2018年に読んだ中で最も面白かった本を紹介しよう。”ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち”だ。

本書はインターネット上で炎上にあった人が、その後どういう風になったのかを追跡調査したもので、予想の斜め上をいくような興味深い事実がたくさん書かれている。

 

僕を含め、結構多くの人がインターネット上で不謹慎な行いを行った人を気軽な気持ちで嘲笑の対象として吊し上げがちだけど、ではその気軽な行いの結果、その人の人生がどうなってしまうのかについてをキチンと知っている人は少ない。

 

この本はSNS時代における自衛の書であると共に、過去に行った自分の行いに対する懺悔のキッカケとなる本である。

以下、どういう事かをみていこう。

 

たった1つのツィートで人生が壊れた女性

2013年12月20日のことだ。ある女性が、飛行機に乗る前に170人ほどのフォロワーにむけて、このようなつぶやきをした。

「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」

 

彼女はそのまま飛行機に乗り込んだ。11時間のフライトの後、携帯の電源を入れると、このような友人からのコメントが飛び込んできたという。

「今、あなたはツイッターで全世界のトレンド第1位になっているのよ」

彼女のつぶやきは、たったの11時間のフライトの間に”大変な人種差別”であると判断され、記録的な大炎上を遂げていた。

 

この女性はジャスティン・サッコという。ひょっとしたら、彼女の事を覚えている人もいるかもしれない。

彼女は結局、この一言がきっかけで仕事をクビになった。

 

SNSは物事を極端に単純化させる

実は僕も当時このつぶやきについて、なんらかのアクションをとった記憶がある。

たぶん拡散した上で「馬鹿な奴がいるなぁ。こんな事いうぐらいだし、罰せられて当然だ」みたいなニュアンスの事を言及したような記憶がある。

 

しかし事件から5年たった今ふたたびこの件について考えてみると、確かに不適切な発言かもしれないけど、あんなに大炎上した上で、おまけに仕事を辞めさせられるような悪事だっただろうか?と思う。

 

インターネット、とくにSNSは複雑な物事を単純化させがちだ。

この発言をしたジャスティン・サッコさんにしたって、本当なら140文字では語りきれないぐらいの複雑な人間性があったはずだし、実際この問題となったツィートは一種の皮肉を込めたジョークなのだったという。

 

それなのに、SNS上の彼女は140文字のチカラで単純化され、まるで極悪な人種差別主義者のような扱いをうけるハメになってしまった。

そして極悪人のレッテルを貼り付けられた人に、ネットの民は容赦がない。

彼女には弁護する権利など当然あたえられず、誰からどんな酷いことをいわれようが、それが当然であるようにみなされていた。

 

これははっきり言って、めちゃくちゃに異常事態である。

今から振り返ってみると、まさに大衆が狂気に飲み込まれ、みんなの頭が熱病に犯されていたとしか思えない。これはまるで”空気を読むのが下手”だから”いじめられて当然”とされる小中学校のイジメと同じではないか。

 

実は僕はかつて学生時代、空気を読むのが非常に下手で、かなりイジメに近い扱いをうけていた事があった事がある。

そのこともあってイジメが本当に嫌いなのだけど、この本を読みながら、自分も結構インターネット上で、このような”断罪をくだされて当然”というレッテルを貼り付けられた人たちの事を、学級裁判にかけるが如くリツィート等を行い晒し上げるような行為を結構やってる事に気が付き、愕然とさせられた。

SNSは分別ある大人の知能を、小学生並みに低下させるのである。なんて恐ろしい装置だろう。

 

学校では、空気が読めないやつがイジメられる。

それと同じように、インターネットでも空気が読めないやつは平気で晒される。

実はインターネットは、巨大な小学校であり、日々起きている炎上は空気を読むのが下手なやつをみんなでよってたかってイジメているのと全く同じ様相なのである。

 

永遠に記録が残るGoogle検索

インターネットの炎上が学校のイジメと比較してタチが悪いのは、記録が永遠に残り、おまけに誰でも容易にアクセスできるということだ。

さっきのジャスティン・サッコさんだけど、炎上事件前は米国のインターネット企業で広報担当をしており、年収は1500~2000万円もあったのだという。実は、米国でも割とエリート階層に位置していた人であったのだ。

 

彼女はそのインターネット企業をクビになったのだけど、その後がまた特に酷い。

就職活動を行うと、当然だけど普通の企業はみんな一応応募者の名前をグーグル検索にかける。

 

すると、彼女について出てくる情報はTwitterの炎上事件ばかりなのである。こんな火種を持った人間を雇いたがる上場企業はまずない。結局、彼女は普通の仕事には長い間戻れず、ずっと無職を強いられた。

彼女はその後、アルバイトなどで社会に復帰を図ったりしたようなのだけど、働きながらいつも雇用主が自分の名前をグーグル検索にかけるかビクビクしながら働くハメになり、そのせいで心を病む事も多く、仕事も長続きしないのだという。

 

僕はこれを読んで本当に胸が傷んだ。僕も学生時代は空気が読めなかったから、随分と酷いイジメみたいな事をされたけど、それはまあ黒歴史みたいなもので、グーグル検索にかけられるような性質のものではない。

結果、いま僕が所属する社会でそれを話題にする人はまずいないし、仮にいたとしても別に笑ってネタにできる位には僕はそこそこ成功した。

 

グーグル検索は確かに便利だ。一度として使わない日はない。

しかし、ジャスティン・サッコさんの件をみて、永遠に禊(みそぎ)の機会が訪れず、忘れ去られもしない黒歴史を押し付けられるという悪魔のような使われ方をされていると知り、果たしてこれは人類が使っていいものなのだろうか?

少なくとも検索されない権利ぐらいは付与しないとヤバイんじゃないかと思わされたのだ。

 

昨年もポリコレの話題が随分と話題になったけど、実際最近のTwitterはかなり酷いと思わされる場面に出くわすことも多い。

Twitterはもやは法律によらない私的裁判の場所となっており、日々空気を読めないツィートをした人が学級裁判にかけられている。

この学級裁判に、超簡単に検索できて・永遠に残るログであるGoogleが組み合わさり、まるで効果が永続する破壊魔法のような有様を呈している。

 

TwitterとGoogle検索は、現代に終わりなき魔女裁判を出現させたのである。

高度に発達した科学技術は魔法と区別がつかないというけれど、これぞまさに現代を代表する黒魔術といっても過言ではないだろう。

インターネットは弱い人が強い

インターネットで最も強いのは、顔のない弱い人だ。

 

ちょとまえに、春名風花さんが有名税というブログをあげられ、大変に拡散していた。これも実に心が痛む文章であった。

有名税|春名風花|note

有名な人間にはどれだけ悪意をぶつけても良いと思っている人が大勢いる。

しかも彼等は咎められると「軽い気持ちで感想を言っただけなのに反応されて傷つきました。あんな人をテレビに出さないで下さい」と匿名でクレーム出来る切り札を持っている。

更にその言い分で分が悪くなれば、黙ってアカウントを消して逃げられる。いつだって顔のない人たちは自由だ。

幼い頃、ひょんなことから「twitter」という本意ではないところで有名になってしまった彼女は、若干”正論”を言い過ぎる事もあってインターネットで槍玉に挙げられる事が多く、そのため何年もの間、身の丈に合わない多くの有名税を支払されたという。

 

ストーカー対策や防犯にかけたお金、何度も警察に呼ばれる事で削られたスケジュール、弁護士への相談に通った日々、かかった労力もかなりのものになるという。

 

僕はかつて芸能人のブログが本当に嫌いで、なんでこの人達は面白いことをいわないのだろうか?とずっと悶々としていたのだけど、ある時、顔がある彼らにとっては、面白い事をいうのはリスクがあまりにも高いという事をしって愕然とした事がある。

 

芸能人のブログが挨拶と手料理ばかりになりがちなのは、それが一番燃えないからだ。

顔がある人の有名税は高い。”正論”というソードを振りかざせるのは、顔がない弱者くらいのものなのだ。

有名人がそれをしたら、春名風花さんのように有名税という高すぎるコストを支払わされるのである。

 

これを読んでいる多くの人は、どちらかといえば強者というより、顔のない弱者に近いだろう。

確かに私達は一人一人でみれば弱い。だが、それゆえに私達は時として、ジャスティン・サッコさんのようなインターネット上で”空気を読むのが下手”な人間の人生を、破滅へと導いてしまう事がある。

 

なんでも容易に拡散してしまうこんな世の中だからこそ、私達はインターネット上でポリコレやら炎上案件をみたときに、あえて”言及しない”努力をするように努めていくべきなのだ。

 

あなたの気軽な気持ちで行った”いいね!”や”リツィート”が、他人の人生を壊す事もあるという事を忘れてはならない。

天に向かってはいた唾は、いつか自分の顔に落ちてくるものなのだから。

 

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(2019/4/15更新)

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

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(Photo:Jurgen Appelo