皆さんは、友達から「別れた彼女とやりかけのデータが入ったままの桃鉄」というアイテムを受け取ったことがありますか?
私はあります。
いや、あれおっっっもたいですよ。
「唯一の思い出のアイテムなんだけど、手元に置いておくのがツラすぎるのでもらってくれ」って言われましてね。
確かSFCのスーパー桃鉄IIIだったと思うんですけど、友人の名前と、その友人が先日別れたばかりの彼女の名前の2人プレイヤーによる99年桃鉄のデータが残ってまして。
物理的な「ずしっ」という重さすら感じました。
確か99年プレイの30年目から40年目くらいだったと思うんですが、「呪いのアイテムをもらっちまった…」と真剣に感じたのは人生であれが唯一の体験です。
まあ、「これが唯一の思い出のアイテムって、どんだけ他に思い出を作る機会がなかったんだ」とはちょっと思いましたけど。
別れた原因それじゃねえのか。
私、桃鉄ってパーティゲームだとは言いながら、これくらいパーティに向いてないゲームもない、と昔は思ってたんですよ。
なんでかって、少なくともかつては、桃鉄って「大きな差ができやすく、かつ逆転が非常に難しい」ゲームだったんですね。
少なくともSFC時代くらいまではそうだった。
例えばスーパー桃鉄IIIで言うと、基本的には「キングボンビーに取り付かれたヤツが負けるゲーム」でして、貧乏神を押し付けられることによるダメージとリスクがでかすぎたんですよ。
かつ、最初に目的駅に辿りついた以降は、常に誰かしらに貧乏神が取り付いているんです。
おまもりカードとかメカボンビーとか、貧乏神やキングボンビーのリスクを軽減する手段もあるにはあるんですが、そういったリスク軽減手段にもコストがかかるので、一度不利になっちゃったプレイヤーはそもそもそういう軽減手段を取ること自体が難しいんですよね。
メカボンビーなんて時期にもよりますけど購入するのに10億以上必要で、かつキングボンビーに負けることも普通にあるんで、信頼性を上げるには何台か買っておかなくてはいけない。
けれど貧乏神に取り付かれた状態でそんなに何十億も工面できるかって話でして。
貧乏神を他人に押し付ける手段だって基本的にはカードに頼るしかないわけで、そのカード自体多少余裕がないと調達も出来ないし、キングボンビーにまとめて破棄されちゃったりする。
一方、ノリに乗ってる一位プレイヤーは、特急カードだろうが新幹線カードだろうが、あるいはおまもりカードだろうがメカボンビーRXだろうが、そんなに苦労なく工面できちゃうわけです。
つまり、一度大きな差が出来てしまうと、ビリのプレイヤーには貧乏神やキングボンビーがつきっきり、一方トッププレイヤーは目的地に入りまくり、という状況が発生しやすい。
ビリになっているプレイヤーは必死にキングボンビーや貧乏神の攻撃に耐えつつ多大な借金を抱え、トッププレイヤーが次から次へと目的地に入るのをただただじっと眺めながら無になってサイコロを振り続ける、というゲーム展開になりがちだったわけです。どんなパーティだ。
もちろん徳政令カードを拾ったりとか、トッププレイヤーがスリの銀次に遭うとか、差を縮める手段も全くないではないんですけどね。
まあ逆転が非常に困難だということは間違いない。
ある程度わきまえたゲームプレイヤー同士なら、まあそれも仕方ないかって呑み込めるかも知れないですが、その状態をゲーム内で何十年も、なんてことになったらまあビリのプレイヤーは面白くないですよね。
誰かが面白くなかったら、当然その場は盛り下がってしまうわけです。
ちなみに冒頭で書いた知人のカートリッジも、友人の名前のプレイヤーは数百億の資産があった一方、彼女さんのプレイヤーは数十億の借金持ちでした。
だから恋人と99年桃鉄はやめとけ、せめてやられ役としていぬやま社長を入れとけって言ったのに…(言ってない)
ちなみにもちろんこの問題は開発者さん側も把握していただろうと思っていまして、シリーズを追うごとに様々、その為の対策が実装されていきました。
例えば「全プレイヤーの持ち金と持ちカードリセット」という桃鉄7のギーガボンビーなんかはその対策の最たるものだったと思うんですが、その後も様々な工夫が実施されたようでして。
最近長男のリクエストで、PS2以来久々の新作桃鉄Switch版を買いまして、色々と「ビリのプレイヤーにも楽しみがある」変更が施されていて感心しました。
例えば徳政令カードが基本無料になっていて、借金プレイヤーでも容易に入手出来たり(これはどうも桃鉄2010以降共通の変更点のようですが)。
借金を背負っているとビッグボンビーが出やすくなっていたり(徳政令カードやたいらのまさカードなど借金対策のカードがある為、マイナスが増えるだけなら大した脅威ではなく態勢の立て直しが容易)。
マイナスイベントが重なってくると、記念仙人が都度都度救済にきてくれたり。
また、ランダムイベントの振れ幅も大きくなっているようで、いきなり数十億がもらえて資産逆転、なんてケースもわりと頻繁にありました。あとキングボンビーの金庫から数兆円出てきて大逆転とか。
もちろん、「有利な方がもっと有利になるイベント」も多いので、逆転が容易になっているかというとそうでもないんですけどね。
とはいえ、ビリになっているプレイヤーがただただ耐え続けなくてはいけない、という展開になりにくいことについては、かつてのSFC時代から相当の進化を遂げているなーと感じたわけです。
ランダムイベントの振れ幅がでかすぎる、という点についてはもちろん好みもあるとは思うんですけど。
***
ところで子どもが出来てから、「子どもたちが、勝ち負けの絡む遊びで遊んでいる」ところを観察する機会は何度もあります。
もちろんしんざき家の中で長男長女次女が遊んでいるのも見ますし、他のお友達と遊んでいるところも見ます。
この時思ったことは、「負けを受け入れるのが上手い子とそうじゃない子がいるなー」ということなんですよ。
つまり、「自分が負けているとすぐに拗ねてその場を壊してしまう子」と、「負けていても少なくとも表面上は冷静、ないし楽しそうで、その場を壊さない子」というのがいる。
いやこれ、もちろん年齢にもよりますし、多かれ少なかれ負けてたら拗ねちゃうのは当たり前なんですけどね。
むしろ負けてても冷静な子の方が凄いと思うんですが。
ただ、やっぱり「負けて拗ねちゃう子」の割合が多いと、楽しい場が成立しにくいというのは事実でして、「もうこの遊びしないっ!!」って泣かれると周囲の子は困っちゃうわけです。
ここでどうその場を収拾するか、というのも、それはそれで子どもたちのいい練習なんですが。
たとえば「じゃあ勝ち負けの絡まないゲームにしよう」とか、「ちっちゃい子には手加減してあげよう」とか、そういう収拾のさせ方を身に着ける場でもあると思います。
とはいえ、「勝ち負けだけではなく遊び自体を楽しむ」とか、あるいは「負けている状態に耐えて逆転を狙いながらその場の雰囲気を壊さないようにプレイし続ける」というスキルを身に着けて、どこかで「すぐ拗ねちゃう子」から脱却出来る子もいるようだ、と。
それも、うちの子どもたちを含めて色んな子を見ていて思ったことです。
ついこの間まで「すぐ拗ねる子」だったのに、あれ、いつの間にか負けていても拗ねないで遊べるようになってるなーと。
そう感じること、結構多いんですよ。
子どもの成長ってつくづく凄いです。
言ってみれば「わきまえたゲームプレイヤー」に、どこかで進化するチャンスがあるようなんです。
それはもちろん人によって違って、単に成長に伴う落ち着きだったり、あるいはどこかで「拗ねてばっかりだと楽しくない」と気付いたり、色んなケースがあるのでしょう。
我が身を振り返ってみると、自分も昔は「すぐ拗ねちゃうプレイヤー」だったんですよね。
わたしには5歳差の兄がいまして、兄も私もゲーマーなので、まあ兄と対戦型ゲームなんかやると大概けちょんけちょんに負けるわけです。
まあ拗ねる拗ねる。なんど泣きながら「もうこのゲームしない!!」と言ったか覚えていません。
ただ、それもいつの間にか、負けていても「まあいいか」あるいは「今に見てろ」と思いつつ遊び続けられるようになっているところを見ると、私自身どこかに転換点はあったように思うんです。
私については、それはもしかすると桃鉄だったかも知れないな、と。
逆転が難しいことは承知で、とはいえ拗ねているとゲームにならないから、「いつか逆転してやる」と思いながら虎視眈々と牙を研ぐゲーム。
私の子どもの頃は、それが桃鉄だったように思うんですよ。
で、今の子どもたちにも、多少なりとそういう面はあるのかも知れず。
長男長女次女の桃鉄ゲームプレイを見ていると、やっぱり長男が勝つことが多いんですが、最初は負けているとすぐ「もうやらない!」って言っていた長女が、いつの間にか文句を言わずに遊んでいるようになっている。
これも最近気付いて、結構感心したことの一つなんです。
「負けた状態に耐えるメンタル」をどこで身に着けるか。
それを桃鉄から学べることもあるかも知れない、と。
それだけの話でした。
今日書きたいことはそれくらいです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
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