「それ、観てるだけで面白いの?」というのは「時代遅れ」なのかもしれない。 (いつか電池がきれるまで)

リンク先の記事を読みました。

 

ゲーム実況を見る息子さんと、将棋やスポーツ実況を見るお父さん。とても似ていらっしゃるし、それはそれで素敵だな、と思います。

なかには“ゲームも動画も全く子どもに触れさせない”なんて家庭もあるかもしれませんが、PTAから目の敵にされるようなテレビ番組をゲラゲラ笑いながら観ていた親世代がそれを言うのもなんだかなーと私は思います。

まあ、子どもが隠れて楽しむのを承知のうえで、歯止めをつけるために娯楽の制限を言い渡しておくのはアリだと思いますが。

 

さて、私はリンク先のfujiponさん御一家の教育方針について、云々したいわけではありません。しかし、ゲームに対する姿勢については、異議あり!!です。 

テレビゲームは、この年齢になってみると、自分で最初からレベル上げするのもねえ……って思うことも多くなったし、「プレイするとつまんない、あるいはめんどくさいんだけど、編集された実況動画なら面白い」っていう作品も少なくないんだよね……将棋も、自分で指して下手さを再確認するより、最高峰の勝負の「空気感」に触れているほうが愉しいような気がする……

自分がそんな感じなのに、息子にだけ「努力」を求めるのは、間違っているのかもしれませんね。

 

このくだりを読んで私は、「そうとも、それは間違っている!すごく間違っている!」と思いました。

 父親が息子にゲームの努力や上達を望むなら、親自身が子どもにその姿勢をみせ、その哲学に則った行動を示すべきではないでしょうか。

父親が「ゲームをプレイするのはつまんない、めんどくさい、上手な人のプレイを見ているほうが楽しい」って姿勢を取り続けているのに、息子が「僕もゲームをやりたい!上手になりたい!」と思えるわけがないじゃないですか。

 

父親は、子どもの価値観や良心や人生哲学にひとつの指針を与え得ると私は思っています。もちろんそういったものは母親からも与えられるけれども、母親が持っていないエッセンスや可能性を提供できるのが父親という立場であり、幼児期以降、その影響力は決して馬鹿にならないものです。

 

そういう父から子への影響って、子どもに何を命じたか・奨めたかした以上に、親自身が何をやってみせたのか・子どもと一緒にいる時間にどのように行動したのか、が重要だと私は思っています。

少なくとも、子どもと一緒にいない時間の言動よりは、子どもと一緒にいる時間の言動のほうが影響力があるはずです。

 

だとしたら、もし父親が息子に“上達するゲーマーになって欲しい”と願うなら、父親自身が上達するゲーマーの姿を示すべきではないでしょうか。

・苦労を伴う場面でも乗り越えられるゲーマーになって欲しいなら、父親はそうするべき

・時間効率を考えながら遊べるゲーマーになって欲しいなら、父親はそうするべき

・ゲームから受験勉強的なエッセンスを吸収できるゲーマーになって欲しいなら、父親はそうするべき

……だと私は思います。

 

 姿勢を正して、本気でゲームをする

だからってわけじゃありませんが、私は、厄年を迎えても現役のゲーマーとして、姿勢を正してゲームをプレイしています。

ゲームはダラダラ遊ぶものじゃない。本当に面白いなら本気になってゲームを遊ぶべきだし、上手くなりたいなら、そのためにあらゆる努力や手段を惜しまないようにする。

努力や忍耐だけでなく、頭を使って、効率性を考えて、精一杯の力を出し切ってゲームに挑むなら、ゲームは必ず良い体験を与えてくれる――

そういう私のゲーム哲学を、私は子どもに余すところなく見せていますし、子どもがゲームを遊ぶ時には、こうした事をはっきりと伝えています。

 

私の家庭の話になりますが、私は、子どもにある程度まではテレビゲームをさせても良いと判断しています。たぶん、世間の平均に比べれば「子どもがゲームを遊ぶこと」に寛容な家庭でしょう。

しかし、どうせゲームを遊ぶなら、それは真剣なものであるべきだし、夢中であるべきだし、努力と忍耐と機転と工夫を授けてくれるものであるべきだと、わりと本気で思っています。

だから、子どもが「暇つぶしとして」だらだらゲームをやっている時にはセガサターンやXboxPCの電源を落としますし、悪い姿勢でゲームをやっている時には「きちんと座ってゲームしなさい」と注意します

 

「たかがゲーム」と言う人もいるでしょう。けれども、両親ともにゲーマーである我が家は、ゲームにまつわる文化資本がものすごく蓄積しているのですから、ゲームと向き合う姿勢を介して、いろいろなことが子どもに伝達できると思っているんですよ。

 

最近のゲームは、ひらがなやカタカナばかりでなく漢字も英単語もたくさん出てくるし、算数や科学や歴史の勉強になりそうなエッセンスもたくさん出てきます。現代サブカルチャーの一般教養も無尽蔵に詰まっています。

だから、たかがゲームといえども、たくさんのことを学び取れると思うんですよ。そして、本気で遊んでいる限りにおいて、ゲームを遊ぶという一事から、万事に通じるスタンスや哲学が身に付くはずです。

 

少なくとも、『スターソルジャー』や『信長の野望』や『ドラゴンクエスト』を遊んでいた自分の少年時代を思い返すと、そうだったと思います。

私はゲームのおかげで勉強の手間暇をだいぶ省いてもらったし、ゲームを上達したいという気持ちのおかげで、自分自身のために努力し工夫する習慣を身に付けることができました。

だから、子どもをゲーム漬けにしたいとは思わないけれども、どうせゲームに親しむなら、実りの多い、思い出深い、真摯で真剣なものであって欲しい、と願っています。

 

 

なにより「頭を使ってゲームをやる癖をつける」って習慣も大事ですよね。

この「頭を使ってゲームやれ」は、大学時代、ゲーセンで全国一のハイスコアを記録していた知人の口癖だったものですが(ちなみに、その知人のもうひとつの口癖は「練習すれば誰でもできる」でした)、ゲームってのは知的な作業だし、そうであるべきだというのが私のゲーム哲学です。

どんなゲームでも、頭を使えば、より少ない時間で、より困難なことを達成できる――そういう事を、親として、ゲーマーとして、やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、できたら褒めてみせて、そうやって、私のゲーム哲学を子どもに伝授することが大切だと思うのです。

 

こうやって親から子へ引き継がれていったゲーム哲学、あるいは物事との向き合い方ってのは、なんらかのかたちで子どもに残るでしょう。

私は、こういった事に大いに助けられて、受験勉強も研修医時代も乗り切ることができたと思っているので、たとえ、今の私の方針が反感を呼び、将来、子どもがゲームのことが嫌いになったとしてもそれはそれで構わないと思っています。

ゲームそのもの以上に、家庭内でゲームという媒体を介して親から子へと浸透する態度、哲学、物事との向き合い方ってのを子どもに伝授したいし、そういう部分は、思春期以降に子どもが親離れしていったとしても、態度の骨格となって残ると思っているんですよ。

 

 

ゲームに限らず、子は親の背中を見つめながら育っていく

以上が私のゲーム教育論ですが、もちろんこれは、ゲームに限った話ではありません。

親と一緒にいる時の子どもは、親の一挙一動を見ていて、それをほとんど無意識のうちにインストールしていきます。

読書についてもそうでしょう。

勉強についてもそうでしょう。

金遣いについてもそうでしょう。

人間関係、言葉遣い、嘘だって。

リビングで子どもと一緒にいる時、テレビを指さして「あいつ馬鹿じゃねえの?死ねばいいのに」とゲラゲラ笑っている親の姿は、きっと子どもに何かを与えることでしょう。

子どもには「勉強しろ」と言っておきながら、自分はいつも寝転がって酒ばかり飲んでいる親の姿も、きっと子どもに何かを与えることでしょう。子どもの口調が気に入らないからといって、怒鳴ってばかりいる親の姿も、きっと子どもに何かを与えるでしょう。

 

結局、そうやって親から子どもへと、無意識のうちに生活哲学や物事との向き合いかたってのはどんどん染み込んでいくのだと思います。

あらゆることがインストールされて、“地金”になっていく。

だとしたら、親としては、どうあれ、良かれと思っている望ましい態度や哲学にもとづいて家庭生活を営み、子どもにそれを示していくべきではないかと思いますし、子どもに努力や創意工夫を授けたいなら、まず親がやってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、きちんと評価してあげるのが早道ではないでしょうか。

 

私の家庭は、ほかの家庭よりもゲームのウエイトが大きいので、たまたまゲームがこうした事の親子間伝達の媒体として重視されているけれども、スポーツが盛んな家庭や同人誌制作が盛んな家庭でもきっと同じではないかと思います。

どんな趣味や活動でも、親から子へと伝えられるものっていうのはあるはずだし、そういう場面で望ましいと思う態度や哲学を伝えていくのが、家庭ならではの教育、ってやつではないでしょうか。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【プロフィール】

著者:熊代亨 ←名前をクリックすると記事一覧が見れます

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)など。
twitter:@twit_shirokuma 
ブログ:『シロクマの屑籠』

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