魯迅による「阿Q正伝」という物語がある。青空文庫でだれでも読むことができるので、読んだことのない方は一度目を通していただくのも良いかもしれない。
簡単なあらすじは以下のようなものだ。
阿Qという何のとりえもない人物がいた。彼は家を持たず、日雇いのような仕事をして地域を転々としていた。彼は喧嘩をすることが多かったが、殆どの場合は負けてしまった。
しかし、彼は「精神的勝利」を収める方法を身につけており、たとえ自分が喧嘩に負けたとしても、「子供に打たれたようなもんだ」など、負けても勝ったことにしてしまう心のコントロール方法を身につけた。
ある日彼は権力者の使用人の女性に手を出し、その権力者の怒りを買う。それ以来彼はどこに行っても煙たがられ、生活に窮するようになった彼は盗みを働くなど堕落してゆき、ついに彼は村から姿を消す。
しばらく姿を消していた阿Qが戻ってきた時、村人たちは阿Qの様子が変わったとしばらく恐れたが、何も変わっていないことが判明するとまた、阿Qは馬鹿にされるようになった。
そういった状況に不満を抱いていた阿Qは、革命党の威を借りて村人たちに高圧的に接するようになる。しかし、革命党がその地の権力者の家を襲撃したことを受け、阿Qは捕まってしまい、ついには銃殺されてしまう。
彼はプライドだけは高く、何もしない人間の典型として描かれている。
この小説は魯迅が当時の中国人社会を批判して書いたのだと言われているが、おそらくこのような人は世界のどこに行っても存在するではないかと思う。
さて、彼の悲劇はその「プライドの高さ」から始まる。
自分の弱さをひたすら覆い隠し、勝った気になる彼の姿は「ポジティブシンキング」といえば聞こえは良いが、滑稽なほど悲惨である。
インターネットの隆盛により、人は自分の隣人のことが必要以上に見えることになってしまった。マルハニチロホールディングスの農薬混入事件の犯人も、秋葉原の通り魔も、「負けや自分の弱さを認めることができない」といった一種の現代病に侵されていたのだろうか。
阿Qという人物に込めた魯迅の皮肉は、今なお現実の社会問題である。
(2025/6/16更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第4回テーマ 地方創生×教育
2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。
地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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