している方には申し訳ないと思うのだが、就活の時期は大変面白く、エキサイティングなことが数多く起きる。
普段、社会人とあっていると気づかない、当たり前だと思っていたことや、単なる習慣でやっていたけど、実はあまり意味のなかったことなど、学生の方々から意外な気づきをを得る良い機会となるからだ。
こんなところでも「いろいろな価値観に触れることは大事だな」と思う。
さて、今シーズン最初の面接で、面白いことがあったので書いてみたい。
ある学生の面接に同席した時のことだ。
この会社は志望の動機や学生時代にやっていたことを聞き、一通りその学生のイメージの大枠を掴んだ所で、次に「得意だと自分で思っていることは何ですか」と月並みな質問をする。
自分の強みと、他者が見る強みはかなり異なることが多く、次は「友達からは何が得意だと思われていますか?」と聞こうと思ったのだ。
どの当たりまで自分を客観視できる人かという、判断材料にもなると彼らは考えていたようだ。
この学生はすぐに
「はい、「どんなことでも楽しくできること」が得意です。」と答えた。
それを聞き、明らかに面接官が「また同じような回答か……」と失望したような表情をした。テンプレート的な回答なのかもしれない。
だが、役員の一人は表面的な回答だけで判断をしない人物だ。
その役員は続けて聞いた。
「例えば、袋詰めのような単純作業や、飛び込み営業のような敷居の高い活動であっても、楽しめるということでしょうか?」
学生は答えた。
「はい、自信があります。方法論がありますから。」
役員はこの回答をとても面白い、と思ったようだ。続けて質問をした。
「その方法論を教えてもらうことは出来ますか?」
「はい、まず楽しさの本質は、チャレンジにあると思います。私は学生時代、ゲームを作っていたので底は確信を持って言えます。ゲームは、適切なチャレンジをユーザに設定することで、楽しさを継続します。」
役員は頷いている。
「つまり、袋詰めという単純作業を楽しめるかどうかは、袋詰めの中に幾つかのチャレンジを設定する必要があると思います。」
「なるほど、具体的には?」
「スイマセン、実際の作業がわからないので想像で語りますが、袋詰めの綺麗さ、スピード、あるいはもう少し細かい「手順の改善活動」などにも挑戦の要素があると思います。
自分のスキルの程度を見て、適切なチャレンジを幾つか用意しておけば、かなり楽しめるのではないでしょうか。」
役員は感心している。
「キミはゲームづくりからそういったことを学んだのですか?」
「そうです。仲間に自作のゲームをやってもらうと、すぐに反応が返ってきます。チャレンジのレベル設定がゲームバランスそのものですから、重要です。」
「実際、ゲーム作成以外にその方法論を適用したことはありますか?」
「はい、スーパーのアルバイトや引っ越しなどでもやりました。さして難しくないので。」
結局、この学生は面接に合格した。
こういう回答を今ここで思いついたとは考えにくい、恐らくかなり考えてきたのだろう。私は、この面接から非常に多くのことを学んだ。
もっとも感心したのが、「楽しくない仕事が会社にはたくさんある」という事実に正面から取り組んでいるその姿勢だ。社会人でもどれくらいの人がこれをできているか。
やはり、人を年齢で判断してはいけない、と感じた次第である。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))
・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps (フェイスブックではシェアしない記事も扱います)
・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
- 日本実業出版社
- 価格¥2,005(2025/07/12 14:25時点)
- 発売日2015/07/30
- 商品ランキング58,364位
【お知らせ】
当メディアは書き手を募集しています。実名、匿名のどちらでも可ですが、長期的に記事を書いていただける方が望ましいです。
・テーマ
原則自由ですが、必ず「体験談」もしくは「事例」を含んだものとしてください。当メディアは文章の巧拙よりも「書き手の人間性が読み取れること」を重視しています。
・その他
報酬はご経験、記事の質などにより、個別に設定しています。
・応募方法
blogあっとtinect.jpまで、簡単な経歴、応募動機およびこれまでに執筆した実績(ブログ、記事など)が確認できるリンクをお送り下さい。採用の可能性がある方へは1週間以内にご返信致します。