しんざきは、「会社の(ある程度フォーマルな)親睦飲み会の幹事を何故か若手がする」ということに反対する立場です。

もうちょっと率直にいっちゃうと、「飲み会の幹事は若手にやらせとけ」という風潮が嫌いです。

 

いや、すいません、そんな大した話じゃないんですけど。

 

毎年、忘年会とか、新年会とか、歓迎会の季節になってくると、大体話題に挙がってくることとして、「若手に飲み会の幹事をさせる問題」というものがあります。

会社である程度フォーマルな飲み会や懇親会があるとして、日程調整とか、出席調整とか、会場手配とか、当日の取り仕切りとかを若手社員、特に入社1〜2年目の若い社員にさせるという風潮です。

 

これは私が観測した範囲内の話なんですが、「若手に幹事をさせる」ことについて、賛成派にはちゃんとした理由がありまして、よく聞く理由は次のようなものです。

 

・若手にはまだ振れるタスクがあまりなく、暇なことが多いから

・飲み会の仕切りをすることで、仕切りの能力を身に着けることが出来るから

・出席調整をする過程で社内の人間の顔を覚えることが出来るから

・社内で顔が売れるしメンバー間で仲良くなってもらいやすいから

 

私はどちらかというとマネジメント側の立ち位置に属する人間なんですが、これらの理由について反対していますし、その理由も社内で公言しています。

その為、ある程度フォーマルな飲み会の幹事は、私を含めてある程度ベテランの社員が持ち回りでやるようにしています。

 

私が反対する主要な理由は以下のようなものです。

 

・振れるタスクが少ないのであれば一刻も早くタスクを振れるスキルを身に着けてもらうのがマネージャーの責任であって、他のことに時間を割いて欲しくないから

・飲み会の仕切りで身につくのは、飽くまで飲み会の仕切りであって仕事の仕切りではなく、応用の経験が少ない若手にこそ、仕切りは仕事で覚えて欲しいから

・出席調整なんてそれこそある程度立場がある人間がやることであり、諸々の事情込みでマネジメント層の方が予定調整しやすいのは自明だから

・社会経験が少ない若手よりもマネジメント層の方がいい店をたくさん知っている筈だし、文句を言いやすい立場の人間が店を決めるのがより合理的だと思うから

・メンバー間で私的に仲良くなってもらって助かるのは若手自身よりもマネジメント層であり、受益者がより多くコストをとるべきだと考えるから

 

こんな感じです。

これらの理由について、ちょっと細かく説明させて頂きたいと思います。

特に説明したいのは五つ目です。

 

まず、一つ目。「若手の方が振れるタスクが少なくって暇だから」という話ですが、これはそれこそ「触れるタスクが少ない」という状態自体がマネジメント層として問題だと考えなくてはならず、スキルアンマッチならその状態を解決しなくてはいけません。

だったら、何よりまず仕事の為のスキルを身に着けてもらうことこそ最優先であり、「暇だから」という理由で飲み会の幹事なんてタスクを押し付けるのは本末転倒です。

 

二つ目。「仕切りの能力が身につく」という話ですが、それはそれこそ「仕事の仕切りに生かさせたいなら仕事で仕切りを覚えさせろよ」という話でして。

もちろん中には、他の仕切り経験を仕事の仕切りに応用できる能力を持っている人だっていますが、一般的に新卒の面接で話すと喜ばれる「サークルの仕切り経験」だとか「イベントの主催経験」みたいなものが仕事で生きるケースが殆どないことを見て頂ければわかる通り、仕事のマネジメントスキルは基本仕事でしか身に付きません。

若手にこそ仕切りは仕事で覚えさせましょうよ、って話です。

 

三つ目。出席調整の話なんですが、弱い立場の人間が格上の立場の人間の予定を調整することはそれこそ難事であって、「行けたらいく」とだけ言われていつまでも予定が定まらず若手のストレス要因にしかならない、といったことは非常によくあることです。

飲み会への出席が自由意志であることを前提として、予定調整こそある程度立場がある人間がきちんとオファーを出して、軽んじられない立場でするべきです。

 

四つ目。これも非常によく聞く話として、「若手が選んだ店に、ベテラン層がねちねちケチをつける問題」というものがあります。

私、実はこれもめっちゃ嫌いでして、「文句あるなら自分で選べよ」と思うところ大なんです。

 

若手なんてつい先日まで学生だったんですから、安い店しか知らないのは当然。

いい店をたくさん知っているのはベテラン層なんだから、そりゃそれこそベテラン層が店選んだ方がずっといいでしょと。

立場がある人間が選んだ店なら文句も出にくいですし。

 

で、五つ目なんですけど。

自分がマネジメントをするようになって得た知見って結構色々あるんですが、その中の一つに

「部下同士仲がいいとマネジメントがちゃんと出来てなかった時に助かるケースが多い」

というものがあります。

 

どういう話かというと。

例えば、完遂までに「工程A」「工程B」「工程C」の三つ工程が必要なタスクがあったとしましょう。

で、それぞれの三つの工程は、別々のスキルを持った別々の人物が担当しないと実行出来ず、かつA→B→Cは順番に実施しないといけないものとしましょう。

 

この時、当然のことながらマネージャーは進捗管理と品質管理をしなくてはならず、例えば工程Aの実施が遅れてBに入る時期が遅れてしまったりとか、工程Bの品質が悪かった為に工程Cの工数が肥大化してしまったりしたとしたら、それは本来マネジメントの失敗です。管理者何やってたの案件です。

ただこの時工程A・B・Cをそれぞれ担当した作業者同士の仲が良いと、その問題を作業者同士で吸収してくれたりするんですよ。「まあいいよ、やっとくよ」ってヤツですね。

 

これ、非常に多くの職場で観られるケースだと思うんですが。

ただ仕事をうまく回すだけなら、本来「作業者同士が仲がいい」必要なんてないんですよね。

必要なのは的確なマネジメントで、作業者は粛々とマネジメントに従ってタスクを片付けていればちゃんと仕事が進む、というのが本来あるべき状態なわけです。

 

よく「アットホームな職場です」なんて言葉がありますが、アレ、実際中を覗いてみると「マネジメントがいい加減なところを作業者同士の仲の良さでなんとか吸収している職場です」という意味である場合がそこそこの頻度で観られます。

あんまりいうと怒られそうなのでこれくらいにしておきますが。

 

もちろん、時にはマネジメントがやむを得ず失敗することもあるかも知れず、そういう時に「作業者同士の仲の良さ」がプロジェクトを救う場合もあることは事実ですが、それならそれこそ受益者であるマネジメント層が部下同士の親睦に対してコストを追うべきであって、それを「仲良くなっといてね」とばかりに押し付けるのは違うでしょ、と強く考えるわけなんです。

 

以上のような理由で、私は「ある程度フォーマルな飲み会の幹事こそ、マネジメント層がやるべきだ」と主張している、という話なのです。

 

私にとっては幸いなことに、今私がいる職場は割と上記のような話に理解がある方が多く、というか何より店の好みがうるさい連中が多過ぎて若手に店を任せられないという事情が大きいため、無事マネジメント層が合議制で店を決める体制になっております。皆様の職場はいかがでしょうか。

「飲み会の幹事誰がやる」というだけの話ではありましたが、真剣に考えてみると案外色々あるよね、という話でした。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

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(2024/3/26更新)

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Tatsuo Yamashita