どうもこんにちは、しんざきです。

しんざきは暑いのが極めて苦手な生き物でして、在宅勤務中は大半の時間をタンクトップで過ごしています。

5月だというのに既にこんなに暑いと、正直7月8月を生きて乗り切れる気がしない。

 

ちょっと前の記事で、こんなことを書きました。

「会議でトンチンカンな発言をするベテランエンジニア」の、深い洞察。

やっぱ絶対評価って難しいんですけど、相対評価ってわかりやすいんですよ。

対立軸が発生すると面白いし、理解もしやすい、参加もしやすい。

「悟空が一人で飯食ってるだけのドラゴンボールはただのニート漫画だけど、べジータと戦い始めるとなんだか面白いよ理論」というヤツです。

ごめんなさい、私自身は「悟空が一人で飯食ってるだけのドラゴンボール」も多分割と好きなんですけどそれは一旦置いておいて。

 

「人間、絶対評価よりも相対評価の方が遥かに理解しやすいし、話も飲み込みやすい」

ってこと自体は多分当たり前の話で、相手に何かを「分かりやすく」説明するとしたら、必ず頭に入れておかないといけない大前提です。

これは間違いありません。

 

ただ「テスト70点だった!」とだけ言われると、ふーんそーなのかーってなっちゃいますよね?

一方、「平均点32点のテスト、40人のクラスで60点以上は4人だけ、その中で最高点の70点!」って言われると、「うおおそりゃすげえな!!」ってなるじゃないですか。

何か比較するべき物差しがあった方が、物事理解しやすいし納得しやすい。それは当たり前。

 

更にそれに加えて、「対立軸の導入」っていう話があります。

相対評価の中でも、特に対立関係というのは分かりやすい。

 

例えば、ライバル会社と自社の間の関係。

自社にはどんな強みがあって、どんな弱みがあるのか。

それは、ライバル会社のどんな点に勝っていて、どんな点に劣っているのか。こういう話、凄く分かりやすいですよね?

 

誰しも強弱関係には敏感ですし、喧嘩には興味を持ってしまいますので、「対立関係」って人の目を引き付けやすいし分かりやすいんですよ。

だから、説明が上手い人は、自分の話にとても上手に対立軸を持ち込みます。

 

Buzzらせる為のテクニックとしても、「分かりやすい対立軸を導入する」っていうものがあります。

大体の炎上案件も何かしらの対立構造を持っていますよね。対立軸重要。

 

ここまでは、ある程度プレゼンの経験がある人なら誰でも知っているし、誰でも無意識の内に使っているテクニックだと思うんですよ。

 

ただ、この時ちょっと面倒な話として、

 

「対立軸を導入して分かりやすく説明するのが便利かつ強力過ぎて、本来適切でない対立軸でも導入してしまい勝ち」

「結果的に、「どちらかを上げてどちらかを落とす」ないし「どちらかをダシにしてどちらかに利益をもたらす」論法になってしまい勝ち」

「結果的に、そこから余計な敵を作ってしまい勝ち」

 

という罠があるんです。

 

これ、プレゼン慣れしてる人であればしてる人である程、陥りがちな罠だと思います。

いやまあこれについては私自身にもブーメランが刺さりかねないんですけど、一旦ブーメランの存在に気付かなかったことにして話を進めます。

 

先日炎上案件として、演劇の産業構造についての話が持ち上がっていました。

平田オリザさんの一件ですね。

論点は色々とあるんですが、平田氏ご自身の意見を恐らく過不足なくまとめているであろう、平田氏自身の筆による下記記事をちょっと引いてみましょう。

NHKにおける私の発言に関して

私のNHKの番組出演をきっかけに、私が製造業を見下しているという、まったく根拠のない悪意のツイートが繰り返されています。

個別のツイートには返答をしない方針ですが、記録のために、あらためて番組で語った内容を書いておきます。

全文は、以下のサイトでご覧いただけます

https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/04/0422.html

当初炎上のきっかけになったのは、この記事内でも引用されている

「製造業の場合は、景気が良くなったらたくさんものを作って売ればある程度損失は回復できる。でも私たちはそうはいかない。」

という発言でしたよね。

 

これ自体は恐らく、平田氏には本当に悪意は何もなくて、この記事でも書かれている通り純粋に

ですから、ここまでの議論はあくまで、相対的に見て、エンタテイメント産業は製造業に比べて増産がしにくく、大きな儲けが見込めない収益構造を持っているという話です。

ということを言いたいだけのご意図だったのだろうなあ、と私は思うんですよ。

 

多分ここだけを切り取って「製造業を見下している」と指摘するのはさすがにちょっと悪意のある読み方過ぎるのではないかなあ、と。

 

ただ、ここで製造業を引いたことが適切だったかというと恐らくそれは適切とは言い難くって、いみじくも平田氏自身がおっしゃっている

よく、「公演回数を増やせばいい」というご意見を聞きますが、日本の場合は劇場を借りている期間が決まっており、次に上演される演目も決まっています。

これと同じような問題は、正直どんな製造業でも抱えている訳です。

 

ちょちょっと工場のラインの稼働率を挙げればはい増産出来ましたー、というような話ではないし、そんなお手軽製造業は恐らく存在しない。

 

製造計画どうすんの、人員計画どうすんの、在庫管理どうすんの商流どうすんの、増やした製品どうやって出荷してどうやって捌くのといった話は目盛りを上げ下げするような話ではなく、端的にいって滅茶苦茶色んな調整が必要なわけです。

平田氏は「相対的には製造業の方が増産がしやすい」とおっしゃっているわけなんですが、その認識自体が実は非常に怪しい。

 

「もちろん、製造業でも増産のしにくい分野もあります」

とまでは平田氏もおっしゃっていますが、そもそも「難易度」という視座でいえば「増産がしやすい分野」などというもの自体が存在しない。

 

演劇の公演回数増やしたり座席数増やすのとどっちが難しいの?という面倒な話になっちゃうわけで

「そもそも対立構造の例として製造業を持ち出すこと自体が適切でなかった」

ということは言ってしまっていいと思うんです。

 

ちなみにこの後、平田氏は漫画業界やら科研費についてもやや雑な取り上げ方をされて追加炎上されてますね。

まあこれは、須賀原洋行先生との会話の中で出てきた話ではありますが。

 

平田オリザさん、炎上した発言は悪意のある切り取りだと主張する

ただ、繰り返しになりますが、これ平田氏自身には恐らく本当に悪意はなくって、本当にただ「分かりやすい論法」として相対評価、対立軸を話に導入しただけなんだろうなーと思うんですよ。

ただ、対立軸がお手軽に強力過ぎて、本来導入するべきでない対立軸にまで手を出してしまった。

 

こういうの、実は今回の例だけでなく、すごーーく色んな所で見るんですよ。

分かりやすく説明する為に悪意なく対立軸を導入して、結果的に本人の意図しないところで「どっちかを上げてどっちかを落とす」論法になってしまって余計な敵を作る人。たっっくさん見てきました。

なまじテクニックとして有益であるだけに、プレゼン上手い人であれば上手い人である程ハマりがちな罠です。

 

むしろ、これだけ批判されつつも無意識に繰り返してしまう程、「対立軸の導入」が説得力ドーピングとして有益だって話なんじゃないかと。

 

これは一般論として言っていいと思うんですが「どっちかを上げてどっちかを落とす論法」ないし「どっちかを利用してどっちかに益をもたらす論法」というのは危険です。

 

余計な敵を作りますし、上げた側に対しても何らかのダメージを遺します。

そして、安易な「対立軸設定」は容易にここに流れ込みます。

場合によっては、話し手の信頼度を毀損する強烈な要因にもなっちゃうわけです。

 

今回の一件って、その「対立軸の強力さと危険性」を示す、端的なサンプルになったんじゃないかなーと私は思うんですよね。

 

ところで、手前みそで申し訳ないですが、もう一つ過去記事を引かせてください。対立軸導入に伴うもう一つの罠です。

頭がいい人は「分かりやすい説明」をする時、何を考えているのか

「たとえ話は、有効な場合もあるけれど、特に技術的な分野だと基本「わかった気にさせる」意味しかない。というか、たとえ話で正確な理解が得られることはまずない」

これ、私が色んな人から聞いた言葉の中でも最大限に有益な言葉だと思ってるんですけど、基本「たとえ話」って正確な理解に寄与しないんですよね。

 

もともと、本来論点となっている構造から話をずらして、「似ているけどよりシンプルな構造」を引っ張ってきて理解の助けにしようとするのがたとえ話です。

つまりたとえ話自体は情報量を増やさない。

 

場合によって理解の助けになることがあるのは確かであって、たとえ話自体の有用性を否定するわけではない(というか私自身たとえ話なんてしょっちゅう使いますし)んですが、「たとえ話で得られるのは正確な理解ではない」ということについては、割と重要な認識として持っておいた方がいいと思うんですよ。

 

ただ、対立軸と同じ話なんですが、たとえ話も「分かった気にさせる」効力は割と強いので、やっぱりプレゼンに長けた人程、割とお手軽にたとえ話を導入しちゃうんですよね。

更にこの時、適切でない材料をたとえ話に選んでしまうと、相手の理解は覿面にすっころぶし、誤解が誤解を呼んで地獄のような光景になっちゃうこともあるわけです。

 

今回の炎上案件にはそういう側面もあるなーと。

対立軸導入にせよ、たとえ話導入にせよ、強力なだけに取り扱い注意だなーと。

雑なたとえ話の導入には私も気を付けないといけないなーと、そんな風に考えた次第なんです。

 

ということでブーメランの話に戻るんですが、「悟空が一人で飯食ってるだけのドラゴンボールはただのニート漫画だけど、べジータと戦い始めるとなんだか面白いよ理論」というたとえ話に関しては、対立構造のない冒険活劇時代のドラゴンボールも超面白かったですよねってことでひとつ…。

1巻2巻の頃のドラゴンボールほんと好き。あのノリのままドラゴンボールが続いてた世界線にも一度行ってみたい。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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(2024/12/6更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

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