素直な人ってどんな人だろうか。
ひねくれたところがなく、真っ直ぐな人。そんなイメージが一般的だと思う。嫌味で言われるようなことでもなければ、大抵ポジティブな意味で使われる。
では、「素直だね」と言われたらあなたはどう感じるだろうか。たぶん、これまでに一度は誰かから言われたことがあると思う。
「そうか、私は素直なのか。ありがとう」とそのまま受け止めた人は、本当に素直なんだと思う。
私はこれまで素直だと言われることが(人並みに)何度かあった。
それはおそらく好意的な意味だったと思うし、私も好意的に受け止めていた。
けれど、一方でその言葉には「単純で何も考えていない人」という意味も含まれているんじゃないか。何を言われても反発しない従順で使いやすい存在だという意味もあるんじゃないか。そんなことも思ったりした。
「何も考えていないように見える」ことの裏返しが「素直」なのかなあ、と素直であることを素直に受け止め切れていないひねくれた自分もどこかにいたのだ。
考えてみてほしい。考えた末に相手に同意している人と、何も考えずに常に従順でいる人がいたとして、両者のその時の“素直さ”に区別はつくだろうか。
相手のことをよく知っているならどちらなのかわかるかもしれないけれど、知らない人の一時の一場面だけ切り取っただけでは、はたから見たら区別がつかないと思う。そう考えると、思考停止状態であることも、素直といえば素直になってしまうのではないだろうか。
「思考が停止しているね」と言われたら、ショックを受ける。でも、素直さと思考停止の間の壁はそんなに厚くない。その壁の薄さが、心のどこかでずっと気になっていた。
★★★
1ヶ月前、私は職場の先輩複数名に「私ってどんな人ですか?」と聞いた。
突然自己分析しようと思い立ったわけではない。会社の課題だったからだ。
「自分をブランディングしてみよう」という研修の事前課題として、自分の良いところ、改善したほうがいいところをヒアリングする、というものがあった。
そこで上司や他部署の先輩に自分のことを尋ねてみたのだ。
正直なところ、新しい発見はほとんどなかった。
誰しも過去に誰かから言われたことや他者との比較などから、なんとなく「自分ってこんな人」というイメージがあると思うが、ヒアリングした内容はその自己認識とほぼ一致していた。
ただ1つ印象に残っている話があって、それが「素直である」という点だった。
ある人が私の良いところの1つに「素直であること」を挙げた。(自慢しているような内容と捉えられてしまうかもしれないけれど、決してそういう話ではないことを補足しておく。)
素直だと言われたこと自体は特段印象的ではなかったのだが、「じゃあ素直ってどんなところが?」という点を詳しく聞くと、想像していた「素直」とは大きく異なる非常に興味深い話を聞くことができたのだった。
その人が言うには、素直というのは「論理的で客観的な思考力及び理解力」と言い換えることができる。もっと簡潔に一言で表すと「良識がある」ということになるらしい。
どういうことかというと、たとえば素直さを感じる場面として「無駄な反発をしない」というのがある。
これは反対意見があるのに言わない、といった意味ではなくて、相手の意図を正しく理解し、論理的に考えて間違っていないことがわかっていれば納得できるところで反発したりしない、という意味である。
こうやって書くと当たり前のことように感じられるけれど、「論理的で客観的な思考力及び理解力」がない人は、屁理屈を言って従わなかったり、的外れな批判をしたりする。そういうことをしないのが、素直なんだ、と。
そんなような話だった。
もちろん、常にそのようなことができているかというとそんなことはなくて、屁理屈を言って反発してしまうこともあるし、意見を言うべきところで言えず、従順になってしまうこともある。
素直さについて解説してくれた人は、私が素直だった場面をたまたま見て、そういう一面もあるということで挙げてくれたのだと思う。
だから「自分は良識のある人間である」とか「思考力と理解力に優れた人間である」と言いたいわけではない。
そうではなく、素直の捉え方がガラッと変わったことが自分にとってすごく大きなことだったので、同じような“ひねくれ者”がいたらぜひ伝えたいと思って記事にしている次第だ。
私はこの時初めて心の底から「素直である」ことを肯定的に受け止めることができたように思う。
ずっと引っかかっていた小さな棘が取り除かれた瞬間だった。
表面的には同じ「素直」でも、思考停止から来たものと「論理的で客観的な思考力及び理解力」から来たものでは中身は随分違う。
ポジティブな言葉の響きに惑わされることなく本質を見抜く力をつけたいと思う。
素直さの内側を覗くことができたとき、そこには性格としてではなく、能力やスキルとして捉えられるものがあるのだろう。
素直さだけではなく、私たちが普段なんとなく性格や人柄だと認識しているものも、しっかりと中身を捉えれば能力やスキルとしての側面が見えてくるのかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」
- 矢野 友理,STUDY HACKER(協力)
- マイナビ出版
- 価格¥385(2025/06/04 10:41時点)
- 発売日2015/02/27
- 商品ランキング286,883位
「LGBTのBです」(総合科学出版、2017/7/10発売)
LGBTのBです
- きゅうり
- 総合科学出版
- 価格¥1,250(2025/06/04 03:59時点)
- 発売日2017/07/10
- 商品ランキング418,009位
(Photo:Andree Kröger)