つい先日買ったiPhoneが故障したので、AppleストアにiPhoneを修理しに行った。
予約ができなかったので、「当日枠」に入るためApple storeまで出かけ、15分位待ってiPhoneを診てもらえることになった。
Genius barに行くと「あちらの机の席にかけてお待ち下さい」と言われた。
担当者が来るまで、暫く時間があったので周りの人達を眺めていると、なにやら向かいの席が騒がしい。
見ると、初老の夫婦がAppleのスタッフに対して、声を荒げている。
ついに、初老の男性がキレた。
「何でお前はそんなに上から目線なんだ!」と大声で怒鳴る。女性も「スタッフを変えて!」と大きな声で周りにアピールをしており、周囲が少しざわついた。
Appleのスタッフは去り、初老の夫婦だけが残された。
彼らは「なんでこんな上から目線なんだ、バカにしやがって……」と話していた。
話が全て聞こえてきたわけではなかったので、私に正確なところはわからない。
だが、様子を見ていて感じたのは
◯初老の夫婦は、Appleのスタッフの言っていることをあまり理解できていないようだった。おそらくコンピュータにかなり疎いと思われる。
◯Appleのスタッフは丹念に説明しようとはしていたが、相手の知識の程度が低く、イラついていたようだった。
おそらく「知識のあるスタッフ」の説明が、「コンピュータに疎い初老の夫婦」にとっては見下されているように感じたのだろう。
お互いに不幸な、コミュニケーションの不調だったように感じた。
正直に言えば、初老の夫婦は少々短気で、スタッフに対する礼儀を欠いていると感じた。
スタッフに対する口調も、高圧的で、一種の「クレーマー」的なものを含んでいた。
忙しい中であのような変な人々を相手にしなければならないAppleのスタッフには頭が下がる。
だが一方、逆の目線から考えると、「Appleのスタッフが上から目線だ」という老夫婦のクレームは、必ずしも理解できないものではない。
知識レベルに格差がありすぎると、「普通に話しているだけ」なのに相手にとっては「バカにされている」ように感じることが多々あるのだ。
例えばあなたがシステムに疎い場合、「情シス」の人たちの説明が、「妙に上から目線だ」と感じたことはないだろうか。
病院に行ったとき、無愛想な医者が「上から目線だ」と感じたことはないだろうか。
学者の講演が「上から目線だ」と感じたことはないだろうか。
事実として、知識レベルに格差がありすぎると「普通に話しているだけ」なのに相手にとっては「バカにされている」ように感じることは多く見られる現象である。
これは、「知識を扱う人」は、よほど気をつけなければならない。
実際、営業活動においては「提案の中身」よりも「言い方」のほうが遥かに重要であるようなシーンも多い。
だから当然、知識をもつ側の人は、そこで「勉強しない人が悪い」と思ったり、「知識がないからバカにされて当然」と言った態度であってはならないだろう。
ピーター・ドラッカーは「知識ある人の責任」について、こう述べている。
知識ある者は、常に理解されるように努力する責任がある。素人は専門家を理解するために努力すべきであるとしたり、専門家はごく少数の専門家仲間と話ができれば十分であるなどとするのは、野卑な傲慢である。
大学や研究所の内部においてさえ、残念ながら今日珍しくなくなってきているそのような風潮は、彼ら専門家自身を無益な存在とし、彼らの知識を学識から卑しむべき衒学に貶めるものである。*1
Appleストアのスタッフも、おそらく「話し方」についての訓練を受けているものだとは思う。
が、「スマホの操作に疎い老人」たちが「上から目線だ」と憤っていたのは、ある意味必然だろう。
それはアメリカの大統領選で起きた「エリートが嫌い」「インテリが嫌い」という感情的な反発と構図は全く一緒である。
(2025/6/16更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第4回テーマ 地方創生×教育
2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。
地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。
【著者プロフィール】
・筆者Twitterアカウント▶安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・すべての最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。
*1