人の声を聞き分ける能力が完全に欠如していることに、最近気付きました。
で、これはちょっと変わった体験だと思ったので、書いておきたくなりました。
いや、大した話ではないんですけどね。
最近、ちょっとしたご縁でゲームの開発者さんにインタビューをさせていただく機会がありました。
まあカプコンアーケードスタジアムっていうゲームの話なんですが、私が25年間「移植して欲しい」って言い続けていた「19XX」っていうゲームがついに家庭用移植されることになりまして、狂喜乱舞しながら「開発者さんにもお話伺いたい!!」って言ってたら「いいよ」って言って頂けたんです。
で、このご時世、直接お会いしてお話するのもなかなか難しいということで、web会議形式でのインタビューになりました。
そもそもインタビュァーになること自体が十数年振りだし、web画面越しのインタビューなんて初めてだったんで結構緊張したんです。
わざわざこの為に時間貸しの会議室借りて準備したりしました。
インタビュー自体は滞りなく終わったんですが、じゃあ録音から文章起こして記事にしよう、となったところで、物凄い障害に突き当たりました。
それが、「この発言、どなたの発言だ……??」ということが全く聞き分けられない、という問題だったんです。
つまり、喋っている内容は分かるのに、「この発言とこの発言は同じ話者のもの」というのが、声色やイントネーション、声の調子なんかでは、本当にさっぱり分類出来ない。
内容からある程度の類推は出来るものの、微妙な内容の発言については本当に全く分からず、進退窮まってしまったわけなんです。
いや、インタビュー自体は初めての経験じゃないんですが、以前やったインタビューって聴き手が一人話し手が一人っていう、基本的に一対一のインタビューばっかりだったんですね。
今回は3人のゲーム開発者さんにインタビューをする形式でして、いつものノリでまあ問題ないだろうと思って録音しかしてなかったんですが、「うわーーーなんで俺は録画してなかったんだ!!!」って大後悔時代に陥ったんですが当然後の祭りです。
で、困ってしまいまして、録音聞きながら自宅でごろごろ転がっていたら、しんざき奥様が「私そういうの得意だからやってあげようか?」と言ってくれまして。
ジャンピング土下座でお願いしたところ、「この人はちょっと関西弁が入ってる人」「この人は多分関東の人」「この人の声はちょっと高め」みたいな感じで、台詞を全部さくさくと「Aさん、Bさん、Cさん」という感じで分類してくれたんですよ。
で、「身近にやべえ天才がいた……!?」と戦慄していたら、「いやまあ慣れてはいるけど、ちょっとアニメとか観る人なら大体出来ると思うよ…?」と言われてしまいまして。
どうも奥様の認識では、「声を聴き分ける」というのはそこまで難しいことでもないらしい。
そういえば、思い起こしてみると、以前から若干の違和感を感じることはあった。
私、例えば会社の電話口で、「知っている人なら、声を聞いた時点で誰か分かる」ということが本当に一切理解出来なくって、まだ名乗る前に「あ、しんざきさんですよね?」とか言われると「何で分かったんですか!?」とかびっくりしてしまって相手にきょとんとされる、みたいなことは何度もありました。
たとえ相手が身内でも、声だけだと誰か分からなくて、話している内容から類推したりするわけです。
しんざき奥様と長男は割とアニメ好きで、「あ、この人の声〇〇さんだね」とか「この人とこの人の声同じだね」とか話してることがあったんですが、すぐ傍で聞いていても、「どの人の声とどの人の声が同じ」というのがさっぱり分からない(というか皆大体同じに聞こえる)。
FF14を遊んでいて、奥様が「あ、この人諏訪部さんだね」とか言うのも「なんでわかるんだ!?!?!?!!?」と内心驚愕していたわけなんです。
また、最近AmongUsっていう、宇宙船人狼という感じの滅茶苦茶楽しいゲームを遊んでたんですが、そのゲームってDiscordっていうボイスチャットを併用して、話し合いながら遊ぶんですよ。
それも、ただ聴いているだけだと「今話してるのはどなたなんだ…?」というのが全く分からなくって、「すいません、今の発言〇〇さんですかね?」「いや××さんですよ」とかいう会話を繰り返してご迷惑をかけてしまう、というようなことがあったんです。
これらを鑑みるに、どうも私は
「男性の高い声」
「男性の低い声」
「女性の高い声」
「女性の低い声」
「こどもの声」
くらいしか、少なくとも映像情報なしでは判別出来ていないのではないか、ということが判明したわけです。
皆さんいかがでしょう?他人の声、聞き分けられますか?
例えばアニメの声優さん、声だけ聞いて誰か当てられたりしますか?
電話口で聴いた声だけで、相手を当てられますか?
私は全部出来ません。
***
何でここまで声の判別がつかないのか、というのは自分でもよく分かりません。
ただ、私がアニメとかテレビとか、「声」が絡むコンテンツに昔から殆ど触れていなくって、ボイスありのゲームでもボイスを切って遊ぶことが多い、ということの影響はあるのかもなーと思っています。
昔から私、漫画や小説、ゲームみたいなコンテンツは好きなんですけど、動画やアニメ、映画といったコンテンツにはあまり親和性が高くありませんで。
どうも、「自分のペースで摂取のペースをコントロール出来ない/コントロールしにくい」コンテンツがいまひとつ性に合わないみたいなんですね。
その結果、そういうコンテンツに殆ど触れてこなかった為に、「声」に対する感受性が育たなかった、という側面はもしかするとあるのかも知れません。
一方、例えば自分で演奏している南米民族音楽だと、「あ、このケーナは誰が吹いてるケーナだな」とか聴いただけで分かることとかあるんで、この辺はやはり先天的な資質という話ではなく、「今まで興味を持ってそのコンテンツに触れてきたかどうか」という側面が大きいような気がしています。
で、「なんで今までそれで困らなかったのか」というと、それは明白ですよね。コロナがなかったからです。
コロナ環境下では直接会って話が出来ない為に、「複数人で、しかも顔がちゃんと見えない状況でのWeb通話・Web会議」という機会がいきなり激増しました。
たとえ映像があったとしても、荒い画像だと口元がよく見えなかったり、プラットフォームによっては今誰が喋ってるかフォーカスしてくれなかったり、なんてこともあります。
インタビューに限らず、その録音で議事録を作らなきゃいけない、なんて機会も出てきました。
今までなら、「誰が喋ってるのか」なんて目で確認しながらその場でぱっぱっとメモ書きしていれば済んでいたことが、いきなり「声だけ」で判別しなくちゃいけなくなっちゃったんですよ。
しかも、「今誰が喋ってるんだ?」ということに気をとられると、肝心の内容の方を聞き逃してしまったりする。
めっちゃ困る。
その辺を自覚してから、「すいません、私声聞き分けるの凄く苦手なんで、出来るだけ発言者の方、お名前言ってから喋っていただけると助かります」って断ったりもするんですが。
やはりテンポが速い会議だとそうそうクッションを挟んでもいられませんし、皆どうも「そこまで声が区別できないのか」ということは実感しにくいらしく、「多少省略しても困らないだろう」とちょこちょこ名乗りを省略されたりもします。
まあ無理もないよなあとは思いつつ、どうやって解決したらいいかなあ、と考えあぐねる日々を送っている、という話なんです。
***
ソクラテスではありませんが、「自分が何を知らないのか」ということは非常に認識し辛いことであって、対話を通して「俺はこれについて何にも知らなかったのか…!」といった知見を得られる機会は貴重です。
それと同じように、「自分には何が出来ないのか」ということについても、案外「それが必要な事態」に陥るまでは認識し辛いものなんだなあ、というのは、今回の体験を通して得た一つの知見です。
まさかここまで聞き分け能力が欠如しているとは、自分でも思いませんでした。
そういう意味で貴重な体験をしたかも知れません。
一方で、「自分には当然のように出来ていること」が他のある人には出来ない、というのも、実は相当に理解し辛いことなんだなあ、と。
「言うてこれくらいは分かるやろ…?」ということが、「いや本当に全然分からないんです…」というのはなかなか伝わらないんだなあ、と。
これについては、もしかすると私自身も、他人の「出来ない」に対する無理解をもってしまっているかもなあ。
気を付けないといけないなあ、と思った次第なんです。
自分の「当然出来る」が、他人にとっても「当然出来る」とは限らない。
当たり前のようですが、案外気付きにくい。
自分の「聞き分け能力」の欠如がそれを改めて認識するきっかけになった、という話でした。
あと、最後に全然関係ないこと書くんですが、カプコンアーケードスタジアムは本当の本当に最高なんで皆買ってください。
自宅で19XXが遊べるとか本当に本当に奇跡的な事象なんで。是非。
今日書きたいことはそれくらいです。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第4回テーマ 地方創生×教育
2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo:erokism
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