すこし前、ある会社で改革が行われた話を伺った。新社長は低迷する業績への対策のために思い切った異動とリストラを進め、会社を立て直すことに成功した。

だが、その道程は苦難に満ちていた。特に、新社長に反対する勢力の取り扱いについては。

 

新社長はこのように言った。

「私に賛成してくれる若手たちは、放っておけば良い仕事をしてくれました。価値観を共有できていたからです。しかし、反対勢力の処遇は非常に困りました。」

「全員クビにしたのでしょうか?」

「いや、そんなことはしません。全員辞めさせてしまっては、私の周りはイエスマンだけになってしまう。健全な反対派はむしろ会社を活性化する。粛清は手っ取り早いが、その後に人材が残らない、というケースも多い。」

「なるほど」

「辞めさせるべき反対派と、残すべき反対派は全く違う。会社は民主主義ではないから、辞めさせるべき人物は排除する。けど、良い人は残すようにする。彼らは尊重すべきです。私のやり方に反対である、というだけでひとくくりにはできない。」

「では、その2者でどのようなちがいがあるのでしょう?」

「いくつかある。よく彼らの主張に耳を傾ければ、そのちがいは歴然としています。」

「具体的にはどのようなものか、教えていただけないでしょうか」

社長は述べた。

「一つ目は、私の政策に対して反対意見を言っているならいいのだが、私の「人格」に対して何かを言う人物。これは排除する。おそらく折り合いがつかない。

二つ目は、意見が理想的な人物は排除する。愚痴ばかり言って、自らの発言に責任を持たない人物だ。だが、「現実的」「実務的」な人物は残す。これは対案を出しているからむしろ有能です。

三つ目、無知は排除する。無知な人物は勉強もせず、向上心もない。単に感情的に反対しているだけです。逆に深謀遠慮のある人物は必ず根拠を示して反対意見を述べる。彼らは残す。

四つ目は社内向きは排除する。「◯◯さんがかわいそう」とか「◯◯さんが頑張っているのに」という意見は顧客への価値提供には全く関係がない。逆に「社外向き」は歓迎だ。「◯◯は会社の評判を下げる」や「◯◯は会社の利益に貢献する」といった意見はたとえそれが間違っていたとしても、ありがたいものです。

最後に、「権利の要求しかしない人物」は、利己的なので排除する。

「権利の要求と、義務の表明」すなわち、「◯◯という約束を果たすから、◯◯してほしい」という人物は残す。彼らは自分のやらなければならないことを理解しています。」

 

 

最後に社長は言った。

私は、何年か前のアメリカ大統領の就任演説が非常に良かったと思っているんです。「国が何をしてくれるかではなく、君たちがこの国に何をするかが大事」という部分がね。会社も同じです。

「まあ、会社は民主主義ではないので、その部分は大統領よりもやりやすいですが。」

 

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