とあるグループのマネジメント上の課題を抽出してほしい、との依頼があり、昔、システムコンサルティング業を営む会社に訪問したことがある。
当時、リーダーおよびメンバーにヒアリングをかけ、状況を聞き、チームのミーティングにも出席して様子を見た。
すると、問題は明白であった。
1.若手の力量は低い
2.リーダーの力量が突出している
3.ただし、リーダーはメンバーの力量と意欲には無関心である。
この会社ではリーダーが仕事をしていない。正確には「仕事をしているのだが、マネジャーとしての仕事をしていない」と言うべきか。
元インテルのCEOであるアンドリュー・グローブが述べている状況のとおりである。
人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないか、やろうとしないかのいずれかである。
つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである。(中略)
マネジャーの最も重要な仕事は、部下から最高の業績を引き出すことである。したがって高いアウトプットの妨げとなるものが2つあるとすれば、マネジャーとしての問題の取り組み方は2つあることになる。
それは“訓練”と“動機づけ”である。
特に気になるのは、リーダーの口がとても悪いことだ。
メンバーに若手が多く、また絶対的に知識が不足している人が多いので、下に対しては特に容赦がない。「バカ」だの「頭が悪い」だの、言いたい放題である。
リーダーは知識豊富で仕事もできる。その点において彼は「無知」ではない。リーダーのことを嫌うメンバーでさえ、リーダーの知識と経験には一目置いている。
だが、このチームにおいて真に「バカ」なのは、メンバーではなくリーダーであることに異論を唱える人はあまりいないだろう。
チームメンバーの多くは、リーダーが人の話を聞かず、自分の思い込みによって気まぐれに動き、理不尽に怒ることに対して辟易している。
つまりメンバーは「バカなリーダーの下で働くのは本当にうんざり」と思っている。
余談だが、バカと無知は異なる。
ためしに広辞苑をひくと、最初に書かれている説明は
・バカ おろかなこと
・無知 知識がないこと
となっている。要するに、知識があっても愚かな人は数多くいるし、逆に知識がなくても賢い人も、ということは十分あり得る。
上のチームの場合、端的に言ってメンバーは「無知」の状態であり、リーダーは「バカ」である。
そして、「無知」はたいがいなんとかなる。知識が不足している場合の対処は極めて簡単であるからだ。時間を使って知識を蓄えれば良い。
例えば、学校の勉強はその典型だ。テストができないのはバカだからではなく、辛抱強く知識を蓄えていないから、すなわち勉強不足だからである。
要は、無知に対しては「訓練せよ」で問題はない。
逆に「バカ」は、対処がとても難しい。
バカは知識のように「詰め込めばなんとかなる」という性質のものではなく、概念の問題、世界観の問題だからである。
例えば
「部下は知識が不足している」→「努力していない」→「だからバカだ」
という思考に対して、
「いや、知識が不足しているからと言って、努力してないとは限らないですよね?」
と聞いたり、
「努力できないからと言って、バカとはいえないですよね?」
と言ったりしても、彼に取って不都合な話は「存在しない」のと同じで、聞き入れてもらうことは難しい。
さらに、このリーダーは
「部下は仕事ができない」→ 「それはやる気がないからだ」→「やる気がないやつには教えられない」
と述べていたが、これも「彼がそう思いこんでいる」限り、なにも改善はしないだろう。
こういった思考の頑なさ、偏見、強い思い込み、視点の少なさ、そういったものを総称して、世間は「バカ」と揶揄するのである。
さて、残念ながら人間の歴史を見ると「権力を持ったバカ」は悔い改めるよりも先に、すげ替えられてしまうケースのほうが圧倒的に多い。
上の会社でも、結局「バカなリーダーの交代」によって、決着がついたのだった。
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余談だが「愛すべきバカ」という言葉に見られるように、「バカ」は必ずしも嫌われるわけではない。
むしろ好かれることもある。
人は皆、「わかりやすい人」が好きだ。
バカは、こだわりがあって、頑固で、見方が固定されているので、時に「非常にわかりやすい人」と思われる。
もちろん、それが自分の上司でなければ。という注釈付きではあるが。
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