物の値段の決まり方は一様ではない。

例えばこの記事だって、趣味のブログという形で上梓すれば僕の収入は0円だが、どこかの媒体に寄稿という形になると、原稿料というものが発生する。

全く同じものでも、前者は無料だし、後者は有料だ。

 

何をそんな当たり前な事をいうのだという方もいるかもしれないが、この知識があるとコストパフォーマンスのよいレストランというものが、一体どういうものなのかについての理解が深まる。

 

というわけで今回は、お得なお店の選び方についての記事を書いていこうかと思う。

 

レストランにおける料理の値段の決まり方。

レストランの料理に対する原材料費は、一般的には30%だといわれている。1000円の料理をあなたが頼むのなら、そのうちの300円が肉だったり野菜だったりの金額になる(残りの70%は家賃や人件費にあてられる)

 

レストランのシェフは基本的には職人だ。美味しいものを出してお客さんによろこんでもらえる事や、同業者間での評判を糧に日々を過ごしている。

彼らが作り出す作品は、一皿の上に載せられた料理という形で表出される。そこに今までの人生観や習得した技術が詰め込まれる。

 

当たり前だけど、良い料理は良い食材があってこそうまれるものだ。

素晴らしいダイヤモンドの原石のような食材に、プロ技術を加えて加工することで、皿の上にはミケランジェロの彫刻のような偉大な作品ができあがる。

 

素材と技術。どちらも両立していないと偉大な作品はうまれない。いくら凄い素材があっても、素人には上手に加工することはできないし、いくら凄い職人がいたとしても、

そのへんに転がっている石コロからは凄い作品は到底作れない。

 

このへんまでの話は誰だって当然だ、と思うだろう。じゃあ今度はこの作品が、どういう形で商品になるかについて考えてみよう。

全く無名の彫刻家が、単なる趣味で作った作品を誰かが買いたいといったとしよう。

職人は、そもそもそれは自分の余暇で作ったものだと認識しているだろうから、おそらく値段はそう高くはならないだろう。せいぜい高くて原材料費ぐらいまでで、下手すると原材料費を遥かに割った金額でそれが提供される事も十分に考えられる。

 

しかしその後その彫刻家の評判がだんだんと高まっていき、ある時から世界中からオフファーがとぶようになってきたとしよう。そうすると、価格は趣味世界の感覚では決定される事はなくなる。いわゆる需要と供給の曲線に乗っかって、値段が決められるようになるのだ。

原材料費が100円でも、10万円でも欲しい人がいればその彫刻は売れていくし、1,000万円でも欲しいという人がいれば、それでも十分に売れる。

 

世間ではよくあるようなこの話が、実はレストラン活動においても全く同じように該当する。

あまり有名ではないシェフが、最高の芸術作品を趣味活動のような形で提供しているようなお店は、当然というか原材料費が異常に高い。

これはシェフが人件費や技術料をほとんど客からとらずに、趣味活動のような感覚で客によい品を提供しているからこそおきる現象だ。

 

一方でミシュランの星付きレストランだったり、雑誌やテレビで話題なレストランともなるとこの構図はだんだんと崩れていく。

そのレストランで出される料理は、有名彫刻家と同じく需要と供給の世界で値段が決定されるようになっていく。

 

雑誌で話題の予約がとれない人気店だったら、たとえ原材料費が10%しかかかってなくても誰も文句はいわないだろう。それよりも、超人気店で食事ができるという体験の方に重きを置く人の方が圧倒的大多数だ。

 

店も店で、てんやわんやの大騒ぎになり何をやっても儲かるようになってってしまったら、売上を第一に考えるようになったとしてもそれは全然おかしな話ではない。

人間、リアルに目の前でお金が動くようになると、そこからいくら抜けるかを真剣に考えるようになるものだ。

それが商売というものである。趣味活動と商売活動は、提供されるものが同じでも、値段の決定方法が根本から異なるのだ。

 

グルメ界でミーハーが嫌われる理由

「あの人、ただのミーハーじゃん。味なんて全然わかってないよね」

この台詞は、グルメ趣味の人への最も強い侮蔑だ。

 

僕はグルメが趣味活動の一環なのだけど、そのときによく「あの人は果たして味がわかっているのか」という非常に過激な話題でもりあがる事がある。

 

食べログの人気レビュワーの中にも、本物を理解していそうな人もいれば、ただのミーハーなものに飛びつくタイプの人もいる。

じゃあ本物を理解しているのと、ただのミーハーの違いは何に起因しているのだろうか?

 

僕はそれは無名なだれも知らないようなレストランにて、趣味活動として提供される料理をいくつ知っているかがその決定要因だと思う。

その人が本物の目と舌を持っているのなら、たとえどんな無名なレストランであろうが凄い料理は凄いという事が見抜ける。無名時代のダ・ヴィンチの作品をみて、これは本物だと見抜けた人は、ダ・ヴィンチの作品が話題になった後に購入した人よりも見る目があるのは明らかである。

 

結局、ミーハーな人達というのは蛍光灯の周りにあつまる虫みたいなもので、光るところがあれば何でも集まるような存在でしかないのである。

芸能人がテレビで紹介していただとか、グルメサイトで金賞を獲得しただとか、そういうキラキラしたものに惹きつけられるような人間を、食事に真剣な人が嫌うのは当然だろう。

 

もちろんというか、人間誰しもある程度はキラキラしたものに憧れを持つものである。僕も話題のお店に興味を持ったりすることは、まあある。そういうのにも行ってみたいという感情が全く無いという人は非常に珍しいだろう。

ただ真のグルメを目指すのならば、しっかりと調理技術や原材料についての愛を深めていき、趣味活動として薄給で頑張っている本物のシェフを見つけ出して芸術作品を全力で楽しめるような存在になりたいものである。

 

そして逆説的だが、そういうレストランにこそ我々はお金をしっかりと落とすべきなのだ。それが将来のグルメ界を支える、一庶民としての草の根活動に他ならない。

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

(Photo:StateofIsrael)