読者の方から、「次にどんな仕事をしたらいいのか悩んでいる」と、メッセージを頂きました。

簡単に自己紹介をすると、自分は現在2✕歳の男です。 これまでWEBベンチャー→広告代理店の2社で合計3年間働きました。

ご察しの通り、恥ずかしながら現在は再び就活生です。 しかも、今回はちょっとだけ複雑です。 これから何をすべきか。目指すべき方向が本当に分からなくなりました。

先日、はじめて転職エージェントに会いました。 「離職期間は長引くと書類選考で落とされるのでマズい」といいます。 しかし、これから自分が何をすべきか分からなくて行動に移せずにいます。

 

一応、離職期間のデフェンス策としては、時間稼ぎにブートキャンプ式のプログラミングスクールに退職早々から2ヶ月、ほぼ毎日通っています。 このままWEBエンジニアへの就職支援もしてもらえるようですが、この2ヶ月の演習を通して自分はそこまでコードを書くのが得意な人種でないことにも気づきました。

そこで、これまでやってきた仕事「広告営業」のことを思い出します。 しかし、そこでの自分を考えてみても営業で今後成果をバリバリ上げられるタイプでも無さそうです。

 

昔の自分を思い出します。

苦手科目等は無かった気がしますが、得意科目も無かったというのが本音です。 全教科平均+5点くらいを取るので全体の中では成績良い、みたいなタイプ。 おそらく僕は「真面目な凡人」です。

こんなのダサいので認めたくなかった。自分は人とは何かが違うと思いたかった。 でもきっと、これまでを考えると自分は凡人です。 多分、営業をやっても、開発をやっても、自分は何かの道で突き抜けることはできない気がします。

そこで、お聞きしたいです。

「何をやっても自分は平均点くらいだと気づいてしまった人」は、次どういう仕事をすればいいのか。

(掲載許諾を頂いた上で、一部を本人のプライバシーに配慮し改変)

このメッセージを拝読し、私は「社会人になって、自分が特別ではないことにようやく気づいた」と言っていた方々を思い出しました。

例えば、下の記事にあるようにです。

「自分は特に優秀ではない」と悟ってから、一気に仕事ができるようになった人の話。

「僕は自信家で、とにかく人に勝ちたかった。出世、給料、有名になることも含めて。」

「野心があるのは悪いことじゃないと思うけど。」

「うん、でも、勝てないんだよね。すごい人ってたくさんいるから。例えば、先輩が作る提案書を見る。出来がいいし、何より発想が突き抜けてる。わかるんだよね。あ、自分の作ったものは十人並だなって。結局、自分にはそれほどの才能がないってこと、嫌ってほどわかった。」

「なるほど」

「でも、なんとかして追いつけるんじゃないかと、本を読んで、セミナー出て、でも、勉強すればするほど、先輩が遠ざかる。かえって、実力の差が見えちゃったんだよね。」

「で、どうしたの?」

「いや、追いつこうとするのは諦めた。エンジニアの友達に言ったら、それ、俺もあるって言われてさ。スーパーエンジニアには、十年経っても追いつけないって。才能が違うんだと。」

「ああ、わかるかもしれない。」

「無駄な努力だと悟った瞬間。泣けてきてね。ああ、なんて無力なんだ、なんて俺は平凡なんだって。俺。小さい時から勉強できて、中学受験から就職活動まで、ずっと思い通りだった。でも、いずれみんな負けるんだよね。必ずどこかで。」

このように「それなりに勉強ができた」殆どの人は、同種の壁に必ず突き当たるのではないでしょうか。

 

例えば若者が、初めて広い世界に出て、自分の無力さを実感する物語は、数多あり、これは世界共通の物語です。

これについて「ハイペリオン」では、主人公の一人である詩人が、次のように述べています。

公表という苛酷な踏み絵を踏むまでの、おのれの詩人や作家としての才能に対する思いこみ思いこみは、自分は死なないという若者の思いこみに似て、ナイーブで無害であり……やがてかならず訪れる幻滅もまた、同質の苦痛に満ちている。

しかし、これらの経験は「自分は無力だ」と知る苦痛を伴う一方で、実はむしろ、極めてポジティブな出来事であると私は考えています。

 

なぜなら、「自分」「家族」「友人関係」という狭い空間での幼い万能感を捨て、

広い社会で、現実に自分ができることから対処するのが「大人」だからです。

自分の無力さを知ることは、大人になる第一歩です。

だから、メッセージを頂いた方へは、「ようこそ、大人の世界へ。」と申し上げたい。心から、おめでとうございますと言いたい。

 

そして、今から

「この「自分は無力」という洗礼を受けた大人しか、理解できない話」をします。

 

ご質問は

「何をやっても自分は平均点くらいだと気づいてしまった人は、次どういう仕事をすればいいのか」

でした。

まず、結論から言います。

どんな仕事をしてもいいと思います。極端な話、エージェントに任せるも良し、友達に紹介してもらうも良し、最初に内定をくれた会社で働くも良しです。

というのも、どうせ「若い時は仕事は選べない」からです。

 

ほとんどの社会人は、30歳前半までの下積み時代に仕事を選べないことを知っています。

仕事選びの主導権は、現在ではまだあなたではなく、雇う側、仕事を出す側です。

なぜって、実績も実力も、才能もないから。

 

実績も実力も才能もない人に、面白くて、お金がたくさんもらえて、かっこよくて、有名になれる仕事を与えてくれる人はいません。

残念ながら。

ですから、まずは「とりあえず生活するため、ありつけた仕事」を頑張るところから始めます。

 

つまり、自分が運良く入れた会社で、その中できちんとした成果を残すことを最初の目標とします。

地区大会で優勝できなければ、全国大会にはいけないのと同じです。最初に入った数社で成果を出せない人は、何処へ行ってもたいした成果を出せません。

 

また、仕事がうまく行かなくて「他に自分に向いた仕事があるかも」と思うのも、大体は勘違いです。

というのも、20代の実績も実力も才能もないサラリーマンに誰かが依頼してくる仕事は、大抵

「誰でも努力次第で成果が出せる仕事」だからです。

 

「努力したら必ず結果が出る」なんてウソでしょ?

という人もいます。

でも、この場合はウソではないです。

なぜなら、誰もあなたに「名画を書いてくれ」「文豪の如き傑作を書いてくれ」「金メダルをとってくれ」「がんの特効薬を作ってくれ」「ヒット商品を作ってくれ」という、高度な依頼をしていないからです。

そう言う依頼は、もっと「すごい人」にします。

 

繰り返しますが、現在のあなたには残念ながら何のバリューもありません。

したがって、あなたに頼まれる仕事は100%、「とりあえず、頑張ればなんとかなる仕事」ばかりです。

 

「でも……広告営業では成果を出せなさそう。他にすごい人がいるし。」と思っているかもしれません。あるいは「自分はwebエンジニアで成果を出せる人種ではなさそうです。」と書いていらっしゃいます。

しかし、こういった職業で成果を出せないなら、だれもあなたに仕事を頼めません。残念ながら。

 

もちろんこれは、営業とプログラマーが「簡単である」と言っているわけではありません。

両方とも大変な仕事です。

ですが、会社の業務として成立している仕事である以上、それなりの成果を出すのに「唯一無二の能力」や「才能」を必要とはしないものばかりです。

 

逆に、そこで必要なのは「意志」と「継続」です。

うさぎとかめのレースの話をご存知でしょう。あの逸話が語り継がれているのは、本質を含んでいるからです。

 

仕事で成果を出す、ということはどういうことかというと、亀がジリジリとゴールに寄るがごとく「地味な活動を積み上げていく」事にほかなりません。

「平凡」から、時おり卓越した成果が生まれるのです。ここにはほとんど例外はありません。

 

「ホントに?ウソでしょう」

と、あなたは思うかも知れません。でも、本当です。

例えば才能がモノを言いそうな「絶対音感」の体得ですら、実は「練習」によって殆どの人が身につけることができます。

絶対音感の本質は二〇一四年、東京の一音会ミュージックスクールが実施し、学術誌『サイコロジー・オブ・ミュージック』で報告された見事な実験によって明らかになった。

心理学者の榊原彩子は二歳から六歳までの子供二四人を集め、ピアノで演奏される和音(コード)を音だけで聞き分けられるようにするため、数カ月にわたってトレーニングを受けさせた。

子供たちは一回あたりわずか数分間のトレーニングを一日四~五回繰り返すという日課を、榊原が選んだ一四の和音をすべて識別できるようになるまで続けた。一年以内にトレーニングを完了した子供もいれば、一年半かかった子供もいた。

それぞれの子供がトレーニングを完了した時点で、榊原は一つひとつの音を正確に識別できるかテストした。すると実験に参加した全員が、トレーニングが完了した時点で絶対音感を身につけ、ピアノで演奏される個別の音符を正確に識別できるようになっていた。

これは驚くべき結果だった。一般的には一万人に一人しか持っていない絶対音感を、榊原の被験者は全員持っていた、ということになるからだ。この事実は、絶対音感はおよそひとにぎりの幸運な人だけが持つ恵まれた天賦の才などではなく、適切な経験と訓練によってたいていの人が習得できる能力であることを明確に示唆している。

この研究は、絶対音感についてのわれわれの理解を根底から覆した。

村上春樹氏は「地味な作業の繰り返し」を心がけているし、堀江貴文氏は、著書の中で「ショートカットを考えるのではなく、積み上げが重要」と言っています。

時間を決めて、決まった量を書く(村上春樹に学ぶ執筆術)

僕は毎日かならず4、5時間仕事をする、1日10枚書く、と決めているから、機械的に、積み立て貯金みたいな感じで原稿が増えていきます。1日10枚、ひと月に300枚、半年で1800枚。

出典:http://blog.livedoor.jp/sabatasamezo/archives/50057992.html

たとえば、メールマガジン(堀江貴文のブログでは言えない話)にQ&Aコーナーを設けていることもあり、僕は10代や20代の若い世代から相談を受ける機会がとてつもなく多い。

メルマガだけでも述べ1万件以上もの質問に答え、しかもツイッターでの質問まで無数に飛んでくる。そしてその多くは、仕事に関する相談だ。いまこんな会社で働いているのだが、どうすればいい転職ができるか。独立して起業したいのだが、どんなビジネスプランが考えられるか。こんなアイデアを持っているのだが、勝算はあると思うか、などなどである。

彼らの声を聞いていて感じるのは、みんな「掛け算の答え」を求めている、ということだ。

もっとわかりやすい言葉を使うなら、成功へのショートカットを求め、どうすればラクをしながら成功できるかを考えている。もしかしたら、僕に聞けば「ラクをしながら成功する方法」を教えてもらえると思っているのかもしれない。

でも、ここで確認しておきたいことがある。人が新しい一歩を踏み出そうとするとき、次へのステップに進もうとするとき、そのスタートラインにおいては、誰もが等しくゼロなのだ。

つまり、「掛け算の答え」を求めているあなたはいま、「ゼロ」なのである。そしてゼロになにを掛けたところで、ゼロのままだ。物事の出発点は「掛け算」ではなく、必ず「足し算」でなければならない。まずはゼロとしての自分に、小さなイチを足す。小さく地道な一歩を踏み出す。ほんとうの成功とは、そこからはじまるのだ。

これはもちろん、著名人ばかりに当てまる話ではありません。

私の知人に、非常に良いエンジニアの方がいますが、彼は全くの独学で、素人からジリジリと何年もかけて、現在のスキルに到達したそうです。

プログラミングを独習し、その勢いで独立した、28歳の凄腕プログラマーの話。

−では、正しいプログラムの書き方をどのように勉強したのですか?

一番よいのは、人のコードを参考にすることです。特にオープンソースソフトウェアはコードがあちこちに落ちている上、基本的にスキルの高い人が作ったものなので、非常に勉強になりました。

公開されているソースコードをみて、他のその人のサンプルも見る。そうやって真似ばかりしているうちに、良いプログラムの「作法」がわかってきたんです。

例えば、コードをできるだけ少なくするために、共通化されているかどうか、他の人が見た時にわかりやすくするために変数名をどうつけるか、などです。他にもインデントの入れ方など、細かい話はいくらでもあります。

非常に良かったのはJqueryです。徹底的に読み込みました。

プロスポーツ選手、画家、音楽家、小説家、プログラマー、デザイナー、起業家、カーディーラーや保険の営業……

何の仕事であっても、成果を残す人は、「意志」と「継続」の力によって物事を成し遂げています。

 

つまり、非凡さとは、

「いつ結果が出るかどうかわからない、つまらないことを、向上心を持って工夫続ける力」という、一点に集約されます。

 

これができない人は、どんな仕事も結局「自分に合わない仕事」になってしまいます。

逆に言えば、単調さに耐え、少しずつ改善を繰り返せば、かなりの高確率で「ある程度食える」くらいにはなります。

無論「大成功」には運が必要ですが。

 

*******

 

ここまでの話を読まれて

「要は、努力しろってことですよね。努力神話ですよね。」

と思う方も多いと思います。

しかし、私が本当に言いたいことは、それとはちがいます。

私は「努力せよ」とは一言も言っていません。努力するかどうかは、価値観の問題です。やりたい人が勝手にやればいいんです。

 

むしろここで問いたいのは、

「「大きな努力」という犠牲を払ってまで、非凡でありたいですか?」

というものです。

 

「何をやっても平凡な人はどうすればいいか」という問いには、おそらく「平凡でいてはいけない、平凡でいたくない」という含みがあります。

そうですよね。

しかし、平凡と幸せは両立しないか、と言えば、それは全くの嘘だと思います。

人から羨ましがられなくても、

特にお金を持っていなくても、

非凡な能力をもっていなくとも、

有名になれなくとも、

幸せでいる、ということには何の影響もありません。なぜなら、幸せは、究極的には完全に主観の問題だからです。

 

だから、「何をやっても自分は平均点くらいだと気づいてしまった人」は、次どういう仕事をすればいいのか。

という問いに対しては

「どんな仕事をしてもいいと思います。頑張ればなんとか食べていけます。」

と回答します。

 

そして、どんな努力をしたとしても、世の中の99.999%の人たちと同じく「平凡な人生」が待っているでしょう。

それでも敢えて「非凡になる」ために頑張ろうとしますか?

はっきり言って、表面上、人生のコスパは悪いです。

 

つまり、

「報われないなら努力したくない」か「報われなくても努力したい」か。

どちらがいいでしょうか。

人生の選択は、究極的にはこの2つしかありません。

 

報われないなら努力したくない、と言う方なら、できるだけ楽な仕事を見つけて、精一杯プライベートを楽しみましょう。

世の中には、まだまだ良い会社がたくさんありますし、仕事なんて頑張るだけ損です。

 

一方で、報われなくてもやれるだけやりたい、と言う方もいます。成功とはほど遠い、疲れるだけの人生になる可能性が高いです。

いうなれば、努力と、向上心という欲求不満の人生です。

そういう人生を歩みたいですか?

そうであれば、スティーブ・ジョブスの言葉を心に刻みつけ、苦しい時に思い出すと良いと思います。

「Journey is the reward(旅こそが報い)」

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

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