新型コロナウイルス感染症のせいで暗いニュースの多い今日この頃だが、先日、なんだかほほえましいニュースが流れてきた。
(CNN) イタリア北部カステルベトロ町の民家約20棟で水道の蛇口やシャワーの先端部から赤ワインが約3時間流れ続ける珍事がこのほどあった。
地元のワイン醸造所で不具合が起き、瓶詰めを控えていた銘柄「ランブルスコ・グラスパロッサ」が町の水道管網に漏れたための騒動。流出量は1000リットルだったという。
酒飲みなら誰でも「ひねれば自分の好きなお酒が無限に流れてくる蛇口」を夢見たことがあるはずだ。
少なくとも私は、いつも夢見ている。
うちにも「ひねれば好きなワインが流れてくる蛇口」が欲しい。
後で詳しく触れるが、このニュースに登場した「ランブルスコ・グラスパロッサ」という赤ワインは、まさにそういう「ひねった蛇口から流れてきて欲しいワイン」のひとつだった。
もし、我が家にこんな蛇口ができたら、嬉しさのあまり、飲む前に錯乱してしまうだろう。
「蛇口から流れてきて欲しい」のは毎日飲めるワイン
もしあなたが、神様から「おまえの家にワインが無限に飲める蛇口をつけてやろう、ただし一種類だけ、絶対に転売できない条件付きで」と言われたら、どういうワインを選ぶだろうか。
ボルドーの格付けワイン?
ブルゴーニュの特級ワイン?
いやいやいやいや。
そういう超高級ワインが無限に飲める蛇口は、たぶん始末に負えないと思う。
有名どころの超高級ワインは、たしかに素晴らしい。
けれども毎日飲むには向いていないし、風味が強すぎるせいで、たいていの料理を蹴散らしてしまう。
そのうえ「熟成」を経ていない超高級ワインは、ガビガビした飲み心地のしんどい品も多い。
疲れている日に飲んだら苦行になってしまうだろう。
水道の蛇口をひねって出てくるワインは、疲れた日にも飲めて、いつもの家庭料理、それこそチンジャオロースからカワハギのお味噌汁まで、なんにでも付き合ってくれるようなワインでなければ困ると思う。
じゃあ、具体的にはどんな銘柄が「なんにでも付き合ってくれるワイン」なのか?
世の中には、3リットルほどのボックスにワインを詰めて小さな蛇口をつけた、まさに蛇口をひねったらワインが流れてくる商品が存在している。
ところが、こういうボックスタイプのワインは「なんにでも付き合ってくれるワイン」ではない。
バーベキューのお供にはぴったりだけど、繊細な料理のお供には向いていなくて、とりわけ寿司や刺し身との相性はかなり厳しい。
肉やハンバーガーやピザしか食べない人なら、これでOKなのだろうけれども……。
「激安の白ワイン」はピザや卵料理との相性は良いけれども、新鮮な魚介類や寿司との相性はあまり良くない。
モノによっては、サーモンとの相性もイマイチだったりする。そういう白ワインが蛇口をひねって流れてきても嬉しくない。
赤でも白でも、「蛇口をひねって流れてきて欲しいワイン」は、どんな料理にも付き合ってくれて、飲んでキツくない、飽きないワインであって欲しい。たとえば赤ワインなら
この赤ワインならどんな料理にも付き合ってくれて、飲んでキツくなる心配もない。
それでいて、飽きることもない。特別な日に飲むワインとしてではなく、毎日飲むワインとしてのクオリティが果てしなく高い。ピザ、和食、洋食、宮廷料理、どんな料理が相手でも付き合ってくれる。
ところが残念なことに、このワインには異常なプレミアがついてしまい、手が届かない品になってしまった。
けれども蛇口から流れてきて欲しい赤ワインナンバーワンは、間違いなくこれだ。
白ワインなら、
こういう2000円~3000円ぐらいの、酸味やミネラルのしっかりした、それでいて魅力的な香りの白ワインは「蛇口から流れてきて欲しいワイン」だ。
ここではコストパフォーマンスの良いクロアチア産を挙げたけれども、カリフォルニアにもフランスにもイタリアにもそういう白ワインがある。
もし、これらの赤ワインや白ワインが蛇口から流れてくるようになったら、いつまでも飲み続けてしまうだろう。
ということは、私がアルコール依存症にならずに済んでいる理由の一端は、無限に飲んでも飲み飽きないクオリティのワインを大量購入するだけの経済力が無いからかもしれない。
このクラスのワインがジャーッっと出てくる蛇口なんて、神様におねだりしてはいけない、のだろう。
で、ニュースのワインは「蛇口から流れてきて欲しいワイン」だったのか
では、ニュースでとりあげられた「ランブルスコ・グラスパロッサ」は蛇口から流れてきて欲しいワインだったのか?
そもそも、あれはどこのどんなワインだったのか?
イタリアグルメに詳しい人なら、「ランブルスコ・グラスパロッサ」という名前をどこかで聞いたことがあるかもしれない。
このワインがつくられているのはエミリア・ロマーニャ州、イタリアでもとりわけ美食で名高い場所だ。
ワイン批評家のマット・クレイマーは『イタリアワインがわかる』のなかで、このワインについて以下のように評している。
こってりとした、美味しくて太りそうな料理こそランブルスコの相方である。
地元の人が食べるのは、サラミ、濃厚なラザーニャ、チーズたっぷりのピザ、赤ワインで煮込んだウサギやら牛肉やらのさまざまな料理、そして何をおいてもこの地が世界に誇るチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノである。
甘味があるほうは、果物や、アーモンドの風味をつけたさまざまなケーキに合わせる。
ドルチェのランブルスコには、柔らかなアマレッティ(マカロン)が好んで供される。
焼き栗にもすばらしくよく合う。
すべからくランブルスコは冷やして飲むのがよいが、冷やしすぎは禁物である。
この評を読むだけでもよだれが出てきそうだが、実は、和食が相手でも意外にいける。
なぜなら、この「ランブルスコ・グラスパロッサ」は発泡性の赤ワイン、つまりスパークリングワインだからだCNNの記事に貼られた動画からも、このワインが泡立っているのがみてとれる
一般に、スパークリングワインは食べ合わせの融通が利きやすく、この「ランブルスコ・グラスパロッサ」も例外ではない。
さすがにハマグリの吸い物と合わせるのは厳しいかもしれないが、たいていの家庭料理の相方をつとめてくれる。
では、ニュースになった地元のワイン製造所はいったいどこだったのか?
気になって調べてみると、CNNの英語版に、そのものズバリの答えが書いてあった。
Here’s what happened, according to the Cantina Settecani winery.
The malfunction was caused by a faulty valve in the washing circuit within the bottling line. Lambrusco Grasparossa, a local specialty, seeped through the town’s water lines due to its pressure, the winery said in a statement obtained by CNN.
蛇口からワインを流してしまったワイナリーは、エミリア・ロマーニャ州はカステルヴェトロ村にある、カンティーナ・セッテカーニ社であるという。
このワイナリーの「ランブルスコ・グラスパロッサ」は日本にも流通していて、リンク先の楽天ショップで購入することができる。
北イタリアのグルメを楽しんで、ちょっと応援したい
報道によれば、この「蛇口からワイン」のあったエミリア・ロマーニャ州にくわえて、ロンバルディア州・ヴェネト州の北部イタリア三州が、新型コロナウイルス感染症にとりわけ苦しんでいるという。
これら三州は、いずれもグルメの産地としても名高い。
ロンバルディア州ではスパークリングワインのフランチャコルタが、ヴェネト州では白ワインのソアーヴェ・クラシコや赤ワインのアマローネが有名だ。
食品でも、ミラノサラミやプロシュート、ポルチーニ茸やホワイトアスパラガスなどおいしいものには事欠かない。
これら、北イタリア三州のワインや食品を積極的に買えば、ささやかながら当地の応援になると思うので、私は優先的に買おうと思っている。
くだんの「ランブルスコ・グラスパロッサ」も、ワイン初心者にも安心してオススメできるスパークリング赤ワインなので、興味をお持ちになった人は、ぜひお試しを。
きっとおいしい応援になるんじゃないかと思う。
※ワインをネット通販で購入する際は、クール便の使用をお勧めします。
※節度を守って呑めない人は買ってはいけません。未成年は論外です。
※妊娠中・闘病中などの事情で飲むべきではない人も、飲まないようにしましょう。
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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
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(2026/01/19更新)
【プロフィール】
著者:熊代亨
精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。
通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)など。
twitter:@twit_shirokuma
ブログ:『シロクマの屑籠』

(Photo:CNN https://www.cnn.co.jp/world/35150465.html)








