誰もが知っている大企業に勤めて出世する。それはわかりやすい“成功”例だ。

だが一方で、「そんな安定した敷かれたレールの上を歩くような人生なんてつまらない」といった声も聞く。

もちろん本人が幸せであれば、どんな人生だって良い。他人がとやかく言うことではない。ただ、評価されないよりはされた方が嬉しい人が多いだろうし、“負ける”よりは“勝つ”方が嬉しい人が多いだろう。

だから、「何を評価の軸にするか」によってとるべき行動は変わる。

現状の評価軸で全力を尽くしても「評価されていない」と感じているなら、これ以上無理をして力を振り絞るより、評価の軸を変える方が結果的に人生の満足度は高くなるのではないかと思うのだ。

 

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有名大学を卒業し、卒業後はベンチャー企業でバリバリに働き、起業して社長となった彼はこのように言う。

「起業したいなら、なぜ起業したいのか、自分の根本にあるものと向き合った方が良いよ。やりたいことがあるのか、目立ちたいだけなのか、お金持ちになりたいのか。それによって、どの程度の規模を目標に、どの事業領域で起業するのか、方針が変わってくるからね」

 

彼は、私が自分と向き合うために、自分の人生を例にあげてくれた。

「例えば僕は、世間的には良い大学に入ったと思う。でも入学してしまえば周りにはいろんな分野で輝いている人がたくさんいて、自分は勉強以外何もできず、劣等感でいっぱいになった。」

「そうなんですか。私も同じです」

「優秀な同期たちのほとんどは、有名な企業に入って、出世コースを歩んでいく。」

「はい」

「でも僕はコースを外れてベンチャー企業に入った。おもしろいことに、周りからは『なんだかよくわからないけど、すごそう』と言われたよ。」

「そうなんですね」

「そう。でも当然そこでも出世競争がある。僕はがんばって順調に出世できた」

「順風満帆ですね」

「だけど、その後僕はまたコースを外れて起業した。ここでもおもしろいことに、周りは『起業したなんて、すごいな』と僕に言ったんだ」

「たしかに、起業するのはすごいというイメージがあります」

「そう?でも実は、年収で比較したら、僕の方が断然に低いんだよ。人はいろいろ言うけどね。」

 

彼は現状に満足していた。

彼は、意図的にコースを外れたのか、結果的にコースを外れただけなのか、どちらの意味で話してくれたのかはわからない。でも、起業という道を選ぶことで、彼の評価の軸が変わったいうことは事実だ。

もちろん、起業にはより激しい競争がある。彼も年収という評価軸も全く意識していないわけではない。

ただ、それ以前の段階での軸が大きく変わっている。有名な企業ほど良い、大きな企業ほど良い。社内で出世するほど良い。そんな評価の軸から彼は外れたのだ。

 

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私の兄は、芸能人のマネージャーをしている。

もともとは、一般的に安定しているとされる会社に勤めていたが、兄は芸能人のマネージャーとなる道を選んだ。だが、「不安定」で「リスキー」であるという理由から、マネージャーになることを反対する人もいた。

おそらく「安定」を軸に評価している人からは「間違った選択」だと思われているだろう。また、仕事内容を評価軸にしている人の中には、「マネージャーの仕事って、雑用ばかりでしょ」と言う人もいる。

 

でも、別の評価軸の人からは「○○さんのマネージャーなんて、すごいな」と評価する人もいる。

「ものすごく多忙な世界だよね。そんな中で頑張るなんてすごいね」と大変さを評価する人もいる。単純に、芸能界自体を華やかなイメージで捉え、すごいと言う人もいる。

兄には兄の夢があり、それを叶えるためにマネージャーになることを選んだ。

事実はただそれだけだが、人によって評価軸が様々であるため、様々な評価をされている。

 

私も一般的に「不安定」だと思われるベンチャー企業を選択した。

大企業志向の人からは「なぜそんな選択をしたのか」と思われていることを知っている。でも、私自身はなんとも思っていない。私は自分が『面白い』と感じる企業に行きたかった。

今の会社は『面白い』と感じたから入ったし、実際に毎日『面白い』発見がある。(そしてその発見の一部をこのメディアBooks&Appsで書いている。)

 

正直に言うと、ベンチャー企業に行くと決めたとき、少し気持ちがラクになったことを覚えている。

それは就職先を決めたからという理由だけではない。表には出てこないけれど、暗黙のうちに内定先や勤め先の企業の大きさやブランド力で格付けし合っているような空間から抜け出したことへの、ある種の安心感だ。

今の会社に行くと決めた瞬間は、自分の中で軸を変えることができた瞬間だったと思っている。

 

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今の私は、何を軸にしたいのだろう……。すぐに結論は出ないが、これからも考え続けたい。

 

ではまた!

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【著者プロフィール】

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

著書「数学嫌いの東大生が実践していた『読むだけ数学勉強法』」(マイナビ、2015)

Twitter:@Xkyuuri

ブログ:http://kyuuchan.hatenablog.com/「微男微女」