「社畜」という悲しい言葉がある。
会社に飼われている家畜のようなサラリーマン、それが「社畜」だ。
社畜という言葉は、自嘲的に用いられることもある。
「オレは所詮社畜だから」
「社畜らしく頑張るよ」
社畜という言葉は、「飼い殺しサラリーマン」の代名詞のようにも使われている。
一方で、そのような人々に向かって、世の中には色々なチャンスが有るよ、会社なんてやめちまえ、と言った趣旨の発言をする人もいる。
しかし、実際にそういった発言に対しての回答は、「そんな簡単に会社をやめられるわけないだろう」というものがほとんどだ。
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なぜ彼らは会社をやめることができないのか。
当たり前だが大きな理由は「稼げない」というものだろう。お金がなければ都会では何もできない。食べることも、住むことも何一つだ。
唯一の収入源である「給与」を断つということは自殺行為にも等しいようにも見える。
それに対し、そんなことはない、「起業」や「スモールビジネス」「副業」を勧める人がいる。
クラウドソーシングがあるよ、技術一つで稼げるよ、とささやく人がいる。アプリで一山当てたよ、ブログやアフィリエイトで月◯◯万円稼いだよ、という人もいる。
しかし、それでも実際に会社をやめたり、副業を始める人はごくわずかだろう。「稼げない」というのは表面的な問題にすぎないからだ。
真の問題は「なぜ稼げないのか」という部分にある。
「稼ぐ」という行為はざっくりと分けると以下の3つのパートに分かれている。
1.マーケティング……マーケティングにより「顧客の欲求をつかむ」
2.製造……製造により「欲求を満たす商材を作る」
3.販売……販売により「顧客へ商材を渡して対価を得る」
あなたは「3つをすべてやったことのある人」だろうか?
実際、サラリーマンにおいては極めて稀である。これは企業という組織の特徴だ。
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ピーター・ドラッカーは「組織社会」についてその著作「ポスト資本主義社会」でこう述べる。
組織の機能は、専門知識を生産的にすることである。(中略)専門知識は、専門化すればするほど成果をあげる
つまり、組織はそこで働く人々に「専門特化した知識」を求める。誰にも負けないマーケティングの専門家たれ、製造工程の専門家たれ、営業の専門家たれと。
さらに、ドラッカーはこう続ける。
組織の中の人間はすべて、それなくしては組織としての成果が生まれないような死活的に重要な貢献を行っているということである。しかしなおかつ、彼らは独力では、いかなる成果も生み出せない
実は、会社の期待にこたえるほど、専門特化すればするほど、皮肉なことに労働者は「社畜」とならざるを得ない。組織の中で有能であることを目指すほど、その会社から離れることが難しくなるのである。
社畜にならないよう努めるには、意図してキャリアが固定されないよう、様々な仕事をこなしながら、専門知識を磨く必要がある。
そのために、できるだけ「持っている知識をどの会社でも使えるように」自分の知識を汎用化させること、
すなわち明文化したり、言語化しておく、人によってはソフトウェア化しておくなどの用意をしておくことである。
ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会 (ドラッカー名著集 8)
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【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
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2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)