「経営者」が転身し、「政治家」になるケースは稀ではない。というか事例としては多い方に含まれる。また同じく「芸能人」が「政治家」を目指すケースも多いといっていいだろう。
この2つを比較すると、「芸能人」として成功した人が「政治家」として成功するケースの方が多いように感じる。
ちなみに古代ローマでは今の「芸能人」にあたる「俳優」が政治家に立候補することが禁止されていた。
知名度やイメージにおいて芸能人は非常に有利な立場であり、公平性の観点から禁止されたのだろうが、現代においても「芸能人」は政治家となるのに有利という傾向はあまり変わっていない。
しかし、なぜ芸能人が経営者に比べて政治家として成功するケースが多いのか。思うに、「経営者の合理的な考え方」が「政治家」にとって妨げになるケースが多いようだ。
経営者は、会社という共同体に対して責任を持つ。政治家も同じように「国」あるいは「地域」という共同体に対して責任を持つ。ここまでは同じである。
しかし、経営者と政治家が異なるのは扱う共同体の性質だ。
実は、会社という共同体は国に比べてマネジメントが簡単である。会社には次の特徴がある。
1.構成員の利害が一致している。
2.構成員の出来が悪い場合、共同体から放逐できる(クビにできる)
3.共同体中の強者を保護し、弱者を冷遇する
もちろん、会社により多少の差があろうが、共同体というのは上の1から3について、会社と全く逆の論理が必要とされる。
構成員の利害が一致することはまず無い。また、犯罪者は別として、出来が悪いくらいでは共同体を追放することもできないし、まして強者を保護していたら共同体は崩壊してしまう。
「国」という共同体を強くするためには
に書いたように、弱者を内包する必要があるが、企業は弱者を丸抱えできるほどの体力は無い。
したがって、政治家には経営者よりも遥かに高度な共同体のマネジメント能力が必要とされる。もちろん、経営者に比べて政治家が優れているといっている訳ではない。(当然だが)
しかし、求められる能力が異なるということは認識が必要であり、権力が集中していることで、企業の方が共同体よりもマネジメントしやすいという事実はかわらない。
だから、企業の論理で政治を動かそうとする人はほとんどうまくいかない。「経営のプロ」である大前研一も政治家に立候補したが、支持を得られず落選した。
規制を撤廃したり、競争を促進することはもちろん必要だが、共同体の維持にはもっと重要なことが数多くある。といっても、最近の強者は「グローバル化」の名の下に、共同体の維持にリソースを割きたがらない人が多いのだが。
芸能人の方がマシなのは、「芸能人」というのは「敵を作らない」ことに長けている人が多いからだと思う。共同体のマネジメントで最も難しい課題の一つである利害調整にはこの能力が必要とされるのだろう。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
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自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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