先日、安達さんが書かれたこちらの記事を拝読しました。
問題解決能力というのは、外資系コンサルタントのイメージに代表されるような「洗練された能力」ではない。
物事をとにかく前に進めるために、手をひたすら動かす、泥臭い能力であり、「自分で決めること」を要求される能力なのだ。
安達さんはいいことをおっしゃっているなあと思いましたし、頷きながら読んだ部分もあるのですが、技術畑の人間としては若干違った側面で捉えた部分もありました。
で、既に当然の前提になっているだろう部分も含めて、改めて一から自分の言葉で「問題解決能力」というものについて書いてみたくなりました。
まず最初に話を整理しましょう。
これは一般的に言ってしまっていいと思うのですが、「問題解決」とか「課題解決」という行為は、ざっくり三つのステージに分かれます。
つまり、「発見・認識」「調査・解析」「解決」の三つです。
問題を見つけ出し、それを「問題だ」と認識し、場合によっては周囲にも「これは問題だよね?」と納得させて共通認識を形成するのが、「発見・認識」のステージ。
「その問題を解決するにはどんな工程を踏まないといけないのか?」「どういう状態になれば「問題が解決した」と言えるのか?」という道筋をつけてゴール設定をするのが、「調査・解析」のステージ。
調査・解析を経て、実際に用意された道筋をたどって、定義されたゴールを全力で目指すのが「解決」のステージ。
そして、これら三つのステージは、クリアする為にそれぞれ微妙に違った能力を要求してきます。
そして、その能力は「どんな問題を解決するのか」ということによっても微妙に変わってきます。
その為、「問題解決能力」を一言で概括するのは案外難しいです。
ちょっと、三つのステージについて順番に見ていってみましょう。
***
まず第一のステージ、「発見・認識」について。アクトレイザーでいうとフィルモアです。
いきなりそもそもの話になってしまうんですが、解決しなくてはいけない「問題」って、一体なんなんでしょうね?
もちろん、組織にせよ個人にせよシステムにせよ、「完璧な状態」というものはなかなかありませんから、「より良いどこか」を目指す為には大抵色んな問題をクリアしなくてはいけないんですよ。それは当然です。
ただ、例えば「プログラムが動かねえ」とか「新入社員が全員3日で辞める」みたいに、既に「誰の目からみても議論の余地がない問題」というものが可視化されている状態ならまだ良いのですが、世の中難しいもので、案外
「問題が気付かれていない」とか
「問題だと思っているのは一部の人だけで、大多数の人は問題だと認識していない」あるいは
「問題がなんとなくしか見えていなくてぼやっとしている」
というような状況もあるんですよ。
というか殆どの場合はそれです。
そういう場合には、まず「これが問題だよね?」ということを明確にしてあげないといけません。
まず敵を発見しないといけないし、その敵を知らないといけないし、敵の姿を明確にしないといけない。
「そもそも問題って何?」という問いに答える。
これが第一ステージでやらなくてはいけないことです。
ウィザードリィでいうとラツマピックです。
このステージではどんな能力が必要とされるんだろう?というと、大筋「物事を批判的に捉える能力」と、「物事の筋道をたどる能力」「筋道だった説明で人を納得させる能力」が必要とされることが多いです。
要はロジックが必要とされる比重が高い。あと、調査能力、ヒアリング能力が必要とされる場合もままあります。
まず、そもそも「誰も問題だと気付いていないことに、「問題だ」と視線を向ける」ということが最初のステップです。
これが「物事を批判的に捉える能力」。なあなあで済ませないで、「これ変だよね?」「これ良くないよね?」とちゃんと文句を言える、ということですね。
批判的な人って組織の中では嫌われることが多いですけど、「問題を問題だと気付ける」という意味では、これも重要な能力なんです。
職場が「批判的な人」を排斥してはいけない理由の一つです。
「問題を見つけるのも問題解決能力の内」ということですね。
次に、例えば「売上が伸びない」というぼやっとした問題があった場合、この問題を解決する為にはもうちょっと問題自体を深堀りしなくてはいけません。
ただ売上が伸びないというだけだと、「がんばれ」以外に解決法の提示のしようがありません。
そこで、ヒアリングやらなぜなぜ分析やらデータ解析やらで、もうちょっと「敵」の姿をはっきりとさせてやる。
売上が伸びない?なんで?客足は悪くないね。購買力がある層にリーチもしているね。
あれ、客が来ている時に在庫が切れて機会損失してる時間が長いじゃん。
じゃあ輸送や在庫管理が上手く解決出来てないんじゃないの?発注フローちゃんと動いてる?
まあ、例がシンプル過ぎるのは勘弁してください。
こんな単純に分析出来ることなんてむしろレアケースでしょうけど、こういう「物事の原因を突き詰めていく」能力がここでは重要になることが多いんですよね。
原因を突き詰めて、「これだ!」という根本的な要素をポインティングする。
ここまでが第一ステージの前半部分です。
ところが、大抵の場合そこで「ステージクリア!」とはならない。
何故かというと、この先に進むには「こいつが敵だよな??」と周囲にも納得させる必要があるから。
問題解決で難しいところは色々あるんですけど、特に組織の問題を解決する場合、「その問題を自分ごととして捉えてもらう」というのが大変困難な場合が多々あります。
「どう見ても敵はこいつじゃん」と自分には分かっていても、「いやそんなヤツ敵じゃねえし」とか「そいつが敵だとしても俺には関係ねえし」という声がわんさかあがってくるんですよね。
そうなると、本来4人で倒さないといけないバランスの敵に一人で挑まないといけない、といったことも発生します。
勇者一人旅におけるバラモス戦みたいなアレです。
縛りプレイはゲームの中だけにしておきたい。
そこで、周囲の人たちにも、問題を自分ごととして理解させる必要がある。
この、「自分ごととして理解させる」というのが滅茶苦茶重要で、しかも難しいんですよ。
その為にはもちろんロジックが必要なんですが、それだけだと大体十分ではなくって、「相手が受け入れやすい形で物事を説明する能力」みたいなものが必要になってきます。
抽象的に言うと「説得力」という言い方になります。
時には、相手の立場やプライドを尊重しつつ、「けどこれは問題だよね?」と柔らかく納得してもらう。
時には、相手の損得勘定に訴えて、「この問題があるとあなたも困るよね?」と理解してもらう。
この辺、ステージクリアには滅茶苦茶重要な能力です。
ここまで考えてみると、まず第一ステージで特に重要なのは
・物事を批判的に捉える能力
・物事の筋道をたどる能力
・人を納得させる能力
である、ということが言えそうです。
***
次に第二ステージなんですが。
問題解決をする上でもかなり難易度が高い要素として、「ゴール設定」と「マイルストーン設定」というものがあります。
これも同じく「どんな問題を解決するのか」によるんですが、一言で「問題を解決する」って言っても、「じゃあどんな状態になれば問題が解決したことになるの?」っていう話が、簡単なようで結構難しいんですよ。
例えば売上が伸びないということが問題なのであれば、じゃあどの時点でどれくらいの売上が達成出来たことをゴールと呼ぶのか。
社員定着率の低さが問題なら、どこまで定着率が上がれば目標達成なのか。
また、それが他の施策ではなく問題解決による効果だということをどう証明するのか。
そもそも数字で計れないような問題ももちろんあります。
「働きにくい職場」ということが問題だった場合、じゃあそもそもどういう状態を「働きやすい」と定義するの?とか、ちょっと考えただけでもややこしいですよね。
ゴールが具体的であればある程、その問題を解決出来る可能性は高まります。
一方、曖昧な問題に「具体的なゴール」を設定するのは滅茶苦茶難しいです。
いわゆるto beってやつなんですが、「あるべき姿」を可能な限り具体的に、詳細に想定する力。ここで必要なのはそれです。
抽象的な言い方ですと、「ビジョンを描く能力」とでも言うべきでしょうか。
更に、「じゃあ、そのビジョンに向かう為には何をすればいいの?」という点も、可能な限り具体的に定義する必要があります。
どんなことでもそうなんですが、ぼやっとしたタスクに力を注げる人は非常に少数です。
「これこれこういうことをしましょう、そうすればゴールまでたどり着けます」という、なるべく詳細なマイルストーンでタスクを区切ってあげなくてはいけない。
これは、問題解決の主体が組織でも個人でも同じことです。
そこから、「ビジョンを詳細なタスクに落とし込む能力」が必要になってきます。
いわゆるPMに必要とされる力ですよね。
何をすればどうなるのか、ということを、これまた具体的に想定し、タスクとして設定する力。
段取りを作る能力、と言い換えることも出来ます。これもとても重要。
特に、「問題解決」の為のマイルストーンって、基本的にマイナスの状態から始まるんで、同じ段取りを作るにも気を使わないといけない部分が非常に増えるんですよね。
今ある仕組みとの兼ね合いはどうするのか。
今実際に動いているものをどう解決するのか。
その辺を考慮しながらタスクを組み立てていくのって、一面ジェンガみたいな思考を必要とされます。
普通のプロジェクト以上に繊細な段取り能力を必要とされる、と言ってもよいでしょう。
ここまで考えると、第二ステージで主に必要な能力は、
・「あるべき姿」を想定する能力
・あるべき姿にたどり着くまでの段取りを設定する能力
と言えそうです。
***
最後に第三ステージ。これが「解決」のステージになります。
これはもう読んで字のごとく、「想定したタスクをひたすら片付けて、問題解決に向かっていく」というステージなので、あとはタスク遂行の方法論になります。
ここについては、たくさんの人が具体的で適切なテクニックについて書いてくださっていますので、私が書けることはあまりありません。
多分、安達さんが冒頭の記事でおっしゃった「手をひたすら動かす、泥臭い能力」というのも、ステージ1とステージ2の存在は前提とした上での、このステージに属する話なのかなーと思うのですね。
もちろん、誰よりもまず自分が手を動かさないと人はついてこないですし、そこに「理念」とか「理想」といったものが絡む余地はありません。
自分自身が物事をドライブさせる。
そうすることで周囲も巻き込むことが出来る。
そういう意味で、このステージで一番重要なのが「率先して手を動かす能力」であることは確かでしょう。
ただ、この時、「手を動かす」こと自体の効果を強烈に上下させるのは、第一ステージで設定した「明確な問題設定」と、第二ステージで考えた「具体的な段取り」である、ということも事実だろうと思います。
ゴール自体がずれていると、ゴールに向かって走っているつもりでもとんでもない方向に行ってしまうことがある。
一方、段取りがなるべく具体的に、かつ的確に設定されていると、それを片付ける為の実行フェーズも非常にスムーズにクリア出来ます。
「問題解決能力」というものを定義するとしたら、上記3ステージのどこにスコープを置くか、という話は割と大事だと思うのです。
私の印象からすると、大筋「問題解決能力が優れている人」として評価されやすいのは、第二ステージ及び第三ステージを捌くのが上手い人であることが多いような気がします。
ちゃんと段取り出来る人、希少ですよね。
その上で、用意された筋道を実際に突き進んでいくことも、もちろん大変重要です。
一方、案外見逃され勝ちなのが第一ステージ。
特に「問題を指摘出来る人」というのは、問題解決のスタート地点として重要なのに、組織ではむしろ冷遇されていることの方が多いです。
批判能力を持った人を失ったが故に衰退してしまった組織、山ほどあります。一方、問題自体の掘り下げが甘かった為に、問題の解決に失敗してしまう、というのも実にあるあるです。
そう考えると、結局三つのステージとも「全部重要」という話になってしまい勝ちではあるのですが。
組織の問題であれば「一人で全部やらないといけない」ということは基本的にないので、自分がどのステージを得意としているのか、どのステージは苦手なのか、という分析は結構大事ではないかと思います。
安達さんはステージ1、ステージ2の存在は既に前提とした上でステージ3に話をスコープさせたようにも思い、その点この記事は若干スコープがずれてしまって申し訳ないのですが、「問題解決能力」に対する私の考えは上記のようなものです。
最後に、簡単にこの記事のまとめを書いておきます。
・問題解決は、「発見・認識」「調査・解析」「解決」の3ステージに分かれる
・各ステージごとに必要な能力は異なるので、問題解決能力を一言で定義するのは難しい
・第一ステージで必要なのは「物事を批判的に捉える能力」「物事の筋道をたどる能力」「人を納得させる能力」
・第二ステージで必要なのは「あるべき姿」を想定する能力」「あるべき姿にたどり着くまでの段取りを設定する能力」
・第三ステージで必要なのは「タスクを具体的に解決していく能力」
・これら全体をまとめて「問題解決能力」というのかも知れない
・自分がどこを得意としていてどこを苦手としているのか、というのは考えておいて損はない
以上です。よろしくお願いします。
皆さんが、個人で、あるいは組織の中で、いい感じに問題を解決していって健やかなお仕事生活を送られることを祈念して止みません。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
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