ある商社での話としておく。
Aは中堅社員、あるプロジェクトのリーダーを担当していたが、担当者の仕事が遅く、遅れている仕事が一つあり、これをだれに依頼するのかで悩んでいた。
まず、「契約社員のTさんに協力を頼めばいいんじゃない、得意でしょ。」という声が同僚から上がった。
Aは、なるほど、と思いTさんに頼んだところ、これは契約外の仕事です、とTさんから仕事を断られた。
言われてみると、なるほど、確かにそのとおりであった。彼女はエクセルなどのツール作成が担当であり、本件は契約範囲外の仕事である。
Aは仕事を断られたことが不満そうであったが、Tさんの上司に「ま、契約外のことをやらせるわけには行かないから」とたしなめられ、席に戻った。
それなら、ということで次に彼は自部署の後輩であるDさんに声をかけた。
「悪いんだけどさ、この仕事お願いしたいんだけど」
Dさんは彼を一瞥し、言った。
「これ、僕の担当じゃないですよ」
Aはイライラしていた。
「君のためでもあるからさ」
「なぜですか?」
「スキルもつくし。上司の評価も上がるよ」
「そうは思えませんね。」
「なんだその態度は、上からいわれた仕事は、黙ってやるもんだろう」
後輩はこともなげにいう。
「だってこれ、この前の会議で別の担当がついたじゃないですか。担当はOでしょう。」
「彼は忙しいんだ」
「僕も同じです。これをお引き受けしたら、残業しなくちゃならない」
「みんな忙しいんだ、残業くらい当たり前だろう」
「なぜ仕事を早く終わらせた僕が、仕事の遅い彼の仕事まで引き受けなくてはならないのですか?それならば、責めるべきは彼でしょう。僕を叱るのはスジが悪いと感じますが。」
「く……、お前は……。」
Aは困り、上司である部長のところへ行き、相談した。
「プロジェクトの一部に遅れが出ていて、カバーしたいのですが担当できる人がいません。」
「Dが比較的空いているだろう。」
「それが……Dが私の仕事ではないです、と。言ってるんです。他に適任はいないですか?」
「私の仕事ではない……?」
「はい。担当はOで、確かに彼の能力不足が原因で遅れがあります。Dは「なぜOの能力不足を自分が埋めなければならないのか」と言っていまして、「残業したくはない」と。」
「ふーむ、困ったな。まあ「命令だ」といえば簡単にカタはつくが。そんな奴をいれても遅れを取り戻せるとは限らんだろうな。」
「どうしましょう。」
「よし、私がDに直接話してみよう。」
部長はDさんを呼んだ。
「Aの「Oを助けてくれ」という依頼を断ったらしいな。」
「はい。私の仕事ではないので。」
「皆、チームだろう。困ったときには助け合いが必要ではないかね?」
「……お言葉ですが、助けているのは私だけです。」
「?」
「いつも、Oさんの尻拭いを私がしています。そういう時、Aは困るといつも私に仕事を投げてきます。我慢して今まではやっていましたけど、流石にどうか、と思い、先月私は「もうOの尻拭いはしません」とAにいいました。
マズいのはOに繰り返し遅れを発生させるAと、人を追加しない会社にあるのでは?もう僕は嫌になりました。ちょうどいいです。言おうと思っていたのですが、僕は来月末に辞めます。うんざりしました。」
こうしてDは会社をやめてしまった。
さて、この状況、一体誰が「ダメな奴」なのだろうか?
仕事の遅いOさん?
「自分の仕事ではない」と断り、会社をやめたDさん?
プロジェクトリーダーのAさん?
それとも部長?
はたまた、契約社員のTさん?
実は、この質問をすると「マネジメントへの考え方」がわかる。
みなさんはどう考えるだろうか。
(2026/10/26更新)
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